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西暦3000年の最強ロボットが異世界転生~未来の演算能力を持つ美少女オートマタは、レトロな魔法世界を無自覚に無双するようです~  作者: 無呼吸三昧
異世界転移転移

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04-008 「強制イベント」

もうね。

適当ですよ。


「聖女様~!」

「お待ちくだされ~!」


背後から聞こえる騎士や魔導師たちの熱烈なコールを無視して、俺は森の中をひた走っていた。


「はぁ……はぁ……。

 勘弁してくれよ。

 なんで『地球』だって言われて降りてきたのに、コテコテの異世界ムーブしなきゃなんないんだよ……。」


俺は藪をかき分けながら悪態をついた。


隣では、シルビアがふわふわと飛びながら楽しそうに笑っている。


「いいじゃないですか~、聖女様。

 皆さんにチヤホヤされて、美味しいご飯とか食べさせてもらえたかもしれないですよ~?」


「その代わり『魔王を倒してくれ』とか言われるのがオチだろ。

 俺は忙しいんだ。

 あれ?忙しいんだっけ?

 まぁいいや。

 とにかく、早くこの星の文明レベルを確認して平和を満喫したいんだよ。」


俺は足を止めずに答えた。


外側があんなデス・〇ターだったんだ。

どこかに高度なテクノロジーが隠されているはずだ。


夢ありまくリング。


それが今の最優先事項だ。

こんな茶番に付き合ってる暇はない。


え?

その調査も茶番だろうって?


懸命に遊んでるゲームを馬鹿にされたらいやだろう?


じゃあそっとしといてくれよな。



「あ、ビャッ子ちゃん。

 また何か聞こえますよ~。」



シルビアが耳を澄ませる。


(耳はあるのかって?

 霊でも耳はあるわな。

 元物理で今はロジカルなだけだろ)



確かに、街道の方から喧騒が聞こえてきた。



「ひゃっはー!」

「金目の物を置いていけぇ!」

「へへへ、姉ちゃんたちは置いていってもいいんだぜぇ?」


……ベタすぎる。


昭和の時代劇かよってくらい、ステレオタイプな野盗のセリフだ。

俺は木陰からこっそりと様子を伺った。


街道では、一台の豪華な馬車が、薄汚い男たちに取り囲まれていた。

護衛らしき兵士たちは既に地面に転がっている。



二人分。

あれ?二人分?


ちょっと兵士少なくないか?



と、そこで見張りの野盗の一人が、木陰にいる俺たちに気づいた。


「おっ!

 あっちにも上玉がいるぞ!

 おいそこの女ども!

 お前らも金目の物を置いていけぇ!

 体だけ置いていってもいいんだぜぇ?」


下卑た笑いを浮かべて近づいてくる野盗たち。



俺はため息をついた。





いいかお前ら。

よく見ろ。


俺たちは着の身着のまま、手ぶらだぞ?

何を置いて行けと?

つまり、前半の「金を置いていけ」という要求は物理的に不可能なわけだ。

無い袖は振れない。


となると、残る要求は後半の「姉ちゃんたちは置いていってもいい(=ここに残れ)」だけになる。

要するに、「体だけおいていけ」って言っちゃってるの分かんないかなぁ?



ステファニー筐体はメンテナンス代が異常に高いんだよ。

お前らが手に入れてもすぐに壊れて終わりってことだけど、そんなのわかんないよな~




「……馬鹿なのかな、こいつら。」


「馬鹿は概ねビャッ子ちゃんだと思いますよ?

 また体だけって部分に過剰反応してたんじゃないですか?


 ただの人さらいにナンパされてるだけですよ?」


「それ、ナンパの偏差値が低すぎるだろ。」


俺が冷めた目で野盗を見下し、スラスターの出力計算を始めた、その時だった。


バンッ!!


囲まれていた馬車の扉が、内側から勢いよく蹴り開けられた。


「……え?」


中から飛び出してきたのは、フリルたっぷりのお貴族ドレスを着た、金髪の美少女だった。


(なんであんなガラガラヘビみたいな模様の布をフリフリドレスにした?

 センスが異常だな。)



彼女は優雅に地面に着地すると、目の前にいた野盗のリーダーらしき男の顔面を、スッと鷲掴みにした。


「あ?」


野盗が声を上げる間もなく。


ドゴォォォォン!!


美少女は片手で、男を地面に叩きつけていた。


地面が陥没し、土煙が舞い上がる。


「「「あにきぃぃぃ!?」」」


俺たちに絡もうとしていた野盗たちが、一斉に振り返って悲鳴を上げる。


だが、美少女のターンは終わらない。


「ふんっ!」


彼女はドレスの裾を翻しながら、襲い掛かってくる野盗の腕を取り、背負い投げ、ラリアット、そして延髄斬りと、流れるような格闘術(?)を披露していく。


「ひぃぃ!」

「な、なんだこの女!」

「ばけも……ぐべらっ!」


ちぎっては投げ。


ちぎっては投げる。


物理攻撃で。


「……。」


俺は起動しかけたスラスターを止めて、そっと木陰に戻った。


「ビャッ子ちゃん、出番なさそうですね~。」


「……ああ。

 あの子、俺より強いんじゃないか?

 なんだあのパワー。

 ドレスの下にパワードスーツでも着込んでるのか?」


俺がハッキング(スキャン)をかけると、身体強化骨格の微弱な反応が返ってきた。


もしかして人じゃないかも?



数分後。


そこには、綺麗に積み上げられた野盗タワーと、それを縛り上げる(鉄の棒を素手で曲げて拘束する)美少女の姿があった。


「ふぅ。

 ……あら?」


美少女が、木陰にいる俺たちに気づいた。


彼女はパァッと表情を明るくすると、ドレスをなびかせて駆け寄ってきた。


そして、俺の両手をガシッと握りしめた。


痛い。

握力がゴリラだ。


完全には無理だが、ステファニー筐体のフルパワーを多少なりとも拘束できるだけの膂力がある。


「キャー!

