表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
西暦3000年の最強ロボットが異世界転生~未来の演算能力を持つ美少女オートマタは、レトロな魔法世界を無自覚に無双するようです~  作者: 無呼吸三昧
車、作っちゃおうぜ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/30

03-004 「アルケンダス帝国のショタ皇子と求婚騒動」

また変態か。


それは、あまりにも唐突な来訪だった。


マクダクル・モーターズの噂を聞きつけた隣の大国、アルケンダス帝国から、技術提携の視察団がやってきたのだ。


問題は、その団長を務める人物だった。



「お迎えご苦労、マクダクル子爵。

 僕が今回のアルケンダス帝国視察団を率いる、第3皇子チャーシテ・アシクジータ・アルケンダスだ。」



馬車から降りてきたのは、金髪碧眼の美少年だった。


年齢は9歳。


背筋をピンと伸ばし、子供とは思えない理知的な瞳で周囲を見回している。


(うおっ……!

 絵に描いたような美少年だな。

 乙女ゲームなら攻略対象のショタ枠ってところか。

 ま、俺には関係ないけど。)


俺は整列した後ろの方で、他人事のように眺めていた。


チャーシテ皇子は、グレイブルの案内で工房へと向かった。



「ほう……これが『自動車』か。

 魔力効率、サスペンションの構造、そしてこの流麗なフォルム。

 素晴らしい。

 帝国の魔導技術より数段進んでいる。」


「恐縮でございます、殿下。」


「特に素晴らしいのは……」



チャーシテ皇子は、車の説明をしていたステファニーモードの方へと歩み寄ってきた。


そして、俺の手をそっと取った。



「貴女だ。」


「……はい?」


「貴女の説明は実に分かりやすく、そして声が心地よい。

 立ち居振る舞いも洗練されている。

 僕は一目で心を奪われた。」



皇子はその場で片膝をついた。


周囲の視察団や、グレイブルたちが「えっ?」と固まる。



「ビャッコ嬢と言ったね。

 どうか、我が妃になってほしい。

 このまま帝国へ連れ帰りたい。」


「…………はいぃ!?」



素っ頓狂な声が出そうになるのを、俺は必死で抑えた。


求婚?


俺に?


この皇子が!?



「で、殿下!

 冗談はおやめください!

 私のような田舎貴族の娘が、皇子殿下の妃などと……」


「身分なら問題ない。

 マクダクル家は技術力がある。

 僕が父上(皇帝)に掛け合い、伯爵位……いや、侯爵位を与えてもいい。」


「ね、年齢差がございますわ!

 私は貴方様よりずっと年上で……」


「年齢など、愛の前には些事だ。

 むしろ、僕は年上の女性に導かれたいと思っている。

 貴女のような知的な女性こそ、僕の隣に相応しい。」



(……なんてイケメンな台詞を吐くんだこの9歳児!

 確かに顔は良いし将来有望だろうけど、悪いな少年。

 俺の心には、既にポンコツで可愛い幽霊シルビアが住み着いてるんだよ。

 それに俺、中身は15歳の男子高校生だし。)



チラリとグレイブルを見ると、彼は顔面蒼白で「あわわわ」と震えていた。


断れば帝国の機嫌を損ねるかもしれない。


かといって受ければ……「実はこれロボットなんです」とカミングアウトすることになり、それはそれで国際問題だ。


(……やるしかないか。)


俺は覚悟を決めた。



「……殿下。

 少しだけ、二人きりでお話しする時間を頂けますか?」


「もちろん、喜んで。」



◇◇◇◇



俺はチャーシテ皇子を連れて(護衛の騎士は部屋の隅に待機させ)、工房の奥にあるメンテナンスルームへと入った。



「ここは……?」


「私の部屋のようなものですわ。

 ……殿下。

 私の正体をお見せします。」



俺はステファニーモードの表情を崩し、無表情になった。


そして、左腕の袖を捲り上げると、マナで結合された皮膚の連結を解除した。



「……っ!?」



皇子が息を呑む。


露わになったのは、人間の肉や骨ではない。


現れたのは人とは違う金属の骨格と血の通わない聖銀ミスリルのワイヤー。


「ご覧ください、殿下。

 残念ですが、実は私は人間ではありません。

 人の形をした、精巧な作り物……当家の主要産業である『ニンフ』そのものなのです。」



俺は淡々と告げた。



「私は貴方と同じ時を刻むことはできません。

 貴方と共に老いることも、貴方の世継ぎを産むこともできません。

 それでも……私を妃にしたいと仰いますか?」



残酷な現実。


9歳の少年に突きつけるには、あまりにも重い真実だ。


皇子はショックを受けた顔で、俺の開かれた腕を凝視していた。


(これで諦めてくれるはずだ。

 悪いな。)



