第一戦 始戦
初めまして! 私が初めて書いた小説です! 読みにくい箇所もあるでしょうが、良かったら見てやって下さい!
イラストも載せてみようと思います!
ーー2013年 3月 ここは埼玉県八潮市ーー
住宅街の中にそびえ立つ派手めな巨大なお城。東京ドーム約2個分は入るであろう面積に、高さは300mと東京タワーには及ばないが住宅街の中にあるには極めて場違いであり、その高さと面積の広さに、通り過ぎる人々全てを魅了する。
日本古来を想像させるかのような現代の日本に似つかわしくない造りの城であり、真っ白い城壁をしている。 入り口であろう大きな扉の前には、高さ5mにもなる門に繋がる石畳が敷かれていて、門番には2人の侍。
この巨大なスケールとは一転、城内は静けさをまとっている。静かな城内には一つの足音しか聴こえない。
コツ コツ コツ
着物姿で羽織袴を羽織っているその男は、城の最上階に位置する部屋の扉の前で立ち止まる。
ギギ……
古びたドアを引くような音を響かせながら扉をゆっくりと開ける。そこには猫の頭に首から下は人間の男がイスに座っていた。
この男こそが埼玉県を支配下に置き、八潮城を建設した男…『瀬戸 鷹文』である。
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瀬戸 鷹文175cm 63kg 21歳 ♂
瀬戸軍当主。若くして軍の長に登り詰め、埼玉県を支配下に置く。剣術は一級品。 関東でも名の知れた武将で、得意の抜刀術は関東一最速として評価されている。部下からの信頼は厚く、普段は真面目だがおっちょこちょいな一面もある。戦争を止めようとする人間の一人で、早く戦争を終わらせるために仕方なしに戦い続けている。戦中にもう一人の人格が現れることがある。右眼の横には切り傷が横に2本ついている。
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目の前に立っている男を見て、瀬戸がゆっくり口を開く。
「日本大紛争から10年…戦争を見てきた子供たちが今や軍の長となり、率いている。
全国で様々な戦争を繰り広げている中…ここ数年、千葉の湯藤だけが戦争を起こさず休戦状態だった」
目の前の男はただただ顔色一つ変えずにその様子を見つめている。
「なぁ湯藤…お前はその時何をしてた?
あまり良い噂は聞かねぇが…」
瀬戸は睨みつけるように湯藤を見るが、対する湯藤は不気味な笑みを浮かべながら余裕の表情を見せている。
「お前は謎が多すぎる」
不気味な笑みに動じず、更に言葉を足しながら湯藤の表情を伺う。
「まぁこの話はいいだろう。要件はなんだ? お前自ら来たんだ。それ相当の話題なんだろ?」
椅子から立ち上がり、湯藤の方へゆっくりと歩き出す瀬戸が話題を変えると、今まで不気味な笑みを浮かべていた湯藤がようやく真顔になり口を開いた。
「オレと同盟を組め」
たったその一言だった。一瞬驚くもすかさず瀬戸が質問を投げかける。
「メリットは?」
「組めばわかる」
瀬戸が湯藤の真横に行くと呆れた様子で湯藤から背を向ける。
「論外だな! バカバカしい!帰れ! オレは明日の戦のための会議があるんだ。テメェに付き合ってる時間はねぇ」
基本両軍が同盟を組む時、お互い組むことでのメリットが存在する場合でしか同盟を持ち掛けることはない。
しかし、この男は違った。 お互いのメリットを明かず、話を持ち掛けてきた。 これは相手に対しての軽蔑であり、瀬戸の言葉通り論外の何ものでもなかった。
「じゃぁ、また来る」
「あ?何度来ても同じだ」
「いや、お前は組むよ。
お前は…平和を愛する心を持ってる」
その言葉に瀬戸が立ち止まり、湯藤の方を振り向いた。
平和を愛する心…?
何を言っているんだ?コイツは……。
瀬戸の脳内に駆け巡る。
なぜこの男が平和なんて言葉を口に出せる?