 見ていらしたんですの!?

 お恥ずかしい!

 私、こういう乱暴な殿方は苦手で……怖くて震えておりましたの!」


「……。」


 最後に震えてたのは野盗の方だろ、と喉まで出かかったが飲み込んだ。

 実際に震えているのは今の俺だ。


彼女は返り血(野盗の)をハンカチで拭きながら、潤んだ瞳で俺を見つめてくる。


「私、ビーアン子爵家三女、レッズ・ビーアンと申します!

 あ、元子爵家……いえ、子爵家はあって私が放逐されたので、元三女ですね。」


「あ、はい……。」


「麗しきお姉さま!

 そして霊体の美少女の方!

 助けていただきありがとうございます!」


「ん?

 んー?

 俺、助けてないよね?

 見てただけだよね?

 君が自分の力で、グーのパンチで、武装する集団をちぎって投げてたように見えるんだけど…」


俺のツッコミなど聞こえていないかのように、レッズと名乗った少女は言葉を続ける。


「とりあえず助けていただきましたお礼に、ぜひねんご……お近づき……あ~、お友達になってください!」


ん?


今、ねんご(懇ろ)って言いかけなかったか?


それに名前。


レッズ・ビーアン?


レズ……ビ


「……。」


俺は彼女をまじまじと見た。


見た目は文句なしの美少女だ。

金髪碧眼、スタイルもいい。


だが、名前と握力がやばい。


俺のステファニー筐体、またしても貞操の危機?


いやまて。

俺の中身は男だ。

相手は美少女だ。

それもそれでいいのかも……?


シルビアに至っては物理干渉できないから襲われないだろう、そこは安心だし……。


さて、どうしたものか。


俺が迷っていると、突然、視界に半透明のウィンドウがポップアップした。


ピロン♪


『[EVENT] レッズ・ビーアンが(違う意味の)仲間にしたそうにこちらを見ている。

仲間になりますか?』


 『 ▶ はい 』

 『   いいえ 』


「……は?」


なんだこれ。


俺は頭を左右に振ってみた。


だが、ウィンドウは視界に張り付いたまま、うっとおしく追従してくる。


仲間になりたそう…じゃなくてしたそうってなんだよ。

違う意味の仲間って、言い方どうにかなんない?

別にLGBTは世の中じゃ普通だからね?


「いろいろな意味で面倒すぎる……。」


俺は手で払いのけようとした。


スカッ。


いや、違う。


指先に、僅かだが『プニッ』とした触覚フィードバック(ハプティクス技術)があった。


「……触れるのかよ。」


どうやらこれは、俺の義体のHUDではなく、この空間自体に投影されているAR(拡張現実)インターフェースらしい。


目の前では、レッズが期待に満ちた目で俺を見つめ続けている。


まるで、入力を待っているかのように。


「……。」


面倒だ。


ここで「はい」を選んだら、この怪力勘違い令嬢(名前が不穏)がパーティに加わることになる。


それはそれで面白いかもしれないが、今の俺にはリスクが高すぎる。


仕方ない。


俺は指先で、空中に浮かぶ『いいえ』をポチった。


ピッ。


その瞬間。


レッズの表情から、憑き物が落ちたように感情が消えた。


「わかりました。

 残念ですがごきげんよう。

 この先に最初の町がありますわ。

 お気をつけて。」


「……えっ。」


彼女は機械的な口調でそう言い放つと、クルッと踵を返した。


そして倒れていた馬(野盗の馬)を無理やり立たせ、ヒラリとまたがった。


「ハイッ!」


パカッパカッパカッ……。


彼女は一度も振り返ることなく、猛スピードで街道の彼方へと走り去っていった。


「……。」


「……行っちゃいましたね~。」


シルビアがポツリと言った。


「ああ……。

 なんか、すげぇあっさりしてたな。

 さっきまでの熱量はなんだったんだ?」


俺は呆気にとられたまま、しばらくその場に立ち尽くしていた。


「あれ?」


ふと気が付くと。


俺たちの周りには、いつの間にか「野盗タワー」も消えていた。


それどころか、さっき森の中で撒いたはずの騎士や魔法使いたちの気配も、完全に消えている。


「……どうなってるんだ?」


俺たちが首を傾げていると。


遠くの空から、聞き覚えのある咆哮が響いてきた。


「ギャオオオオオオン!!」


そして、街道の向こうからは、聞き覚えのある汚い声が。


「ひゃっはー!

 金目の物を置いていけぇ!」


「キャー!

 誰か助けてー!」


見ると。


さっき俺がドローンを壊して消滅させたはずのドラゴンと、騎士たちが戦っている。


そして街道では、さっきレッズが無双して走り去ったはずなのに、また同じ馬車が野盗に囲まれている。


「……。」


俺は理解した。


この世界の正体を。


「あいつらNPCかよ!!」


俺は地面に(優しく)拳を叩きつけた。


「リポップ早すぎんだろ!

 RPG惑星かここは!

 どうりで文明レベルが歪なわけだよ!」


「わぁ~!

 すごいですビャッ子ちゃん!

 聞いてたゲームの世界みたいですね~!

 これ、レベル上げ放題ですよ~!」


「上げねぇよ!

 俺は経験値じゃなくて情報が欲しいんだよ!」


外側はSF要塞。

中身はテーマパーク型RPG。


どうやらこの『異世界の地球』は、俺が知らない間に、異世界銀河最大級のエンターテインメント施設として運用されていたらしい。


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