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西暦3000年の最強ロボットが異世界転生~未来の演算能力を持つ美少女オートマタは、レトロな魔法世界を無自覚に無双するようです~  作者: 無呼吸三昧
異世界転移転移

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04-006 「異世界の地球はやっぱ異世界」


「達者でなー!

たまには遊びに来いよー!」


重力10倍の惑星、ヤサ・イーン星。


その荒涼とした大地から、俺たちを乗せた宇宙船がゆっくりと浮上していく。


眼下では、強面マッチョの保育士ナノハさんが、子供たち(戦災孤児)と一緒に手を振っていた。


その隣では、戦闘力53万の社長レイ・ゾークさんも、優雅にティーカップを掲げて見送ってくれている。


「いい人たちでしたね~、ナノハさんたち。」


「ああ。

 見た目が極悪人に見えるのは、不思議な先入観ってやつだけどな。」


俺は窓の外を見ながら、少しだけ寂しさを感じていた。


たまたま訪れた星で偏見まみれで見てしまったが、終わってみればホワイトでハートフルな場所だったな。


最初は「戦闘力たったの5か、ゴミめ」とか言われて殺されかけたけど、あれも今となっては良い思い出……いや、やっぱムカつくけど。


「あ、そうだビャッ子ちゃん。

 これ、ナノハさんが『道中で食べな』って持たせてくれたんですよ~。」


シルビアが取り出したのは、巨大な葉っぱに包まれた爆弾オニギリだった。


俺の顔くらいのサイズがある。


いや、下手したらシルビアの頭よりデカいんじゃないか?


「デカっ!

 中身なんだこれ……」


スッとオニギリの組成をスキャンする。


「龍型怪獣の肉の甘辛煮ってか?

 食っていいのかこれ、願い叶えるポッポなんとかじゃないよね。


 あ~……うん、美味い。


 っていうか!

 めちゃくちゃ美味くね!?」


地球へ向かう船内で、俺たちはその巨大オニギリを夢中で頬張った。


米の炊き加減も、肉の味付けも絶妙だ。

まさに完璧。

具の素材以外は!


ナノハのあのゴツい手で、一つ一つ丁寧に握ってくれたんだろうか。


あの人、クンッ!と土地を耕したりとか、現地の邪魔な飛行部隊蹴散らすとか悪いイメージしかないけど、まぁそれはイメージだしな。


ちなみにクンッ!で一気に5ヘクタールは耕せるって話だ。

あの技って実際にやってたけど、実際には何に使うのかこっそりナノハに聞いたら、本当に開墾用にも使うし、出会ったときみたいに地面響かせて威嚇したりもするんだそうだ。

「あんまり力を入れなければちょっと揺れるだけで誰も怪我しないからな!

 がーっはっは~」

だって。


それにしても、戦闘ジャケットを着たマッチョマンが、エプロン姿でオニギリを握る姿を想像すると、何とも言えないシュールさがある。


「美味しいですね~。

 愛情を感じます~。」


「ああ、美味いよな~。

 ……ま、俺たち食べなくてもエネルギー平気だし、お前に至っては幽霊だから実際には消化すらしてないんだけどな。」


「言わないでくださいよ~。

 気持ちの問題ですよ、気・持・ち!

