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イクテュエスの帯:3

明=ハレーの日記


またうちの倉庫から手記が出てたのでお姉様に送りました。明はお姉様のお役に立てているでしょうか。でも不思議です。なんでうちにカウス=アウストラリスの日記が出てくるのでしょうか?

8月13日

今日はイクテュエス神殿の下見に行く事にした、しかしまさかあんな事になってるなんて…


「イクテュエス神殿まで」

金貨二枚をゴンドリエーレに渡して三人でゴンドラに乗り込む。下見なので観光がてらと言った所か、


「え?見るのにお金取られるんですか?」

ポラリスが素っ頓狂な声を上げる。

「当たり前、どの国も遺物を欲しがってる。それ程の力なんだよ。十二柱の遺物はな。」

キロンが俺の言葉を引き継ぐ。

「だから勝手にやって来た探検家なんかに盗られていかないように壁で囲むし、衛兵だって配置する。」

門を潜ると落ちくぼんだ土地があり、その中心には神殿が建っている。

「しかし…」

「これは国も手こずる訳よね…」

「え?これ…え?」

正確に言うならば神殿は建ってはいる。しかし、沈んでいるのだ。落ちくぼんだ土地には水が張ってあり、その湖の底に塔は建っていたのだ。

「ん~…どうしたものか…」

三人で湖のほとりを他の観光客と混じりながら意味もなく歩き回る。

神殿は太い螺旋状の塔が中心に一本、そしてそれを囲むように8本の真っ直ぐな塔が規則的に並んでいる、どうやら方角を示しているらしい。そして何より目を引くのは…

「何でしょうか…あれ」

ポラリスが指さした先には螺旋状の塔の頂上に付けられ、水面から顔を出している()

