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最終章 チュロスの魔法はこれからも続く
結婚式から数年後。
『チュロリア』は王国全土に十二店舗も拡大していた。
孤児院の子供たちが店長を務め、アデーラの花屋とのコラボ商品も相変わらず人気だ。
私は王妃としての務めを果たしつつ、毎朝王宮の小さな厨房でチュロスを揚げた。
揚げたてを朝食のテーブルへ持っていくと、フレデリクが嬉しそうにそれを頬張る。
「今日のも絶品だ。毎朝こんな幸せな気持ちになれるなんて、思ってもみなかったよ」
「私もよ。チュロス一つで人生が変わるなんて、思ってもみなかった」
窓の外では子供たちが『チュロリア』の前で笑っていた。
「お姉さん! 今日の新作は?」
「今日はね、星屑チュロス。銀糖とブルーベリーソースよ」
世界はまだ完璧じゃない。
陰謀も嫉妬もある。
でも──温かいチュロスと笑顔があれば、きっと大丈夫。
だって、これが私の。
悪役令嬢じゃない物語の始まりだもの。
THE END