その笑みの裏に一体どれだけの人間を殺してきた……。
怒り気味の瀬戸は湯藤を更に睨みつけ、言葉を発する。
「それは自分と同じ気持ちを持っているから…と言うことか?」
怒りが抑えきれないのか、質問の答えを聴かずに話を続ける。
「オレから言わせれば、お前はただの素性の隠した気味の悪りぃクソ野郎だ…」
両者睨み合いながら沈黙が続く。
しばらく沈黙が続いた後、湯藤がくるりと瀬戸から背を向け扉の方へ歩いて行き笑みを浮かべた。
「今はそれでいい……またな!」
湯藤の行動はあまりにもアッサリしていて、呆気にとられた様子で口をポカンと開けている瀬戸。
全く持って理解し難い湯藤の行動は瀬戸の想像を遥かに超えていた。
「はぁ〜。くえねぇ野郎だ……」
部屋を出る湯藤とすれ違う瀬戸の部下。ため息をつき、頭を抱えている瀬戸を見て少し戸惑っている様子だ。
「お頭、あの男は?」
部下が不思議そうに瀬戸に呟く。
「あぁ…あいつは面会や他軍との交渉の際、部下を使わないことで有名だ。
どんな小さな話し合いでも必ず自ら動く。
あいつはそういう男なんだ…」
瀬戸は湯藤の何かを知っている。そう思われるような発言だった。
聴いていた部下もあまり納得のいっていない様子であった。
だが、そんなことはお構い無しに瀬戸は扉の方へ早歩きする。
「さぁ、話は終わりだ!!オレたちは明日の戦に集中しろ!!」
先ほどの表情とは打って変わり、キリッと締まった表情に変わり勢い良く目の前の扉を開ける。まるで、部下を先導するかのように。
「はい!!」
たちまち部下も声を張り上げ、瀬戸の後を追い掛ける。
場面は変わり ーーここは東京都 千代田区ーー
皇居を囲む内堀通りを挟んですぐ目の前に、対抗するかのようにそびえ立つ”新 江戸城”。
2006年に大紛争が終わり、新・戦国時代が開幕してすぐに建てられたとされる。 ”旧 江戸城”よりも一回り大きな造りになっていて、6層からなる天守のテッペンからは千代田区を一望できる。
そのテッペンの天守に住んでいるのが、”新 江戸城”を建設させた男…『斎賀 誠一』である。
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斎賀 誠一 180cm 78kg 31歳 ♂
斎賀軍当主。 東京都を支配下に置き、3000人を束ねる実力者。 …と言うのは建前であって、実は東京都を支配し、3000人を束ねていたのは斎賀軍先代当主 斎賀 誠である。 先代が死亡し、その後釜を息子である斎賀 誠一に託したのである。
先代の斎賀 誠は剣道で世界大会に出る程の実力者である。癖のある男だが、周りの信頼は厚かった。戦後、新・戦国時代に突入し、政権を握ろうと立ち上がり、その優れた剣術と厚い信頼性を武器に斎賀軍を創設した。
しかし一年前に斎賀 誠が死亡し、急遽斎賀 誠一に任させる。 父親とはあまりにも似つかわない出来の悪い息子だった。 父親の影響で小さい頃から剣道を習ったが、全く才能は開花されず、どんどん下の代に追い抜かされ、その時から捻くれ何もかも適当な人間になっていた。
斎賀 誠が死亡した後に遺書が見つかった。中には後釜を息子の斎賀 誠一に任せること、資産全てを斎賀 誠一に託すことが記されてあった。
人々からは当然非難を浴びた。 落ちこぼれの息子に全てを授けたことに納得いかず、部下たちは離れて行こうとしたが、誠一は父親の残した資産で部下の賃金を上げ、何とか兵力を保とうとした。
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日も暮れ、江戸城の頂上の天守から千代田区の夜景を上から眺める一人の男。
