2.女神様からのお願い1
「こちらをお渡ししましょう」
そう言って彼女に手渡されたのは、どう見てもポータブルゲーム機。
左側に矢印ボタンが、右側にアルファベットが書かれたボタンが揃っている。現代の日本人であればかなりの確率で見慣れているであろうアレである。
場違い過ぎるだろう……。
キラキラとエフェクトがかってみえるゲーム機に、この人も含めここにあるものは全て輝いているのかと若干呆れつつも、素直にそれを受け取る。
「何故にゲーム機を?」
「そのゲーム機にはあるソフトがダウンロードされています。まずはそれを全てクリアしてください」
「はぁ……」
曖昧な返事をしつつ電源を入れ起動させる。
ホーム画面には、確かにゲームが一つだけ表示されていた。
「『セカンドライフ*ファンタジー 〜勇者になる男の英雄譚〜』?」
「そのタイトル、言っていて恥ずかしくないんですか?」
「いや俺に言われましても……」
もっと何かいいネーミングはなかったのだろうか。
彼女の言う通り、そのまま口にするのはダサすぎて恥ずかしくもあるな。
「これをクリアすれば良いのか?」
「はい、隠しルートまでの全ルートをクリアしてください」
「……ルートって事はRPGではないのか」
「主軸は恋愛シミュレーションゲームです。RPG要素もありますけど。ありたいていに言えば、ギャルゲーですね」
「あなたの口からその言葉は聞きたくなかったよ……」
「ふふっ」
俺の力無いツッコミに、凛としていた彼女の頬が緩み、初めに見せていたかわいらしい表情が顔を出した。
うん、やっぱり美人だ。
俺がイケメンでないことが悔やまれるな。
膝をついて告白する権利さえないんだから。
「じゃあ始めるか……。この場で良いのか?」
「ええ。制限時間はありませんので、心ゆくまでプレイして下さい。お察しだと思いますが、そのゲームで身に付けた知識は、後にあなたの判断に大きく影響します。心してプレイして下さい」
「了解だ」
ひらひらと手を振ってその場に座り込みゲームにカーソルを合わせる。
そしてそれを起動させた。