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西暦3000年の最強ロボットが異世界転生~未来の演算能力を持つ美少女オートマタは、レトロな魔法世界を無自覚に無双するようです~  作者: 無呼吸三昧
マクダクル子爵家

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02-005「冒険者ギルドは今日も平常運転」

新話です。

いつぶりだ?


冒険者ギルド。


その響きから連想されるのは、荒くれ者たちが昼間から酒を飲み、喧嘩が絶えず、新人は手荒い洗礼を受ける……そんな場所だろう。

だが、この世界の冒険者ギルドは違う。


正式名称は『冒険者及び傭兵斡旋・商業活動支援センター』。

長いので通称ギルドと呼ばれているが、その実態は「市役所の出張所」や「銀行の窓口」に近い。


建物に入ると、まず目に入るのは整然と並んだベンチと、自動発券機だ。



「更新の方は『各種手続き』のボタンを押して、番号札を取ってお待ちください~」



無機質なアナウンスが響く中、俺は発券機のボタンをポチッと押し、出てきた紙切れを手にする。

番号は305番。

現在の呼び出し番号は280番台だから、少し待つことになりそうだ。



「ふあぁ……退屈ですねぇ。

 もっとこう、鉄火場みたいなのを想像してたんですけど」


「シルビア、それは古い物語の見過ぎだ。

 ここは基本的に肉体労働や事務仕事の仲介所だからな。

 荒くれ者なんて警備員に摘み出されるぞ」



俺とシルビアはベンチに座り、マナビジョンで流れるニュース(またマクダクルのCMだった)を眺めながら時間を潰した。



『ピンポーン。

 番号札305番をお持ちの方、4番窓口へお越しください』



「お、呼ばれたな。

 行くぞシルビア」


「は~い」



窓口に向かうと、制服を着た受付のお姉さんが事務的な笑顔で迎えてくれた。

ここからは対外的な会話になるので、俺は意識を『ステファニーモード』に切り替える。



「本日はどのようなご用件でしょうか?」


「ライセンスの更新ですわ。

 期限が切れそうですのよ。」


「かしこまりました。

 ではライセンスカードをご提示ください。」



俺とシルビアはカードを差し出す。

お姉さんはそれを機械に通し、魔力認証を行ったところで――急に目を輝かせた。



「あら! もしかしてビャッコ・マクダクル様ですか!?

 それに従魔のシルビアちゃん!」


「あ、ええ……そうですけれど(うわ、またか……)」


「キャー!

 私、マクダクルさんのケーキの大ファンなんですぅ!

 この間の新作のチーズケーキ、最高でした!

  濃厚なのに後味スッキリで、いくらでも食べられちゃって……あ、もしかして今日も新作の予定とかありますか!?」



(ありがたい、が、正直ウザい……。まぁ仕方ないんだけどさ)



「そうれは、いつもご愛顧ありがとう存じます。

 新作については広報をお待ちになって?

 それで、更新の方は……」


「ああっ、ごめんなさい!

 つい興奮しちゃって。

 はい、更新ですね。

 確認が取れましたので、手数料は口座引き落としで処理しておきますね~」



テキパキと処理を終えるお姉さん。

本来ならこれで帰るのだが、更新ついでに何か一つくらい仕事をこなしておこうという話だったのを思い出した。



「あの、更新ついでに実績追加のためにも何かお仕事を受けていこうと思いますの。

 すぐに終わって面白そうなお仕事はありませんこと?」


「お仕事ですか?

 少々お待ちくださいね~」



お姉さんが手元の端末をカタカタと操作する。



「うーん、現在募集中の案件ですと……『引っ越し手伝い(家具の運搬)』『倉庫の在庫整理』『ドブさらい』『迷い猫の捜索』……あとは『計算の得意な事務員募集』といったところですね」


「地味ですわね……。

 もっとこう、冒険者らしいものはなくて?」


「平和な時代ですからねぇ。

 魔物討伐なんかは国境警備隊の仕事ですし……あ、一件だけ特殊な案件がありますよ?」



お姉さんが提示したのは、『特殊サルベージ依頼』というものだった。



「沈没船からの物品回収なんですが、現場が深海なんですよ。

 水圧と呼吸の問題で普通のダイバーでは潜れなくて。

 水魔法使いを雇うとコストが掛かりすぎるとかで、ずっと放置されていたんです」


「深海、ですの?」


「はい。依頼主はさる大富豪の方なんですが……これ、呼吸をする必要がないシルビアちゃんにはうってつけじゃないですか?」



俺とシルビアは顔を見合わせた。

確かに、幽霊であるシルビアに水圧も呼吸も関係ない。

そして俺もオートマタだから息は要らないし、ボディの耐圧性能は潜水艦以上だ。



「面白そうですわね。

それ、お受けいたしますわ。」


「えぇ~?