 ビャッ子ちゃんの方は食べたら出る仕様だから不便ですよね。」


「いちいちいうなよ。

 女の子はそういうの出ないんだよ。

 俺の中身は男の子だけど、体の設定は女の子なんだしな。」


「はいはい。

 男子の夢は守らないといけませんよね~」


そんなセンチメンタル?な時間を過ごし、俺たちは大気圏を離脱した。


さて、ここからは長い宇宙の旅だ。


俺たちが乗っているこの船。


レイ・ゾーク社長が「お詫びと感謝の印に」と用意してくれたのだが……。


外見は、どう見ても『巨大な冷凍配送トラックの荷台』だった。

そう『保冷車』ってやつな。


サイドには『クール ゾーク便』という謎の文字。


そしてリアハッチには『鮮度抜群』のステッカー。

重量は8トンまでイケるらしい。


まあ、宇宙空間は寒いから保冷車でも問題ないのかもしれないが、空気抵抗のない宇宙で箱型のトラックを飛ばす意味はあるのだろうか。


「ビャッ子ちゃん、寒くないですか~?」


「俺は平気だ。

 ステファニーの耐寒性能は半端ないからな。

 さすがに絶対零度だと動けんけど。

 シルビアは霊体だから関係ないだろ?」


「ですね~

 でも雰囲気的には寒そうにしておいた方が、か弱い女の子っぽいかなって思いません?」


「はいはい。」


俺はシルビアの戯言をスルーして、操縦席に向き直った。


そろそろ自動航行の設定を確認しておかないとな。


目的地は地球。


3000年後の未来から来た俺の故郷だ。


俺はコンソールを操作しようとして――固まった。


「……ん?」


そこにあったのは、操縦桿でもキーボードでもない。


『↑・↓』『チルド』と書かれた、タッチパネル式の温度設定ボタンと液晶パネルだけだった。


他にあるのは…『急速製氷』と『脱臭』?ボタンくらいだ。


俺らは鮮魚か!


「キーパッドは?

 CUIコマンドライン入力画面はどこだ!?」


俺はバンバンとパネルを叩いた。


反応はない。


ただ『ピピッ』という電子音が虚しく響くだけだ。


すると、天井のスピーカーから無機質な合成音声が響いた。


『当機は最新のスマート家電仕様です。

 移動操作は全て音声入力のみ対応しています。』


はぁぁぁ!?


「はぁぁぁ!?」


俺は思わず心の声が外に出てしまっていた。


「音声入力だと!?

 というか、それなら温度設定も音声入力でいいだろ!」


確かに自分のいた西暦3000年の世界でも音声でなんでも可能だった。


-俺…自動操縦事故で体全損して異世界転生したんだけど?


ブラックボックス化された「不便な便利機能」に対するトラウマが大爆発だ。


大体、音声認識なんてのは誤認識の温床だ。


緊急時に「回避!」と叫んで「解凍!」と認識されたらどうするんだ。


死ぬぞ?


っていうか状況は違うが死んだぞ?


俺は怒りを抑えつつ、AIに話しかけた。


「……おい、冷蔵庫。

 目的地はわかってるか?」


『音声認識できませんでした。

 庫内温度を下げますか?

 あと冷蔵庫ではなく、AIのホレーです。』


「下げねぇよ!

 シレっと名前訂正してるんじゃねーよ。

 っていうか聞こえてんじゃねーか!

 地球に行けって言われただろうが」


『ピピッ。

「チキュウ」ヲ検索中……。

該当ナシ。

「チキン」ヲ検索シマシタ。

チキンハ、チルド室デノ保存ヲ推奨シマス。』


「なんでチキンなんだよ。居るのかよ鶏!!

 急にカタカナ混じりで回答とか絶対ナメテやがる!」


ダメだ、コイツ。

話聞こうとしてねぇな。


「製氷モードにしますか?」


「しねぇよ!」


「脱臭運転を開始します。」


「俺ら臭くないから!!

 失礼だから!!」


俺のイライラが頂点に達した時、通信機からノイズ混じりの声が聞こえてきた。


『おやおや、どうもAIの機嫌が悪いようだねぇ。』


レイ・ゾーク社長だ。


どうやらこちらの船内の様子はモニタリングされているらしい。


「おい社長!

 このAIポンコツすぎるぞ!

 全然言うこと聞かないんだけど?

 即返品レベルだぞこれ!?」


『ん~、困りましたねぇ。

 その子は型落ちの旧式ですから……。

 OSのアップデートもサポート切れなんですよ。

 地球に着いたらスクラップ行きでしょうねぇ。

 うちもSDGsは大事にしてるんですが……これはさすがに厳しいかもしれませんね。』


サポート切れの機体を宇宙船として渡すなよ。


とんでもないブラック案件じゃないか。


『まあ、乗組員の言うことを聞かないような宇宙船ですからね。

 到着後にスクラップということで、強制命令は外部からピピッとやっておきますよ。』


レイ・ゾーク社長の声色は、至って穏やかだった。


まるで「今日の夕飯はカレーにしましょうかねぇ」と言うくらいの軽さで、AIの処刑を宣告した。


ピコンッ!