俺がハッチを閉じようとした時だった。


チャーシテ皇子が、俺の機械の腕に触れた。



「……綺麗だ。」


「え?」


「怖いとか、気味が悪いとは思わない。

 この複雑な構造が、貴女という知性を動かしているのかと思うと……とても美しいと思う。」



皇子は俺の目を見上げた。


その瞳に、軽蔑の色はなかった。



「……そうか。

 貴女が人間でないなら、今すぐに妃にすることはできない。

 帝国の法が、それを許さないだろう。」


「ええ、そうですわね。

 ですから……」


「だが、諦めない。」



皇子は俺の手を強く握った。



「僕は必ず、貴女に相応しい男になる。

 大人になり、皇帝となり、法を変えて……無機物オートマタへの愛が認められる国を作る。」


「は……?」


「名前の通り、少し『お茶して』待っていてくれ。

 僕が世界を変えるまで。」



(……マジかよ。)


俺は呆然とした。


この子、本気だ。


ただの子供の我が儘じゃない。

その目には、揺るぎない決意と、為政者としての器の片鱗が宿っていた。



「それまでは、マクダクル家の技術を僕が買い支えよう。

 パトロンとして、貴女のメンテナンス費用は惜しまない。」


「あ、ありがとうございます……?」


「約束だぞ、ビャッコ。

 ……いや、未来の僕の妻よ。」



チャーシテ皇子は最後に、俺の機械の腕に恭しく口づけをした。



◇◇◇◇



視察団が帰った後。


マクダクル家は安堵の空気に包まれていた。



「ふぅぅ……寿命が縮むかと思ったよ。

 まさか皇子殿下がビャッ子ちゃんに一目惚れするなんて。」


「本当ですわね。

 でも、とりあえずは諦めて頂けたようで良かったですわ。」



セリカとカレンも胸を撫で下ろしている。


俺は窓の外、遠ざかるアルケンダス帝国の馬車を見送っていた。



「……すげぇな、あの子。

 将来大物になるぞ。」


「そうだね。

 とりあえず戦争にならなくて良かったけど……ビャッ子ちゃん、10年後にまた求婚されるね。」



グレイブルが苦笑いする。



「10年後か……。

 その頃にも俺はなんにも変わってないかもしれないけどね。」


「いや、あの方なら逆に変わらず愛してくれそうだよ?

 なんて言っても、機械の腕を見て『美しい』って言ったんだろ?」


「……兄さん。

 それ、遠回しに俺のこと『変態に好かれる系』って言ってない?」



俺たちは顔を見合わせて笑った。


10年後。

アルケンダス帝国が「オートマタ婚」を認める進歩的な国家になっているかどうかは、あの小さな皇子の双肩にかかっている。



「お疲れ様です、ビャッ子ちゃん。

 大変でしたね~。」



背後からシルビアが、ふよふよと近寄ってきた。



「ああ、全く。

 俺の平穏な日々が脅かされるところだったよ。」


「でも、あんな可愛い皇子様にプロポーズされるなんて、ちょっと羨ましいです~。」


「ばーか。

 俺にはお前みたいな世話の焼ける従魔まで憑いてるんだからな。

 これ以上、面倒ごとは御免被りたいもんだね。」


「えへへ……。

 それって愛の告白ですか~?

 元の世界に帰ったら、私が玉の輿なんですからね!

 めっちゃツバつけましたからね!」


「あ~あれな。

 そうだな、帰ったらそうなるかもな。

 ……お~いカトリーヌ…の何号か、最高級の紅茶葉でお茶を淹れてくれ。

 今日は疲れた。」


(別に飲まなくてもいい体だけど、気分的に飲みたいってやつなんだよな)



俺はニヤつくシルビアを軽くあしらいながら、ソファに深く座り込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