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女神さまに実家のまろ助(柴犬)を犬質に取られたので、主人公を追放する父親に憑依転生することになりました。  作者: ルル・ルー


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15.クーデターへの勧誘




 ゲームシナリオで主人公が故郷の消滅を知るのは、彼が追放されておよそ2年後、飲み屋での噂話からである。


 その隣にはどのルートでも大抵妹がおり、自分を捨てた人間ではあるが、お互いに家族の生存がどうしても気になるからと、仲間と共に国に戻る決心をするのだ。

 彼が目にしたもの、それは荒廃しきった王都だった。

 かつて栄華を極めていた姿はどこにもなく、生命の気配が消えかかった巨大な寂れた街。

 緑は一切なく、街を歩く人々は痩せ細りいつ倒れてもおかしくない様子に、ただ茫然とする中、妹に手を引かれ実家に向かうのだ。

 見慣れた白い門は何十年も経っているかのように朽ち、厳重な南京錠がかかっており、その場を守る門番に詳しい話を聞き、そこでようやく彼ら兄妹は彼ら以外の家族がもうこの世にはいないことを知るのだ。


 王国滅亡の原因はクーデターである。

 西を守るランベール辺境伯と複数の貴族が手を組み、私兵と傭兵を率い王城に攻め入った。

 王族は根絶やしにされ、そしてそれを皮切りに、王都の大地から生命の息吹が消えた。

 王族を殺したことで神の怒りに触れたのだろうとその門番は言う。

 そしてその激動の裏で、叛乱者が新たな国王に擁立しようとしていた公爵邸の人間までもが何者かにより暗殺され、クーデターの収束は叶わなくなり、王国は滅亡した。





「先日ぶりですかな、公爵閣下」


「そうだな」


 ルーカスの食べかけのケーキを横に寄せ、空いているカップに紅茶を注ぐのは、ランベール辺境伯。

 そう、クーデターの主犯格である。

 普段のキャラ的には、気のいいおっさんである。


 この前の夜会で挨拶はしたが、顔見知り程度なのでいつものように特に会話らしい会話はしなかった。

 俺が1人になるタイミングが無かったからか、はたまた王太子のあの騒動で見切りがついてしまったのか。

 後者であればもしかするとクーデターの時期が幾分早くなる可能性がある。

 主人公がどのルートを選んでも、クーデターの噂を聞く時期は変わりなかったと言うのに。

 ほんと、あの王太子は余計なことをしてくれたな。


「単刀直入にお伺いする。閣下は今の王族をどうお思いですかな」


「どう、とは?」


 やはりその話か。


「何でもよろしいのです」


「……期待しているところ悪いが、特に思うところはない。血筋云々の話も公爵家からすると他の家の話だからな。公爵家は建国以来ほぼ独立している状態だ」


 公爵家の人間は王族に対して恭しく頭を下げる必要はないのだ。

 それは歴史を見れば明らかである。


「王太子殿下が王の子でないと知ってもなおそう言い切れますかな?」


「……、そう言うことか」


 なるほどな、合点がいった。

 原作をプレイしている時から疑問に思っていたのだ。王家の血筋が怪しいだけでは反乱者側の決め手に欠けると。怪しいのは何代も前からの話だったし何を今更と思っていた。

 しかし、国王の唯一の子が国王の子ではないと知ったのならまぁ仕方ないかと割り切れる。


「その情報は確かなのか?」


「えぇ」


 果たしてその爆弾にあえて火をつけたのは誰なのか、気になるところではあるがこの男は教えてはくれないだろう。

 この場合、そいつが一番の戦犯だろう。

 誰も知り得ないであろう情報を持っている人物。そして王家の滅亡を誰よりも望んでいる人物。

 1人思い当たってしまい、何とも言えない気持ちになる。

 彼らは王家の滅亡が王国の滅亡につながるとは思ってもみなかったのだろう。


「……ランベール殿は謀反を起こすつもりか」


「ええ」


 はっきりと言い切った。

 公爵家が王家に回ることはないと確信しているらしい。

 やはりあの夜会がきっかけか。面倒だな。


「王を下ろした後、私を据えると?」