 私、水の中は髪が広がるから嫌なんですけど~」


『文句言うな。どうせヒマなんだろ?

 行くぞ』


一応最後は念話だからな?

シルビア以外にはちゃんと淑女モードなんだぞ。



◇◇◇◇



というわけで、俺たちは依頼主の用意したクルーザーに乗り、沖合へとやってきた。

現場はかつて豪華客船が沈んだと言われるポイントだ。


依頼品は『キャプテンの金庫にある魔法のキー』。

なんでも、その鍵がないと開かない秘密の倉庫があるらしい。



「じゃあ行ってくる。シルビア、離れるなよ?」


「は~い。あ、私の足、水かきモードにした方がいいですか?」


「霊体に水かきは要らんだろ。

 行くぞ!」



ドボン!



俺たちは海へと飛び込んだ。

ステファニーボディの重量調整を行い、一気に沈降していく。


青かった視界が徐々に暗くなり、やがて完全な闇に包まれるが、俺の目には暗視モードがあるし、シルビアはそもそも夜目が効く(幽霊だしな)。



「うわぁ……お魚さんが泳いでますよビャッ子ちゃん!

 あ、こら!

 もうこのお魚、私のスカートの中に入ろうとしないで!」


「魚もお前がパンツ履いてないのを知ってるんじゃないか?」


「履いてますよ!

 今は!

  実体化してないから物理干渉しないだけです~」



深海まで降りると、巨大な船の残骸が横たわっていた。

フジツボや海藻に覆われているが、かつての豪華さは偲ばれる。



「うぅ……なんか出そうですね」


「お前な、出たって霊の仲間が増えるだけだろ。

 ほら、船長室はあっちだ」



俺はスクリューも足ひれも使わず、背中の即席スラスター(姿勢制御用)から微弱な水流を噴射して進む。

シルビアは……なんか普通に水中を歩いていた。霊体って便利だな。


船内に入ると、そこは魚たちの楽園になっていた。

腐り落ちた家具の隙間を抜け、船長室へ。

目的の金庫はすぐに見つかった。

鍵は掛かっていなかったので(錆びて蝶番が外れた)、中から厳重に梱包された小さな箱を回収する。



「ありましたね。これが魔法のキーですか?」


「多分な。よし、用は済んだ。浮上するぞ」



帰り際、シルビアが巨大な昆布みたいな海藻に絡まって

「ふぎゃー! 触手プレイはまだ心の準備がー!」

と騒いでいたが、面倒なので絡まったまま引っ張って浮上した。


そういうプレイは後日、時間のある時に見せて貰いたいものだ。



◇◇◇◇



港に戻り、依頼主である初老の紳士に箱を渡す。



「おお!

 これだこれだ!

 ありがとう、マクダクルの若き当主の妹君よ!

 これさえあれば……これさえあれば、私の長年の封印が解ける!」



紳士は震える手で箱を開け、中から一本の棒状の鍵を取り出した。

それはどう見ても、ただの物理的な鍵だった。

魔力も感じないし、魔法的な装飾もない。



「あの、それが魔法のキーなんですの?」


「いいや? これはただの『倉庫の鍵』だよ」


「え? 依頼書には魔法のキーとありましてよ?」


「私にとっては魔法以上の価値があるのだよ!

 いいかね?

  この沈んだ船の倉庫には、私が若き日に書き溜めた『ポエム集』と『自作の英雄小説(未完)』が厳重に保管された、絶対開かない金庫が眠っているのだ!」


「……はい?」


「船が沈んだ時、私は命からがら逃げ出したが、あの金庫だけが心残りだった……。

 もし、未来の誰かに引き上げられて中身を見られたらと思うと、夜も眠れなくてな!

 この鍵で金庫を開け、中身を回収し、そして永遠に焼却処分する! これぞ我が人生の汚点(黒歴史)を消し去る魔法のキーなのだよ!

 わーっはっはっは!」



紳士は高笑いと共に、追加の報酬(口止め料含む)を弾んで去っていった。



「……ビャッ子ちゃん。人間って、大変なんですね」


「ああ、そうだなシルビア。俺も人のことは言えないが……黒歴史ってのは、海の底より深く封印しておきたいものなんだよ」



俺は遠い目をして、去り行く紳士の背中に敬礼した。

もしかしたら、あの鍵は彼にとっての世界を救う鍵だったのかもしれない。


正直、金庫丸ごと融解するような温度で焼き払った方が安上がりなんじゃないかとも思ったがな。


「ま、報酬も貰ったし、更新も終わったし、帰ってケーキでも食うか」


「はい!

 私は魔力大盛りでお願いしますね!」



こうして、俺たちの久しぶりの冒険者活動は、誰かの黒歴史を守るという平和な結末で幕を閉じたのだった。

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