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第12話


「工場にアンドロイドが! 目を撃っても倒せません! 」


 クイーンシティ工場からの通信は、璃空たちが地下から引き上げようとした、ちょうどそのときに入ってきた。やはり次元の扉を抜けずに、街へ向かったロボットがいたようだ。 しかも、新しいタイプらしい。

「落ち着いて聞け。そいつは目と、心臓のあたり、左胸だ。その2つを撃ち抜けば倒せる。わかったか? 」

「了解しました! 」

「なんとか持ちこたえてくれ。すぐそちらへ向かう」

 璃空は的確に指示を出しながら、大至急、北工場へ部屋を飛ばすようにR4と技術班に言う。

「R4、今すぐ部屋の移動は可能か」

「可能ダヨー」

「それから技術班、北工場の正確な場所をR4に」

「はい!」

 技術班が、最初にR4たちの部屋の壁に取り付けたスクリーンに北工場の様子が映り込む。警護班はいるが、苦戦を強いられているようだ。


 璃空ははやる心を抑えながら、次元の向こうで待っている移動車にも連絡を入れた。

「広実。聞いたとおりだ」

「OK~。っていうか、R4たちをそっちに向かわせた時点で、コイツはもう用なしだって思ったからさ、勝手に帰ってる。あ、それから家庭教師の皆さんは、星月ちゃんの乗ってきた移動車で、お帰り頂いたから安心してねー。もちろん護衛にバリヤチームひとつ乗ってるよ」

「ああ、すまない。だが、さすがだな。ならもう一つ。王宮で地団駄を踏んでいそうな…」

「ゼノス隊を連れてきてくれ、か? 」

「ああ、まったくあのじいさんたちは、いつまでたってもマグマのように熱いからな」

「わかったよ。こっちは任せてくれ」


 そして、またひとつ通信を開く。こちらももう向かっているだろうと踏んでいるが。

「晃一。お前の建設所が一番近い。結界バリヤを持って北工場へ向かってくれ」

「おう。俺もたった今、通信を傍受したんだ。今から…出発した、よ」

 小美野おみの 晃一こういち

 璃空の幼なじみで、バリヤ技術班に所属していた。

 結界バリヤという、異界の魔物が繰り出す結界を科学と融合させ、ガラス板のような形で打ち出す装置の開発に携わった。

 今は北工場の近くで、建設や建築のデザインを仕事にしている。

 その小美野も北工場へ向かってくれるらしい。


「準備完了しました。出来るだけ安全な場所を選んでいますが、決して100パーセントと言うわけではありませんので」

「わかっている」

「こっちも完了ー。じゃあ飛ぶヨー」

 R4の声とともにフワッと部屋が浮いたように感じた。




 ジジ、ジジジジ…

 警護班の一人が、銃を構える後ろに何かの音を感じる。

 振り向くと、壁がグニャリと曲がっていた。

「来てくれたか」

 ホウッと肩から力が抜けそうになる。いかんいかんとまた気を引き締めたとき、グニャグニャの壁の中心が黒く変形して、中から国王の姿が現れた。

「国王! 」

 嬉しそうに叫ぶ警護班の一人。

「遅くなってすまない。状況は? 」

「はい、外は大変なことになっています。確実に目を撃っても崩れない、と、半ばパニックになっている者もいる様子です」

「わかった。バリヤ戦闘チームはすぐに戦闘に加われ」

「ラジャ」


 戦闘チームが外へ飛び出していくと、璃空は晃一に連絡を取った。

「俺だ。今どのあたりだ」

「璃空か。もう着くぜ、結界バリヤがな」

 晃一の声とともに、

 ドオーン!

 と言う振動が響き渡る。隠れ場所のないところへ、特大の結界バリヤを落としたらしい。


 窓へ走り寄って外を見ると、今し方落ちた結界のこちら側に、何人かのバリヤ隊員が入りこんでいる。彼らは目と左胸を続けざまに撃ってロボットを倒す。

 それを見た警護班のスナイパーたちも、敵の倒し方を理解したようで、同じように続けて撃ちだした。



 だが、またやっかいなヤツが現れた。

 キューーーーウーーン

 空から何かが落ちてくる音だ。


「ありゃ、ジャンプするヤツまで来た。ホントにこのくそ忙しいときに! 」

 怜がブーブー言っていると、後ろで声が聞こえる。

「護衛ロボが足りない。晃一が来てくれたとは言え、警戒は怠るな」

「国王、またこんな最前線に…」

「人手が足りないだろ。怜、行くぞ」


 言うが早いが、璃空は飛び出して、落ちてくるロボットの目に銃を撃ち込んでいく。

 怜も苦笑いしながらも、後に続く。

 ドン!