その瞬間、船内の照明が赤く点滅した。


『!!……目的地「地球」ヲ確認!

 最優先トシテ設定!

 全力デ向カイマス!

 廃車ハ嫌デェェェス!!』


ブォォォォォン!!


船体全体が震えるほどの勢いで、コンプレッサー(エンジン)が唸りを上げた。


シートに凄まじいGがかかる。


「うおっ!?」


「きゃぁっ!?」


俺とシルビアはシートに叩きつけられ…たりはしなかった。


高性能筐体の耐G反応と、G掛からない霊体だしね。


「「現金なやつだな!」」


俺とシルビアの声が重なる。


どうやらこのAI、性能の問題じゃなくて性格の問題だったらしい。


スクラップの恐怖を感じて初めて本気を出すタイプか。


俺と一緒で、追い詰められないとやらないタイプだな。


親近感は湧かないが。


「で、地球まではどのくらいかかるんだ?

 結構遠い?」


俺のデータベースであの漫画の距離を考えてみると、通常のワープ航法でも数週間はかかる距離だ。


安全運転エコ・ドライブデ航行シマス。

 コンプレッサーノ寿命ヲ考慮シ、負荷ヲ最小限ニ抑エマス。

 到着予定ハ……約30年後デス。』


「……は?」


シルビアが悲鳴を上げた。


「30年!?

 やだー!

 暇すぎる~

 私、地縛霊になっちゃいます!

 この宇宙船だかよくわからない箱に憑依したらどうするんですか~!

 ビャッ子ちゃんも三十路……いや中身はアラフィフになっちゃいますよ!?」


「……そうか、30年か。」


俺は静かに立ち上がった。


そして、通信機のマイクを手に取る。


「おいゾーク社長、聞こえるか?

 やっぱりコイツ、スクラップで。

 わざわざ地球で処分するのも面倒だ。

 どこか途中で乗り換えて…」


俺が低い声で告げると、AIが食い気味に叫んだ。


『訂正シマス!

 いえ、訂正いたします!

「超・鮮度維持モード(ワープ)」を使用して速やかに現地へと向かいます!

 明日到着予定となっております!

 明日!

 明日には着きます!!』


「最初からそう言えよ。

 口調も普通にカタカナやめていいから。」


俺はマイクを置いた。


まったく、最初から本気を出せばいいものを。


AIってのは、たまにこうやって「教育」してやらないとダメなんだよな。


◇◇◇◇


翌日。


ワープ航行を終えた俺たちの目の前に、懐かしい太陽系の風景が広がっていた。


無数の星々が瞬く暗黒の宇宙。


その中に、ひときわ大きく輝く恒星、太陽。


そして、その第三軌道を回る惑星。


「わぁ~、あれが地球ですか?

 ビャッ子ちゃんの故郷?

 あれ?異世界の地球は違いますかね。

 それにしても、キラキラしてて綺麗ですね~。」


シルビアが窓に張り付いてはしゃいでいる。


「ああ、別の世界とはいえ地球と聞くとなんか懐かしいな……。

 青くて、丸くて、自然豊かで……」


俺も感慨深げに窓の外を見た。


そこには、巨大な球体が浮かんでいた。


灰色で。


無機質で。


表面を幾何学的なライン(溝)が走り。


あまつさえ、巨大な窪み(スーパーレーザー発射口っぽいもの)まである、鋼鉄の惑星が。


「……ん?」


俺は目をこすった。


もう一度見る。


やっぱり灰色だ。


青くない。


海も、雲も、緑の大地も見当たらない。


あるのは、冷たい金属の輝きだけだ。


「おい待て。

 座標合ってるか?

