04-009 「【重要】有料コンテンツ」
この章最後です。
「あいつらNPCかよ!!
リポップ早すぎんだろ!
RPG惑星かここは!
どうりで文明レベルが歪なわけだよ!」
シルビアとそんなやり取りをしている時だった。
ブゥン……。
俺たちの目の前の空間が、テレビの砂嵐のように激しくノイズを走らせた。
「……ん?
なんだ?」
「わ、今度はなんですか~?
また飛ばされちゃんですかね?」
シルビアが呑気なことを言っている間に、ノイズは急速に収束し、一人の人物の形をとった。
それは、ジャージ姿のくたびれたおっさん……に見えるが、体の一部がポリゴン欠けしていたり、テクスチャが貼られていなかったりと、明らかに存在がバグっている。
頭上に表示されているネームプレートには、こう書かれていた。
『変神の芭具(Admin)』
「……は?」
俺が呆気にとられていると、そのおっさん――変神の芭具が、気だるげに口を開いた。
「あ~わし、ここの創造神なんだけど、そろそろ自分の宇宙に帰って貰っていい?
……ってお前らに直接言ってもしかたないんじゃった……。」
「はぁ!?」
いきなり帰れ発言。
創造神?
このRPG惑星の運営か?
「ちょ、ちょっと待て!
俺たちはまだここに着いたばかりで……!」
俺が抗議しようとすると、芭具は俺たちからスッと目線を外す。
(ガチ無視かい!)
そして、虚空(何もない空)を見つめながら、ブツブツと何かをつぶやき始めた。
「あ~卓?いや、だからさ、こっから先は有料コンテンツなんじゃが……。
そう、そうそう。
課金エリア。
え?
今のこの子らは無課金ユーザかって?
まぁそうなんだけど…いや、そういうわけじゃ。
ほら、他の神との利権問題というか……。」
芭具は空中に浮かぶ見えないディスプレイ(?)を操作しながら、誰かと通話しているようだ。
「……え?
片方は王慧のところのなの?
あ~、とは言ってもなぁ…
でもほら、もう片方の霊の子はさ、そうそう。
権利関係がね。
うん、次のコラボ契約してからじゃないと。
じゃあとりあえず返すから、うん。
無事。
大丈夫だって。
じゃあの。」
おい。
聞こえてるぞ。
「いい?
じゃあまとめて返すよ?
うん、ログごと消しとくから。
へいへい。」
なんか今、『帰す(Go Home)』じゃなくて『返す(Return Goods)』って聞こえた気がしたが?
俺たちは不良在庫か何かか?
「……聞こえるようにしてたから聞こえてたと思うが……。」
芭具が通話を終え、バツの悪そうな顔でこちらに向き直った。
「聞こえるようにしてたのかよ!」
俺は思わずツッコんだ。
「ちゃんとしっかり全部筒抜けだよ!
有料コンテンツとか利権問題とか!」
夢も希望もねぇな!
「まぁなんにせよ、この世界での冒険はここで終わりということで。
急にすまんな。
大人の……創造神の事情ということで頼む。」
芭具がパンッ!と手を合わせた。
その瞬間、俺たちの足元に巨大な魔法陣……いや、システムコマンドの光が現れた。
『 SYSTEM : FORCE LOGOUT 』
「ちょ、待て待て待て!
急すぎ!
まだ何もしてないぞ!
レッズのイベントもスルーしたままだし、ホレー(冷蔵庫)の中のオニギリも残ってるんだよ!」
「あ~、その辺は全部『なかったこと』になるから安心せい。
じゃあな、元の?まぁここじゃない宇宙では達者で暮らせよ。」
「わぁ~!
体が透けていきます~!
ビャッ子ちゃん、今度は強制送還ですね~!」
シルビアが光の粒になりながら、遠足の帰りのようにはしゃいでいる。
「ふざけんなぁぁぁ!
せめて土産くらい寄こせ~~!!」
俺の絶叫は、光の中に吸い込まれて消えた。
変神の芭具は、俺たちが完全に消滅したのを確認すると、ポリゴンの欠けた手で頭をかいた。
「ふぅ。
やれやれ。
揺らぎがヤベェと思ったら王慧のとこの魂じゃったか。
あいつのとこのは可能性指数が高すぎて事象改編が掛かってくるから困るわい。
……さて、一部の変数も強制上書きされてるし、この星はポーズかけて再起動するしかないか…」
プツン。
俺たちの視界は、そこで暗転した。




