04-001 「重力10倍の星と、戦闘力たったの5」
オッス、オラ ビャッ子
『[WARNING] 外部重力負荷増大。標準値の9.8倍。
機体重量が増加しています。
サーボモーター出力を300%に引き上げます。』
「ぐっ……お、も……ッ!」
謎の光に包まれて転移した直後。
俺は、全身に鉛を巻き付けられたような強烈な負荷に襲われ、片膝をついた。
地面の岩盤が、俺の体重(と重力)に耐えきれず、ミシミシと音を立てて陥没していく。
「はぁ、はぁ……なんだこれ……。
重力10倍……?
とんでもねぇ星に来ちまったな……。」
「そうですか~?
私は全然平気ですよ~?」
横を見ると、シルビアがふわふわと宙に浮いていた。
「ずるいぞ、幽霊。」
「重力なんて、質量のある物質にしか作用しませんからね~。
あ、でもちょっと空気中の成分がピリピリしますね。
生身の人間だったら即死レベルですよ~。」
確かに、空は赤黒く濁り、荒野がどこまでも続いている。
明らかに「人が住む場所」ではない。
その時だった。
ヒュンッ!!
遥か上空から、何かが高速で飛来した。
俺のセンサーが捕捉するよりも早く、それは俺たちの目の前に着地した。
ズドォォォォン!!
舞い上がる土煙。
そこから現れたのは、逆立った黒髪に、奇妙なプロテクター(戦闘ジャケット)を身に着けた男だった。
「おい、そこの二人。
見ない顔だな。
宇宙の帝王、レイ・ゾーク様の領土で何をしている?」
(レイ・ゾーク? 冷蔵庫?
なんだそのふざけた名前は。)
男は左目に装着した、片眼鏡のような機械を操作した。
ピピピピ……。
「ん?
まずはそこの浮いている女……。
戦闘力……1か。
ただのガス生命体だな。ゴミめ。」
「ゴミって言われましたよ、ビャッ子ちゃん!
失礼ですね、プンプン!」
「黙ってろシルビア。
あいつ、何か測ってやがる。」
男の視線が俺に向く。
ピピピ……ピピッ。
「……あ?」
男は眉をひそめ、機械を叩いた。
「戦闘力……たったの5か……ゴミめ。
いや、生体反応がない。
故障か?
まあいい、この星に迷い込んだ羽虫だ。
片付けてやる。」
男が掌を俺に向けた。
「消え失せろ!」
カッ!!
掌から目も眩むような閃光――高密度のエネルギー弾が放たれた。
俺の思考回路が瞬時に解析モードに入る。
『[ANALYSIS] 成分:高密度プラズマおよび未知の生体エネルギー(気)。
破壊係数:極大。
ただし、速度は亜音速。』
(……遅い。)
俺は左手を無造作に振った。
パァンッ!!
直撃する寸前、エネルギー弾を「ハエ叩き」の要領で横に弾き飛ばす。
弾かれた光弾は遥か彼方の岩山に着弾し、大爆発を起こして地形を変えた。
「なっ……!?」
男が目を見開く。
「き、貴様……俺のエネルギー波を素手で……!?
馬鹿な、戦闘力5のゴミクズのはずだぞ!?」
「機械の数字だけ信じてると、足元すくわれるぜ?
俺には『気』なんて概念はねぇけどな……。」
俺は地面を蹴った。
『[BOOST] 脚部スラスター、最大出力。』
ドォォォォォン!!
重力10倍など物ともしない推力で、一瞬にして男の懐に飛び込む。
「科学の力なら、数億馬力だ!!」
俺は右手を刀のように真っ直ぐ伸ばし、男の首筋めがけて振り下ろした。
ドスッ!!
ドドスッ!!
鋭い複数の攻撃音と共に、手刀が男の首にめり込む。
男は白目を剥き、そのままボロ雑巾のように地面に崩れ落ち、ピクリとも動かなくなった。
そう、俺は一瞬で8発を男の首に叩き込んだのだ。
完全にオーバーキルだ。
「ふぅ……。
見たか、これがマクダクル流の挨拶だ。」
俺がドヤ顔で振り返ると、シルビアが呆れたようなジト目で俺を見ていた。
「ビャッ子ちゃんはまた無駄に手刀何発も入れて~。
一発で沈むのに何発いれても同じなんですよ?
馬鹿なんですか?」
「うっ……。
い、いや、これは念の為というか、確実に仕留めるための……。」
「ただのストレス発散ですよね~。
オーバーキルもいいとこです。
ほら、その変な機械、壊れちゃったじゃないですか。」
シルビアが指差した先には、男の顔面から外れ落ちた片眼鏡型の計測器があった。
俺の連打の衝撃に耐えきれず、煙を吹いている。
俺はそれを拾い上げる。
「……『パワーカウンター』、か。
相手の強さを数値化する機械……。
なるほど、こいつを解析すれば、この世界の勢力図がわかるかもしれないな。」
俺は気絶した男(戦闘員A)を放置し、新たなオモチャを手に入れた子供のような顔で、その機械を見つめた。
重力10倍の惑星『ヤサ・イーン』。
どうやら、ここでも俺たちの(主に俺の)無双は止まらないらしい。