「今日で最後か…」
夜の街並みを眺め、ひっそりと呟く。
すると、一人の男が襖を開け正座をし、街を眺める男に頭を下げる。
「誠一様、明日13時に決まりました」
襖の近くの男を1度見て何を考え込んでいる様子である。
そして、街を眺めながら口を開く。
「瀬戸の首をとった者には1000万の報酬をやろう」
「はっ!!」
その言葉に襖の男は声を張り上げ、襖を閉じ消えていった。
数分すると、下の方から地鳴りがするくらいに大勢の雄叫びが聴こえ、それが聴こえると男はスッと目を閉じた。
ーーまたまた場面が変わり 八潮城 大会議室ーー
八潮城の地下に造られた大会議室は戦の前日には必ず全員が集まる。
面接は約760坪。 ちょうど日本武道館の大きさと同じくらいの大部屋に2500人の侍が瀬戸 鷹文を取り囲んでいる。この大人数にも関わらず、誰一人として口を開く者はいない。
瀬戸の近くには各隊の隊長、幹部たちが集結している。 そして、隊長たちと幹部たちにだけ聴こえるような声で話し出す。
「まず最前列には弓隊を置く。そして弓隊の500人は城を囲み、城に向かって矢を放て。
そして残りの足軽隊で中を突破する」
隊長や幹部が頷く中、幹部長の『竹中 吾郎』が話を割って入る。
「お頭、相手軍は3000人だ。兵数だけならこちらが劣ってる。いくら周りから”斎賀軍は堕ちた”と言われてるからと言い、残りの2000人で3000人を相手にするのはあまりにも不利ではないか」
この質問をされることを悟っていたかのような勢いで、間をあけずに瀬戸が竹中を見て笑みを浮かべる。
「数が劣ってることは今にわかったことじゃない。 弓隊を合わせた所で劣っていることに変わりはない。
あいつらは堕ちた…個人の力ならおれはお前らの方が遥かに優っていると考えている。 4階までは何とか抑えてくれ。
5.6階はおれ1人で行く」
一瞬ざわつく。 無理もないだろう。
計6階ある天守の中に何人振り分けられているかわからない。 もしかしたら5.6階に兵が集中している可能性もある。
そういったリスクがありながら、瀬戸は平気でそんなことを言い出すのである。
しかし周りの隊長や幹部は反論もせずにいる。
「お頭は言い出したら聞かねぇからなぁ」
「死なないで下さいよ!」
すると、周りの兵たちも笑い、瀬戸と幹部たちの談笑を眺めている。 戦前日というのにこの緊張感の無さが”瀬戸流”のなのである。
こうすることで無駄な緊張感を解し、いつもの彼らを引き出そうとするやり方は他の軍にはない、独特な手法である。
日が変わり、一刻一刻と戦の時が近付いてくる。 城の一階の広間にゾロゾロと兵が集まり始める。
戦争は当然人間と人間が争い合うものである。戦争に参加する人々はいつも”'今日自分が死ぬかもしれない”という気持ちで戦争にのぞまなければならない。
そして、もしかしたら今隣にいる人間は今日死ぬかもしれない…そう考えると人間は誰に対しても優しくなれるものなのである。
始めは談笑を交えながらリラックスをしていたムードだったが、時が迫ってくると自然に会話が消える。
開戦の1時間半前……ようやく瀬戸が階段から下りて来る。 それと同時に2500人の兵たちも気が締まる。
瀬戸が兵たちの中心に立ち、周りを見てから息を目一杯吸い、
「いくぞ!!!!!」
その壮大な号令の後に、兵たちは答えるかのように
「オオオオオォ!!!!!」
城全体に響くかのような大声と共に瀬戸が先陣をきって扉を開ける。
天気は晴天。 絶好の戦日和。
午後1時 新・江戸城にて、両軍が激突する…
ご愛読ありがとうございました! まだまだ続きます!笑 まだまだ続きますので、これからもよろしくお願いします!