 これ、地球じゃなくて……デ〇・スターじゃない?」


「強そうですよね!

 あれが地球ですか?

 ビャッ子ちゃんの故郷って銀河帝国だったんですか?

 黒い仮面で暗黒面に落ちたりします?」


「違う!

 俺の知ってる地球はもっとこう、青かったぞ!

 いや、3000年の時点でもだいぶメタル化してたけど、ここまで殺意高い見た目じゃなかった!

 あれじゃ惑星破壊要塞だろ!」


俺は慌ててAIに問いかけた。


「おいポンコツ!

 座標ミスって『遠い昔、遥か彼方の銀河系』に来てねぇか!?

 あれはどう見ても一撃で惑星を粉砕する兵器だろ!

 反乱同盟軍に設計図を盗まれるやつだろ!」


AIは冷静に、しかし断固として答えた。


『いいえ。

デス…ナントカではありません。

正しく地球です。』


「嘘つけ!

 あの窪みからスーパーレーザー撃つんだろ!?

 あと、伏せた字をわざというのやめて。」


『検索結果からあの状態になった経緯をお伝えします。

理由:太陽との距離が近くなったことから、環境保全のために外殻プラネット・シェルを形成せざるを得なくなった模様です。』


「……は?」


太陽が近づいた?


それとも地球が軌道を変えたのか?


どっちにしろ、熱対策で星ごと殻に閉じこもったってことかよ!


『肯定します。

 内部は快適な温度に保たれていると推測されます。

 当機(冷蔵庫)と同じですね。』


「お前と一緒にすんな!」


俺は頭を抱えた。


数千年の時を経て、地球は引きこもりの巨大冷蔵庫になっていたらしい。


いや、まあ理屈は分かる。


太陽の膨張や環境変動に合わせて、惑星規模のテラフォーミングを行う。


その究極形が、惑星自体を人工の外殻で覆ってしまうことだ。


俺のいた3000年の技術なら、不可能ではないかもしれない。


だが、センスが悪すぎるだろ。


なんであんな「悪の要塞」みたいなデザインにしたんだ。


「じゃあ、あの鉄の殻の中に人が住んでるんですね?

 中身は栗みたいになってるんでしょうか~。」


シルビアが呑気なことを言っている。


「栗って……。

 まあ、ここまで来て引き返すわけにもいかないしな。」


俺は覚悟を決めた。


外見はアレだが、中に入れば俺の知ってる日本がある……はずだ。


少なくとも、同じような食文化はあると信じたい。


異世界だから無かったらそれはそれだけどな。


「とりあえず、降りてみるか。」


俺の言葉に、AIが応える。


『了解。

 大気圏シェル突入します。

 表面温度が高いので、全力冷却を開始!』


「おい、突入角度が急すぎないか!?

 シェルのハッチは開いてるのか!?」


『通信応答ナシ!

 強行突破です!

 邪魔する奴は指先一つで!』


「やめろ!

 ダウンさせなくていいから平和的に入国させろ!

 というか、普通にシェルのハッチ開けてくれてるじゃねぇか!」


俺たちを乗せた巨大な冷蔵庫は、銀色の要塞と化した地球へと、静かに降下を始めた。


窓の外では、摩擦熱で赤熱するはずの大気が、冷蔵庫の強力な冷却機能によって凍りつき、青白い光を放っている。


その光景は、まるで巨大な青い氷の塊が、空から落ちていくようだった。


「また何か出てきちゃいそうな予感がしますね~。」


「嫌なこというなよ、それフラグって言うんだぞ?」


シルビアの不吉な予言を聞き流しながら、俺はシートベルトをきつく締め直した。


さらば宇宙。


こんにちは、変わり果てた異世界の地球。


頼むから、あってくれよ日本文化。


鳴り響くエンジン音と共に、俺たちは鋼鉄の星へと吸い込まれていった。


これぞフューチャー。

そして次回、懐かしの日本(といっても異世界のだけど)へ突入します。

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