「鏡だな」

「鏡ね」

「いや、それは分かるんですけど…」


数分程ぐるぐる回って攻略法を考える。しかし入ってから考えるのでは無く、入る為に考えるとは…情けない話だ。

ふと女性2人を見ると屋台で買ったホットドッグを食べながらベンチで談笑しているようだ。

「気楽でいいのぉ…」

そこである光景が思い出された。

「あ、そうだ」


「なぁ、ポラリス。お前、ニメヌスで風のボールを作ってそれで川を進んだだろ?あれで行けないか?」

ベンチに座っているポラリスに話しかけると頭を振られた。

「あの魔法、魔力消費が激しいんですよ。最大で…15分って所でしょうか。」

「そうか…八方塞がりだなぁ」

呟いて頭をガシガシと掻き毟る。

その時、望遠鏡でキロンが塔を覗いているのが見えた。横に立って塔を見ながら話しかける。

「どうかしたのか?」

キロンは望遠鏡を縮めてから腰に指した。

「気になる事が一つ」

湖の中の塔を指しながらキロンが呟く。

「塔に使われてる石は基本白影石のレンガなんだけど、何箇所かに月光石が使われてるのよね。」

「…は?」

言っている意味が分からず首を傾げる。するとキロンが渡してきたのは本だ。題名は『世界の美しい岩石大全』

「34ページ」

言われて開くと見開きになっており、石の名前、解説、その石の写真が載っている。石の名前は白影石

「あの塔の材料になってる、と思われる石、頑丈で綺麗、でも黒ずみやすいから建造物には向いてないんだけど…」

「そりゃあれだ、時が巻き戻ってるからだ。」

「…はい!?」

驚いたキロンが素っ頓狂な声を上げる。そこでトクソテス神殿の出来事を話す。壁、彫り込んだサイン、彫った順番とは逆に傷が消えていった事、永遠に灯り続ける松明。


俺の話を聞き終わってからもキロンは腕組みをして唸っている。

「にわかには信じ難いけど…それならこの塔に苔の一つも生えてないのも納得かも。」

キロンが渋々といった様子で頷く。

「だろ?それで月光石ってのは何だ?」

「58ページ」

開くと、書いてある石は『月光石』

「まさか全部のページに何が書いてあるか覚えてるのか?」

事も無げに頷くキロン、

「持ってる本は完璧に覚えるまで読む主義なの。」

主義…ねぇ…


月光石…月の光を受けて月の淡い光のみを反射する特殊な石、魔石の部類に入り、僅かながら魔力を蓄えられる。

月光石の項目を読み終わり、パタンと本を閉じる。

「なるほど、それでこの月光石とやらが塔のあちこちに埋められてるって訳か。」

キロンが親指の爪を噛みながら頷く。

「でも一体なんの為に?そこが分からないのよね。」

「ふむ…」


すると後ろに気配を感じて振り返る。ポラリスだった。

「ホットドッグ10本はもう食べ終わったのか?」

「12本です。」

ポラリスが口を拭きながら俺の横に並んだ。

「マジかよ、こりゃ早いとこ攻略して金塊を手に入れないと飢え死にするな。」


「…で、何を悩んでるんですか?」

「あぁ…うん…まぁ…」

「カウスさん、」

「あぁ…」

「私考えたんですけど、」

「あぁ…」

「あの塔の上につけられた鏡って何かを反射させる為にあると思うんですよね。」

「あぁ…ん?何かって例えば?」

我に返りポラリスに顔を向ける。

「え、えーと…太陽とか月の光とか?」

それを聞いた瞬間キロンと一緒にポラリスに抱きつく。

「それか!流石だぞポラリス!」

「やれば出来る子だったんだね!凄いよ!」


ポラリスをひとしきり揉みくちゃにした後、イクテュエス神殿を上から見た図を真ん中にキロンと話し合う、

「鏡に月の光を反射させて月光石にあてるって言うのは分かったけど、問題は月がどこにあるタイミングでどこに光を反射させればいいのか、よね。」

「多分それは分かった。」

古代語をメモした紙切れをキロンに見せる。

「さっき塔の先端部分に刻印されてる文字を見つけてな、意味は…」

「重なる、かしら?古代語ぐらいなら読めるわ」

言おうと思っていたセリフをとられ、拍子抜けしてしまう。

「でも…何が重なるのかしら。」

「俺が思うにそれはだな…」

「イクテュエスの星図と月が、じゃないですか?」

またも言おうとした事をとられ、勢いよく後ろを振り向くと、揉みくちゃにされて目を回していたポラリスが立ち上がっていた。キロンが呟く。

「え、でももしそうだとしたらイクテュエスの星図が見えないと意味無いわよね?今の時期見えるのかしら?」

「安心しろ、今は…」

言おうとした瞬間、観光客のカップルが後ろを通った。

「今の時期は東の空にイクテュエスの星図が見えるらしいよ。」

「え~やだ~楽しみー!」

思わず身悶えする、三連続だぞ!三連続!有り得ないだろ!何か恨みでもあるのか!

キロンが視線を塔に戻した。

「それで、どこに光を当てるかだけど…」

間髪入れずに叫ぶ。

「北東の柱!やった!言えたぞ!」

ぴょんぴょん跳ねる俺をキロンとポラリスが変な目で見てくる。

「どうしたんでしょう…カウスさん。」

「変な奴…」


「でもなんで北東の柱なんですか?」

ポラリスの質問に対してキロンにちょいちょいとやる。

「お前、イクテュエスの姿絵持ってるか?」

「あるけど?」

キロンから『十二柱とは』の本を受け取りイクテュエスのページを開く。

「イクテュエスは尾をリボンで結ばれた二匹の魚だ。」

イクテュエスの星図を指でなぞりながら説明する。

「な?ここが魚、帯がこうやって伸びてこの魚に繋がっているように見えるだろ?」

「まぁ見えなくも無いですね」

ポラリスの言葉にうんうんと頷く。

「そこまでは私も知ってるわよ、で?だから何なの?」

トントンとイクテュエスの絵を叩いた。

「イクテュエスの星図というのは中々面白い特性を持っていてな、東の空に見える時は下の魚は東を。南の空に見える時は下の魚は南を向くようになってる。んで上の魚は下の魚に対して45度上の角度を向いているんだ。」

「読めた!今日イクテュエスの星図がみえるのは東だから下の1匹は東を向いていて、上の1匹は北東を向いてるって訳ね!」

「その通り、東から来た光を北東の塔に反射させる。これが正解」

次回、カウスは何故こんなにも知識が豊富なのか!迫ったり迫らなかったり!


後、活動報告ではこれの裏話みたいなのも書いてます。興味のある人は是非見に来て下さい。

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