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カルキノスの盾:2

拝啓・オリベア


やぁ、この前は興味深い話をありがとう。君の曾曾祖父様の人生、ね。確かに君の曾曾祖父のカウスは十二柱の遺物を集めた事で有名だけどどんな道のりだったかはあまり知られていない訳だ。


このオーウェン、喜んで力を貸させて頂こう。封筒の中の手記はうちで見つかったものの一つだ。この部分だけじゃ訳が分からないがね。

「あ~っと…」

言葉が出ない、どうする、どうする、本名は名乗ったら一瞬で素性が…

そこで思い付いたのがある名字だった。

「アウストラリスだ!カウス=アウストラリス!出身は『タルカイ』」

係員がポラリスの方に視線を向ける。

「ベガ=ケフェウスです。出身はゴルジアス。」

「へー、ゴルジアスね、滞在目的は?」

「カルキノス神殿の見学だ。」

俺が答えるとあからさまにお前には聞いてない顔になった、コイツ…

「はいそれじゃ、5日以内には出国して下さい。」

ポラリスには満面の笑みを向けて手を振ってきた、俺の事は完全に無視している。

次に手を上げてボディチェックが行われた、ポラリスに男兵士がにやにやしながら近付いていったが、鬼の形相で睨まれ、すごすごと女兵士と変わる。

「このナイフは没収させてもらうぞ、」

「な!?愛用のナイフだぞ!」

兵士は俺のナイフを抜き取ると言う事は聞きもせず箱に投げ入れた。

「その弓は?」

「お守りみたいなもんだ、矢が無いんだからいいだろ?」

兵士は俺の体を調べ、矢が無いことを確認するとしぶしぶ俺を開放した。

「あなた!これは何!」

後ろを振り返ると、ポラリスのペンダントを持ちながら尋問する女兵士と尋問されるポラリスがいた。

「あ…う…」

ポラリスが焦っている、ため息をついてからポラリスに言葉をかけた。

「だからそんな物拾うのはやめとけって言ったろ?全く…悪いな、兵士さん、綺麗な物を見るとつい手にしてしまうのがそいつの癖でな。」

「…ではこのペンダントはこいつの物ではないと?」

「はい!」

必死にポラリスが頷く。女兵士は少し黙考してからポラリスにペンダントを渡すと

「通ってよし!」

叫んだ。


関所から離れると息を吐いた。

「あ~、ペンダントが取られなくてよかった~。ありがとうございました、カウスさん。」

「いやいや、俺もお前には助けられてるからな。お相子だ。」

2人で拳をぶつける。

「ところでアウストラリスって…」

「母親の名字だ、残念ながら本名ではないぞ。お前のベガ=ケフェウスってのは?」

「洗礼名を言ったらばれちゃうので洗礼される前の名前を名乗りました。」

「ほぉー」


「それにしてもナイフは残念でしたね。」

ポラリスが言うが首をふる。

「いや、神弓が取られなかっただけマシだ、それにこのヒットリアは武器作りに長けた国だからな、この国の武器は質がいいんだ。新しく買うさ」


とりあえず大通りに向かう事にして、国の中心に移動するが…

「なんで武器屋が一件もやってないんだ?」

「ですねー、お祭りでもやってるんですかね?」

ポラリスが首を傾げた。

「うーん、それにしては飾りもないしなー。」


大通りに出たがやはり祭はやっていないらしい、そして武器屋も営業中の所が一件も見つからない。幸い市場が開かれていたのでそこで二手に別れて情報収集をする事にした。

「新王が閉店にさせた?」

市場で肉屋を開いていたおばさんから話しを聞くと面白い話が聞けた。

「反乱を防止するためにね」

「ほぉ…ん?国を囲む壁を作ったのはそれより前だよな?」

俺の問に首をふるおばさん、

「いんや、確かそれより後だったような…」

「そうか…あ、その豚の腸詰4本くれ。」

「銀貨2枚だよ。」

「銀貨2枚ね、えっ?!高くね?」

そう言うとジロリと睨まれた。

「どこもだいたいそんなもんだよ。」

あ、そうですか…


ポラリスと広場の噴水で合流する

「カウスさん、それなんですか?」

ポラリスが胡散臭そうに指差してきたのは先程の肉屋で買った品だ。

「腸詰だよ、食った事無いのか?うまいぞ、」

「ちなみに何で出来てます?」

「豚だよ、豚」

「なら良いです。」

俺の手から1本受け取り食べ始めた。

「あー、何を食べちゃいけないんだったっけか?」

2人で腰掛けながら食べつつ聞く。

「魚と鳥ですね、アネモス教では流れる物を神聖とみなすのでその流れる物の中の生き物は全て神獣なんです。」

「ふーん…てか」

ポラリスが持ってきたボールの様な物を指さす

「お前が買ってきたそっちの方が気持ち悪いじゃねぇか!」

緑と黒の縞が入っており気持ち悪いことこの上ない、

するとポラリスは笑いながらポンポンと球を叩いた。

「スイカですよ、スイカ、見た事ないんですか?」

「無いわ!そんな気色悪い卵!」

「卵じゃないですよ!果物です。」

「へー、奇妙な物もあったもんだ。いくらしたんだ?それ」

ポラリスが気まずそうに指を1本たてた

「銀貨か?」

首を横にふる。

「まさか…金貨?」

頷く。

「こんな変な物が金貨1枚だと!?」

「だってここらへんじゃ珍しすぎる高級品ですよ!はるか彼方の『オウカク』でしか採れないんです!」

「へぇ、オウカクの品か、そりゃあ高いわ」

「でしょ?滅多に食べられないんですよ~」


うまかった


宿屋に入り荷物を軽く整理してから椅子に座り反対側にポラリスを座らせる。

「ポラリス、ちょっと聞いてくれるか」

「はい」

神妙な顔をしてポラリスがうなずく。

「この国は主要な産業である武器作りを禁止しておりながらも、どこからか国をぐるりと囲む壁を作る金を捻出した訳だ。そして遠くのオウカクから珍しい果物を手に入れられる程景気が良い」

ポラリスが思い出したように手を打った

「スイカを買ったお店で聞きました!確か新しい王様が王宮を大々的に改造したとかで、お金の回りが良くなったらしいです。」

「その王宮を改造する金もどこから出てきたか分からん。」

「変ですね、この国の人達も景気はいいはずなのにどこか雰囲気が暗かったですし…」

ため息をついてから口を開く。

「…なぁ、ポラリス、金で買えない物が4つある。自由、経験、幸福、知恵だ。」

「ここの国の人達は幸福じゃないっていうんですか?」

「あるいは自由じゃないのか、その両方か…」


顎に手をそえて黙考にふける、するといきなり後ろからポラリスに肩を叩かれた。

「カウスさん!寝ましょう!」

「え?」

「悩んでても仕方ありません!ゆっくり寝れば頭もすっきりしますしね!」

ポラリスの言葉に苦笑してから頷く

「そうだな、今日はもう寝るとしよう。」


7月27日

朝起きると広場が騒がしかったので着替えて外に出てみる、そこには十数名の老若男女が台に立っていた。


「なんだってんだ一体…」

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