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カルキノスの盾:3

拝啓・オリベア


やぁ、君のひいひいお爺様の手記の一部分が出て来たから送らせてもらうよ。

何故うちにこんな手記があるのか気になってね。調べたら私の祖父が君のひいひいお爺様の大ファンだったらしい。祖父も君のようにちょっとづつ集めていたようだね。

彼らは皆一様に怯えた顔をしている。その表情を見た瞬間、何が起こるか分かった、いや分かってしまった。

ヒットリア兵士が叫ぶ。

「この者達は国家反逆者達である!皆も知っての通り、国家反逆者には重罰が与えられる!反逆者の一族も、また同罪である!」

台の上で両手をしばられ膝をつかされる。下劣な笑みを浮かべた兵士が斧を振り上げた。鈍い音と共に老人の首が落ち、悲鳴が上がる。数瞬の後ドサリと体が崩れる落ちた。

飛びだそうとしたポラリスを抑える。

しかし、首が一つ、また一つと落ちていくのに比例してどんどんポラリスの力も強くなる。

赤ん坊を抱えた母親が泣き叫んだ。

「どうか!どうかこの子だけは!」

ドサリと母親の体が崩れ落ちた。首が転がる。兵士はそのまま赤ん坊に向けて斧を振り上げた。

ポラリスが腕を引き剥がして台に向かおうとしたが押さえ込む。

「離して下さい!」

「やめろ!殺されるぞ!」

「それでも!」

ポラリスがこちらを振り向く。

「今のお前じゃどうにも出来ない!」

ドン、鈍い音が台の上でした、ポラリスが顔を俯かせる。

台の上から男の嗚咽が聞こえてくる。きっと赤ん坊の父親だろう。その声も斧が振り落とされた風切り音と共に消えた。周りから小さな声が聞こえる。

「国家反逆者だとよ…」

「あの家は5代続く武器作りの家だったからな…武器屋閉店の勅令は不満だったんだろうよ。」

「だからって酒屋で不満漏らしただけで国家反逆罪は…」

「きっと誰か密告者がいるんだ」

周囲から不満や恐怖のどす黒いオーラが溢れてくる。これは…


「私は無力です、なんにも出来なかった…」

人々が散った後の広場で俯いて肩を震わせるポラリスの頭をなでる。

「そう思えたのは成長だ、あれを見て権力に屈するか、屈さないかは大きな違いだ。」

ポラリスが涙で潤んだ目で見上げてくる。

「その悔しさをどの方向に向けるかはお前次第だ。間違っても誤った方向に向けるなよ。」

「…はい、頑張ります。」

まだ声に元気は無いが、俺に出来るのはこれが精一杯だ。

「どうする?今日はもう宿に行って休むか?」


7月28日

雨だ、乾季に入ったニメヌス大陸では珍しい。さて、気乗りはしないがカルキノス神殿に行かなくてはならない。1人で行こうと思ったが、ポラリスは一緒に行くと言った。強い子だ。


カルキノス神殿は立派な観光地と化していた、まぁここに来る旅人のほとんどが武器か神殿目当てだろう。中に入るのは難しそうだ、兵士が入口に張り付いていて、隙がない。

「神殿は既に攻略されたんですか!?」

あちらでポラリスの叫ぶ声がした。兵士に聞いたらしい。

「…なるほど、あの妙な財力は神殿の金塊をかき集めたものなのか。それなら納得だな。」

呟くとポラリスが戻ってきて見上げてくる。

「どうしますか?」

「うーん、神弓は宝物庫に隠されていたからな、盾も隠されていると考えていいだろうな。」

その時後ろから別の旅人達の声が聞こえた。

「そういえば一週間前ぐらいに盾が発見されたらしいな。」

「あぁ、宝物庫に隠し扉があったんだって?見てみたいよなー」

頭を抱えた。


「おいおい、どうする?」

自問とも他問ともつかない独り言を呟く。ポラリスはポラリスで昨日の事を考えているらしい。するとあちらで少女の声がした。

「ちょっと!止めて下さい!」

見ると路地裏の方に兵士に無理矢理連れられて少女がひっぱられていく。

「助けないと!」

ポラリスが走り出すが、肩を掴む。

「いや、止めとけって」

「止めません!どうして目の前の悪に目を瞑る必要があるんですか!」


人の目につかない路地裏に入った兵士と少女を追いかけると、そこには首から血溜まりを作り倒れている兵士、そして血の滴るナイフを持っている眼光の鋭い先程の少女がいた。

「えっ?」

ありえないはずの光景に動きを止めたポラリスを見ると少女はナイフを握り直し襲いかかってきた。ポラリスを突き飛ばし、弓幹でナイフを受け止める。

(切り替えが速い、プロだな)

そのまま弦を引き、矢を作り出す。

「動くな。」

驚いて相手が動きを止めた隙に足払いをかけて転ばせる。

「この矢はお前の鳩尾を狙っている。俺の腕前ならお前がどんな回避をとっても確実に貫くぞ。」

少女は悔しそうな顔でこちらを睨みつけた。


一旦縄で縛ってからポラリスに当たりを見張らせつつ話す。

「お前、単独の反抗か?」

黙ってそっぽを向く少女にため息をつく。

「あのな、俺らは旅の人間だ。別に兵士とかじゃない。ただお前に協力して欲しいんだ。」

「協力?」

やっと少女がこちらを向いた。

「そうだ、お前の暗殺に力を貸してやる。だから俺達の王宮への侵入を手助けしろ。」


「ちょっとちょっと待って下さいよ!」

ポラリスがこちらを振り向く。

「暗殺?王宮へ侵入?どういう事ですか?」

流れ出した血を地面に染み込ませたままぶっ倒れている兵士を指さす。

「多分この子はあの兵士を自分から誘ったんだ。もしくは誘われるような素振りをしたかだな。そしてホイホイ釣られた兵士の鎧を身につけて王宮に入ろうとした。何故そんな事を?決まってるだろう、要人の暗殺だ。違うか?」

俺の最後の質問に少女が頷く。

「でも私が殺そうとしているのはただの役人じゃない。」

少女の言葉に二人共視線を向ける。

「「というと?」」

すると少女は不敵な笑みを浮かべて口を開いた。

「国王よ。」


国王の暗殺だと…?流石に予想してなかった回答に言葉が詰まる。黙りこんだ俺達を見て少女が笑う。

「あなた達の目的が何か知らないけど流石に怖気付いたようね。早く縄を解いてちょうだい。」

ポラリスが口を開く。

「カウスさん、盾は諦めましょう。私達には…」

「ん?何言ってるんだ?」

二人の言葉に首を傾げた。

「俺が黙り込んだのはどうやったら盾が盗めるか考えてたからだぞ?」

空いた口が塞がらないといった表情の2人を見てケラケラと笑う。

「王宮の潜入、ね。上等じゃん、神殿を見張る兵士の目をくぐり抜けてかつダンジョンに挑戦する事に比べたらなかなかに楽な話だ。」

いまだフリーズから抜けていない二人に穏やかに微笑みかける。

「さて、作戦会議といこうか。」

随分と遅くなりました。


私事ではありますが、この前体重を量ったら身長170cmなのに体重が58キロしかありませんでした。BMI計算によると男性の適正BMIは22だそうですが、20でした。

食べても食べても太らないので筋トレにシフトチェンジします。

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