「ええ。でなければ閣下にお話ししておらん」


 だろうな。

 そこに未来はないと言うのに、明るい未来を思い浮かべ躍起になっている。


 原作では、なぜ王家の滅亡が神の怒りに触れたのか、そして公爵家は誰によって滅ぼされたのか、その原因は語られていない。

 俺はそのどちらも回避しなくては、生き残ることはできない。

 わからないことだらけ、何もかも手探り状態だ。

 ただ今の俺が言えることは、次男を魔王の元に向かわせる事だけは変えてはならないと言う事。王国滅亡以前に、人間が滅びてしまう。

 いくら勇者だからと言っても、彼を王国に留め置くことはできないのだ。


 原作の宿主はどうしたのだろう。

 彼らは宿主を王にすると言っている、それは原作とも変わっていない。

 クーデター時は公爵邸にいたと言うし、公爵家の私兵も参加してはいないだろう。

 もしかすると勝手にしろとでも言ったのかもしれない。


「その旨、断らせていただく」


「……理由を伺っても?」


「こちらにメリットがないからな。先に述べたように、王家の事情など我々からするとどうでもいい」


「王になれると言うのにですかな?」


「なりたいならとうの昔になっている。そう難しいことでもないだろう」


「違いない」


 そう、難しいことではないのだ。

 わざわざクーデターなんて回りくどいことをしなくとも、王家をうちから食い潰すことができてしまうのが公爵家である。


「承知した。しかし我々が王を下すのは決定事項だ。閣下は王にならせざるを得まい」


 王家の滅亡は王国の滅亡である。

 王太子が王の子でないのなら、どうやったって王家の滅亡は免れない。

 つまり王国滅亡へのカウントダウンは王太子が生まれた瞬間から始まっていたのだ。

 その連鎖を断ち切れるのは未来を知る俺だけなのだろうな。

 王にはなりたくないが、しかし公爵家の者は守らなくてはならない。


「あまり意味はないだろうが、一言いいか?」


「何ですかな?」


「百戦錬磨の辺境伯が先陣を切るのだ。謀反自体は驚くほどあっけなく成功するだろう。だがそれでも、やめておいた方が良いと私はこの場で言っておく。新国王云々以前にその先にこの国の未来はないからな。こちらも力を尽くすつもりではあるが、いかんせん敵が分からん」


「何の、話ですかな?」


「こちらの話だ。まとめると、事情が事情だ、謀反を起こすなら勝手にしろ。力尽くでも止めない私も含め、泥舟に乗っていることを忘れるなと言うことだ」


「泥舟とはまた不吉な例えですな」


「ああ、我々の敵は王家だけではないと伝えておく」


 あえて我々といい敵ではないことを明白にする。


 俺らの敵はこの地から加護を奪う神、もしくはそれを引き起こす誰かである。

 そう、王族を殺すぐらいで神の加護がこの地から消えることは絶対にないのだ。


 真面目な顔で真っ直ぐに辺境伯を見ると、何かを察したようで眉を顰めた。


「公爵閣下の力をもってしてもわからぬ敵ですか。占いでもしましたかな?」


「まぁ似たようなものだな」


「ハハハ、珍しいことがあるものですな!閣下が占いとは!」


 シリアスな話をしていたのに、めちゃウケてしまった。

 まぁ確かにキャラじゃないしな。


「あいわかった。その言葉、胸に留めておきましょう。お互い、力を尽くしましょうな」


 こう言う気持ちがいいところが人に好かれるんだろうなと思う。

 辺境伯のファンは多いのだ。

 差し出された手に握手で返す。


「ああ、武運を祈っておく」


「それは嬉しい限りですな。では失礼する、お時間を取らせて悪かった。下にいる情夫殿はこちらが呼び戻しておきましょう」


 情夫て。

 ほぼ悪口だろそれ。

 そう言えばこの人、奥さん一筋の人だったな。


「一応、否定しておく」


「ハハハ!これは食われるのも秒読みですな。もっとしっかりと断らねば」


 そう言っておっさんは上機嫌に部屋を後にした。


 俺は何とも言えない顔でその背中を見送ったのだった。

 なぜ俺が食われる側だと思ったのか。

 甚だ疑問である。


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