04-002 「現地創造神のボヤき」
俺が拾った『パワーカウンター』の解析と修理を行っている時のことだった。
突如、頭上の空間にノイズが走り、ぱっくりと亀裂が入った。
そこから、妙に疲れ切った顔をした、白衣の男のような存在がヌッと現れた。
俺のセンサーは、それを「上位存在」として認識した。
「……あー、やっぱり。」
その男――創造神『芭具』は、俺とシルビアをジロジロと見た。
「あれ、お前ら『卓と恵良』んところの異世界の魂だな?
アイツら、また人の世界にすんごいの飛ばして面白がってるんだろけどさぁ。
だったら親神の王慧のところに飛ばせよな……って、あそこは面白くないからなぁ……。」
神様が頭をガシガシとかいている。
どうやら俺たちのこの状況は、向こう側の管理ミス(バグ)というよりは、神々の暇つぶしの一環らしい。
「地球だっけ?
あれ、いろいろと制限キッツいし。
チートとか入れたらすぐ破綻して追い出されちゃうしな。
まぁいいか。」
芭具は独り言のようにブツブツとボヤいている。
俺とシルビアはポカーンと見上げることしかできない。
「ま、お前らも見たところイレギュラーな存在だし、多分ヤベぇ奴らだろうし。
この世界で暴れられても困るから、別の意味で加護でも付けておくか……概ね監視の意味で。」
芭具が指をパチンと鳴らすと、俺の体に謎の光が吸い込まれた。
『[SYSTEM NOTICE] 特別権限「芭具の加護(ログ監視用)」が付与されました。』
「じゃ、適当にやっといて。
あまり派手に壊すなよ~。」
言うだけ言って、芭具はノイズと共に消え失せた。
「……なんだったんですか~、今の。」
「さあな。システム管理者の巡回だろ。」
俺は気を取り直し、手元の作業に戻った。
神様の干渉など、エンジニアにとっては仕様変更のようなものだ。
気にしたら負けである。
数分後。
「よし、インストール完了。」
俺は解析したパワーカウンターのアルゴリズムを、自分自身のOSに統合した。
これで、わざわざ機械を通さなくても、視界に映る対象の戦闘力を数値化できる。
俺は早速、周囲をスキャンしてみた。
『[SCANNING] ……Target Found.』
「お……?」
マップの北の方角に、とんでもない反応があった。
さっきの戦闘員Aが『5』だったのに対し、その反応は桁が違う。
いや、桁が違いすぎる。
「おいシルビア、見ろこれ。
戦闘力『530,000』だ。」
「ご、ごじゅうさんまん……?
インフレしすぎじゃないですか~?」
「すげぇな。
この星のボスキャラに違いねぇ。
どんな奴か、ちょっと見に行こうぜ!」
俺がウキウキしながら言うと、シルビアは心底呆れ果てたような、ゴミを見るような目で俺を見た。
「……ビャッ子ちゃん、本当に馬鹿ですよね?」
「え?」
「そんな危険な数値が出てるのに、わざわざ近づくなんて自殺行為ですよ~。
歳取ったら台風の日に川や港を見に行かないように監視が必要なタイプですよね?
『ちょっと田んぼの様子を見てくる』って言って流されるお爺ちゃん予備軍ですよ~。」
「うっさい!
男には、確認しなきゃならない時があるんだよ!」
俺はシルビアの正論(罵倒)を無視して、スラスターを点火した。
◇◇◇◇
数分後。
俺たちは反応があった地点――岩山に囲まれた平地の上空に到着した。
そこには、奇妙な形の小型浮遊ポッドが浮いていた。
そしてその中には、一人の小柄な宇宙人が座っていた。
全身が白く、頭部と肩、胸の中央が紫色。
頭には二本の角。
そして長い尻尾。
あの国民的アニメの「悪の帝王」そのまんまの姿だ。
『[ALERT] 対象の戦闘力:530,000。』
(……ビンゴだ。
こいつが、この星を支配する『レイ・ゾーク』か。)
俺は身構えた。
いきなり「指先からのビーム」が飛んできても対応できるように、対魔結界を最大展開する。
すると、ポッドに乗った宇宙人がこちらに気づき、ゆっくりと近づいてきた。
「おや……?
珍しいですね、このような辺境に旅行者ですか?」
スピーカーから聞こえてきたのは、予想外に穏やかで、知性的な声だった。
丁寧な敬語だ。
「……あ?
お前がレイ・ゾークか?」
「ええ、左様でございます。
私がこの地域の管理を任されております、レイ・ゾークです。
見たところ、お怪我はないようですが……大丈夫でしたか?」
レイ・ゾークはポッドから降りると、心配そうな顔で俺たちに近づいてきた。
その手には、なぜかティーセットが乗ったトレイが握られている。
「このあたりは、気性の荒い土着の戦闘民族が多くて困っているんですよ。
彼ら、すぐに『戦闘力たったの5か』とか言って襲いかかってくるでしょう?
本当に野蛮で……。」
「……はい?」
「もしよろしければ、お茶でもいかがです?
ちょうど、故郷の星から取り寄せた美味しい紅茶があるんです。」
レイ・ゾークはニコニコと微笑んだ。
殺気ゼロ。
邪悪さゼロ。
ただの「育ちの良い紳士」だ。
俺とシルビアは顔を見合わせた。
「……ビャッ子ちゃん。」
「……なんだ。」
「最初にボコボコにしたあの人、ただの悪い現地のヤンキーでしたね~。」
「……だな。」
どうやら俺たちは、「見た目が悪の帝王っぽい」というだけで、とんでもない偏見を持っていたらしい。
53万の戦闘力を持つ彼は、この無法の星で、平和的に農業か何かを営もうとしている、ただの猛烈にフレンドリーな良い人だったのだ。
なんか評価も感想も★も付かないんですよね。




