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エピローグ


 ルティオスはクイーンシティ市民の歓声に送られながら、無事、元の時代へと帰って行った。


 その半月後。


 今日は星月の誕生日、翌日。

 18歳を迎えた者は、翌日か近い日に成人の儀式を行うことになっている。とはいえ、実際は親しい者を招いてのパーティだ。

 だが星月は昨日、この国を父親から引き継ぐことを正式に申し入れたため、今日は王女としてのお披露目もある。

 そのため、今日はかなりの招待客を招いてのパーティだった。


 美しいドレス姿で控え室にいる星月を、お祝いの客があとからあとから訪れる。

「うわー、星月ちゃん、美しいねえ。まあ、うちの娘には及ばないけど…。でもさ、よく決心したねー」

 忠志が入ってきて言う。

「広実のおじさん。今日はどうもありがとうございます。そうね、なにかすべきことがほしかったの」

「へえー、エライねえ。じゃああとは一緒に国をもり立てるパートナー探さなきゃ」

 忠志はなぜか皆が避けて通る話題を振る。

 星月は少し寂しそうに首を振った。

「ううん、それはいいの。私は1人でこの国のために働くの。だって私の次に引き継ぐ人は、別に身内じゃなくてもいいんですもの。その点はお父さんと同じ考えよ」

「そうか。まあ、あきらめずにね。なんにしてもめでたいねえ」

 なぜか忠志はやたらと嬉しそうにそう言うと、ぽんぽんと優しく星月の背中を叩いて出て行った。

 その後も、次々とお祝いを述べる客がひっきりなしだった。



 だが、それも一段落して訪問客が途切れ、静寂の時間が訪れる。

 ぼんやりしながら座っていると、コンコンとノックの音がした。

「星月ー。入るわね」

「お母さん」

 それは柚月だった。何だか異常に嬉しそうだ。

「まあ、ほんとに今日は何度見ても綺麗ねえ、貴女」

「どうしたの? 」

「ああ、あのね、昨日お誕生日のプレゼントを渡しそびれたから、渡そうと思って」

「ええ? なんでこのタイミング? あ、ネックレスとかイヤリングとかなの? 」

「ううーんとね、もっと大きな、」

 柚月はそこで言葉を切って、キョロキョロとあたりを見回すと言った。

「…あ、やーねえ、お母さんってば、忘れてきちゃった。ちょっと待っててねえー」

「もう」

 星月はため息をつく。相変わらず手のかかる人だ。



 コンコン。

 またノックの音。

「どうぞ」

 お母さんてば、何度も律儀にノックなんか…。星月はため息をついてドアを開けようと立ち上がる。

 一瞬早く扉が開く。

 そして入ってきた人物を見て、息が止まる。


 え? なに? これは、夢? 私いつの間にか寝ちゃったのかしら。

 それともあんまり思いすぎて、まぽろしを見るようになってしまったのかしら。


「星月…」

 呼びかける声まで聞こえる。


 でも、でも夢なら絶対に冷めないで、キスするまで!


「ルティオス! 」

 星月は走り寄るとルティオスの身体を力の限り抱きしめる。

 ああ、夢じゃなかった。

 え? 

「夢じゃない? 」


「ああ、夢じゃない」

 そう言うと、なんとなんとルティオスの方から、甘いキスを落としてくれたのだった。

 唇が離れると、涙で濡れた頬を、ルティオスが優しくぬぐってくれる。

「お祝いに来てくれたの? 」

「ああ。あ、いや、それもあるが」

「いつまでいられるの? 」


 不安そうに言う星月に、いったん抱きしめていた手を離すと、ルティオスは星月の前にひざまずく。

「星月、俺の願いを聞いてくれるか? 」

 そんなルティオスに、いぶかりながらも答えを返す星月。

「私に出来ることなら」

「星月にしか出来ないことだ。どうか俺の花嫁になってくれ」

「!? 」

 あまりの思いがけなさに、ポカンとしたまま星月は黙ってしまう。

「だめなのか? 」

「まさか! イエスよ、イエス! あ、じゃなくて」

 星月は居住まいをただして、背筋を伸ばすと、ひざまずくルティオスの目をしっかりと見て答えを言う。

「(私はルティオスの花嫁になります。だから一生離さないで)」

 思いがけないi国語の返答に、ルティオスは本当に嬉しそうに星月の手を取って、その甲にキスをひとつ落とす。そうしてそのまま立ち上がると、

「(ありがとう。貴女を一生幸せにします)」

 と、また彼女を抱きしめ、唇に自分のそれを近づけていった。


 話を聞くと、ルティオスは最初、こちらの時代へ帰ってくるつもりはなかったそうだ。だが、あの日、最後の日の夜、璃空が、かたくなに思い込むルティオスの心を少しずつ説得して溶かして行った。その心の奥底には、星月がいたのも間違いない事実だ。

 それで、もしもジャック国に帰っても命を落とさずにその行く末が見られたなら。

 それなら、帰ってこようと決めたそうだ。


 残念ながら、ジャック国は周りの国とともに、ブラックホールへと吸い込まれていった。

 ただ、本当に不思議なことに、ルティオスだけが生き残ったのだ。



 その日のパーティは大騒ぎだった。

 なぜなら。

 成人の儀式と、王女のお披露目と、そしてもう一つ、王女の婚約披露まで加わったのだから。


 数年後、ルティオスはクイーンシティ国王を引き継ぎ、星月とともに見事に国をおさめ、末永く平和が続いたのだった。

 めでたしめでたし。





 あ、そうそう、もうひとつ。R4たちも部屋ごと王宮に抱えられた。

 ある日の璃空とR4の会話。

「R4たちは不思議なやつらだな」

「フシギ? ちがうの、現れるべくしてアラワレタの」

「? 」

「ルティオスを星月のお婿さんにするのが、R4のシ・ゴ・ト」

「え? なんだそれは」

「アノネ、ジャック国ルティオスと、クイーンシティ新行内 星月の融合されたDNAハ、途切れさせちゃいけないんだヨ。ナゼかは、秘密。今は関係ナイからね。けど、ずーっと未来では、とっても重要なの。でも国王、この話は他の人にはイワナイでね。R4と国王の内緒話。あ、ちがった。王妃もシッテるー」

 あっけにとられる璃空。

 ただ、この話は、クイーンシティ国王と王妃の胸の中にしまわれて、この時代で外に漏れることは、決してなかったそうだ。






ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

初期バリヤ隊員の、少し? いえ、かなりあとのお話しです。

で、とってもしょーもない設定をひとつ。

クイーンシティ市民は、なぜ美しいルティオスにメロメロにならないのか?

じつは長じてからスーパーイケメンになる、手塚リーダーの一人息子、一直さんの美少年時代を皆、知っているため、美男子には耐性があるのです。なんてね。


番外編、まだあるかもしれませんので、また次元の扉の向こうへ遊びにいらして下さい。



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