序文
前作『テンプレ』小説を書くのは本当に簡単なのか? を先にお読みいただいた前提の内容となっております。まだの方はこちらをお先にどうぞ。
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タイトルの時点で「あぁ、コイツまた馬鹿なこと始めやがったな」というお声が出るのは承知している。
ただ、前作において『テンプレ』を書くにあたっての心構えなり考え方なりを語りはしたが、実際に書き始めてからのことをあまり追究していなかったような気がしたのだ。
前作で散々問題提起ばかりしておいて、まともに解決策の提示もしないまま終了というのも無責任かと思い、蛇足になりそうな危惧も抱えながら再び筆を取った次第である。
そもそも――根本的な疑問だが。
『テンプレ』は書きやすい。
『なろう』において読者人気もある。
それはいい。それは前作でも述べた話だから今さら否定などしない。
だからといって、作者が『テンプレ』を書きたくなるとは思えない気がするのだ。
私が初めて書いた作品“AL:Clear”は、熱血SF異能力バトルものなんていう意味不明のジャンルを書きたくて書いたから成り立っている。
書きたいと思った理由だが、
1. 他作品と内容がかぶらない
2. 注目されたい
3. 私自身の独創性――オリジナリティを作品内で主張できる
ド直球に書くとこうなった。まるで思春期の若者のような心理である。
しかし、それといって恥じるような点はない。
1番の「他作品と内容がかぶらない」については、創作においては大前提も大前提だ。ここに関しては議論する余地もない。
2番については、作品を『なろう』という全世界の方々に読んでもらえる環境に投げ入れた時点で、例外なく全員がそのはずだ。本気で「注目されたくない、目立ちたくない」とお考えなら、そもそも投稿などするわけがない。
そして3番。
オリジナリティの主張や証明というのは、端的に言えば「誰にも真似できない、オンリーワンの存在になりたい」という意識の表れだ。
創作を志すものなら、この意識がなくては成り立つまい。
ナンバーワンよりもっともっと特別なオンリーワンだと、某国民的名曲でも歌われているではないか。
で、この1~3番。
『テンプレ』で満たそうとするにはかなりハードルが高い。
1番は論外。多くの作品と設定がかぶっているから『テンプレ』と呼ばれているのだ。
2番については絶対に満たせないとは言わないが、「みんなが書いているのと同じ『テンプレ』を書いて注目されるぞ!」なんて意識になれるものだろうか。
そして、3番の意識があって『テンプレ』を書いている人は絶対いない。
むしろ「他作品と同じような内容でオリジナリティが無くても、面白ければいいじゃない」という意識になっているはずだ。
これを問題視している理由は別に良い悪いの話ではなく、作者の執筆に対する意欲――つまりは「書いていて面白いと思えるのかどうか」を問うことになるからだ。
作者目線において、あえて『テンプレ』を書こうとする理由としては、おそらく2つ。
ひとつは冒頭でも述べた通り、書きやすいから。
こっちについてはさほど説明は必要ないだろう、というか前作読んでください。
そしてもうひとつが、「注目されたい」ではなくて「注目されやすい」と考えているから。
ありていに言えば流行っているからだ。
その実、厄介なのは前者より後者だ。
書きやすいのは別にいい。小説を書くという、誰もがすぐに思い立ってできるものではない分野に対して、気軽に入りやすくなったというのはメリットの方が大きかろう。
だが、流行りだからと執筆するのは、創作活動としてどうなのよという話だ。
今は、異世界転生や主人公最強が流行っていて、そういった作品は注目されやすく『なろう』内のランキングでも上位に入りやすい――それが書きたい理由なのか?
ランキング上位に入りたいという欲求は、作者心理として当然のことかとは思う。私だってそりゃあ1位になりたい。
だが、多くの作者は「自分にしか書けないもので1位になりたい」という意識になっているはずだ。
間違っても「誰が1番上手く『テンプレ』書けるでしょう選手権で1位になりたい」だなんて思ってもないはずだ。
そもそも……こと創作性、独自性を求められる分野において「他人と同じ」というのは作り手としては最大の屈辱だ。面白くないとかつまらないとかよりも、圧倒的に作者を否定する評価であるし、そう思わなければ作家失格だろう。
今作を一番読んでほしい方は、読者からの感想で「○○って作品とまったく同じにしか見えないけど、まぁ面白いからいいんじゃない?」と言われた作者さんだ。
こんな感想を向けられて、まさか喜んでいないだろうな?
実際に作者さんがこの感想を受けて何を思ったのかは分からないが、少なくとも、そのまま連載を続けても楽しくないのは明らかだ。
要するに「あなたの作品にはオリジナリティがないね」と言われつつ、○○という作品と比較され続けながらも書き続けるモチベーションなど湧くはずもない。
そのままだと間違いなく、エタる。
だって書くのが苦痛にしかならないはずなのだ。誰に強制されて書いているわけでもないのだから、当然ながら筆は進まないだろう。
解決策は限られており、設定を練り直して一から書き直していくか、あるいはバッサリと終わらせてしまって完全に別の作品作りに取り組むか。
どちらにせよ、現状維持だけはやめておこう。
どれだけポイントが入ってどれだけランキングが高かろうが、「他作品のパクり」という評価を受けてしまうようでは、いかに人気があろうと未来がない。
前置きが長くなったが、そろそろ本題に入ろう。
『テンプレ』に限らず、多くの作品において何度も使い古された設定を使う場合、上記のような未来はどの作者にとっても他人事ではない。
この展開になってしまうと、作品の評価がどうなるかも大事だが、まず何より作者が書けなくなることの方が大問題だ。
冒頭で挙げた3つの欲求は、執筆を続けるためのモチベーションに直結している。
体よく言うのであれば、この3つの欲求を満たすことができる(あるいは、将来的に満たせる未来像がある)限り、たとえ中々人気が出なかろうとランキングに登らなくとも、作者は楽しく執筆活動を継続することができるだろう。
根拠? ――私がそうだからだ。
まぁこれは乱暴な回答だが、ちゃんとした根拠はこれから順を追って説明していく。
で、この3つを常時満たし続けることができる方法。
それは、前作ラストで述べた「あなたが書きたいこと、伝えたいこと」を作品内で表現していく――要するに作品を通しての『テーマ』を決めておくことだ。
本作では、小説を書くにあたって、個人的にいくつかオススメしてみたい『テーマ』を並べていってみようかと思う。どれもあまり『テンプレ』では出てこないようなものばかりを揃えたつもりだ。
その中で、何かあなたの琴線に触れるような『テーマ』が見つかったなら幸いだ。
書きたいことや伝えたいことがはっきりとした作品であれば、それを書ききるまで、きっと作者は頑張れる。
そして小説を書く面白さというものを、改めて確認してみてほしいのだ。