蟹座のたて!
本編では書かれないポラリス視点のお話です。毎回書くことがあれば挟んでいこうと思ってます。
ヒットリアを出て、村で荷物を取り、逃げるように次の国に向かう途中、2人は野宿をしていた。もう流石に慣れっこだ。林の中、焚火を目の前に木に寄りかかって舟をこいでいるカウスを見ながらポラリスは思う。
(今回は迷惑掛けちゃったな…)
自分が足をくじかなければカウスは矢に撃たれずにすんだかもしれないのだ。
治療を終えたカウスの脇腹には傷は残っていないだろう。そこまでの治療を施したはずだ。
パチパチと弾ける炎を見ながらカウスに言われた言葉を呟く。
「それがお前が人に手を差し伸べられる距離だ…か…」
ポラリスは両手を伸ばしてそれがカウスに届く事を確認するとふわりと、安心したように微笑んだ。
いつか、この旅には終わりが来る、それまで自分はこの人の隣にいることが出来るだろうか。一抹の不安が胸をよぎった。もしかしたら別々の道を行くことになるやもしれない。
「そうだとしても…それでも私はこの人の隣に居たい」
もし彼の翡翠色の真っ直ぐな瞳が痛みだったり濁りを写してしまったら、自分はそれを拭い去れる様な人になりたい。
「別に恋とかじゃ…ないですけど…」
そう呟くと手先の器用なカウス特製の寝袋にすっぽりと収まった。寝袋の中でフラッシュバックしたのは執務室での顔を近づけて話すヴィーラとカウスだ。
じわり、絵の具を垂らすように広がったその苦味にポラリスは気づかないフリをした、かどうかは本人すらも分らない。