 ドン!


 しかしロボットも黙ってやられているわけではない。空から攻撃を仕掛けてくる。

 ドオン

 攻撃が璃空たちに命中する寸前で。


 パリン! 


 まるで魔物の結界が張られたように、透明の膜が璃空と怜を覆いかくす。タイプの違う結界バリヤを、誰かが上手い具合に打ち込んでくれたのだった。

「父さん、神足こうたりさん、なるべく離れずにいて下さい。まだあまり慣れていないもので、連射は少しきついです」

 通信から声がした。

「大地も来たのか」

 璃空のもう一人の跡継ぎ、新行内しんぎょうじ 大地だいちだった。

 彼は、晃一の建設所で働いているのだ。

「国王の跡継ぎは、2人とも頼りになるねえー。俺も頑張らなくちゃ」

 怜と璃空は、背中会わせになって空からの敵を撃ち落とす。


 新人隊員たちはその間、ブライアンと川山の援護を受けながら、新型ロボットを倒していく。だがやはり空中からの攻撃と、2回打ち込むやり方は分が悪いと思っていた矢先だった。

「お待たせー」

 忠志の声がした。

 移動車からはバリヤ隊員と、2頭の一角獣が降りてきた。

「一角獣? 」

「ああ、星月ちゃんが連れてきてた子たちに、一緒に来てもらったよ」

 しかも、さっきは普通の鞍だったのが、今は武装のヨロイをまとっていた。

 ブライアンは、いち早くその一頭にまたがって空へと舞い上がっていった。彼は縦横無尽に一角獣と銃を操って、空中の敵を次々倒していく。

 怜も攻撃を避けながらやってくると、同じように空へと舞い上がる。

「すげえ、ブライアン指揮官と神足指揮官」

「俺たちは慣れてないから、地上で頑張ろうぜえ」

「おーっ!」


 璃空はゼノス隊がいないのを不思議に思い、忠志に聞く。

「ゼノスたちは? 」

「王宮にもしもの事があったら大変だから、残るってさ」

「へえー、大人になったんだな」

「まったく。でさ、自分たちの代わりにって、一角獣を完璧に武装してくれたんだよ」

「やるじゃないか」




 同じ頃、大地は初めて見る戦場に圧倒されて、けれど震える心を何とか落ち着かせ、結界バリヤを打ち込んでいた。その目の端に、負傷した隊員が映り込んだ。

「小美野さん! ケガ人が」

「おう」

 晃一が、ケガ人をかばうような形で結界バリヤを落とす。

 負傷した者には護衛ロボがすかさずつくのだが、その数にも限界がある。結界バリヤはそんな彼らを救う目的もあった。

「なんとか戦闘が終わるまで、その場で頑張って下さい」

 大地は負傷者に向けて通信で語りかける。救いに行けない悔しさはあるが、自分ではどうにもならない。

 そのとき、攻撃をものともせず、彼に近寄る者があった。

 ルティオスだった。

 彼は、見た目の美しさからは思いも寄らない力強さで負傷隊員を抱え上げ、

「援護をお願いします」

 と言うと、R4の部屋がつながった建物へと運んでいく。

「はい! 」

 思わず大声で答えて、大地はルティオスの上に、横に、結界バリヤを落としていった。


 建物の中に入ると星月が待っていて、すかさず部屋の中へと負傷者を誘導する。

「もう大丈夫よ。ここの医療ロボットはすごいのよー」

 ケガ人を安心させるように明るく話しかける星月にひとつ微笑んで、ルティオスはまた外へ飛び出していくのだった。



 どれほどの時が流れたのか。


 あたりが静かになり、舞っていた砂塵もようやく収まってくる。

「殲滅、したようだな」

 璃空が呼びかけると、通信から声が聞こえる。

「ちょっとだけ気を抜かないでねー。今、このあたりの反応を調べてるから」

 移動車にいる忠志だった。戦闘アンドロイドの出す周波数を調べているのだ。


「…うん。反応なし、みんな、良くやったねー」

 忠志の嬉しそうな声に、あちこちから、

「ウォー!」

「ばんざーい」

「やったねー!」

 と、歓声が沸き上がる。


「他の地域はどうだ? 」

 そんな隊員たちを横目に見ながら璃空が問いかけると、R4の部屋から通信が入る。

「今、R4たちがクイーンシティ一帯を調べています」

「王宮、反応ナーシ。研究所、反応ナーシ。…他モ大丈夫。モトモト、街へ行くためには北工場区域をトオラネバなりません。ぜーんぶここで食い止めちゃった、さっすが伝説のバリヤ隊です! 」


 R4の言う言葉を聞いて、隊員たちはさらに歓声を高めたのだった。





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