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女神さまに実家のまろ助(柴犬)を犬質に取られたので、主人公を追放する父親に憑依転生することになりました。  作者: ルル・ルー


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13.王太子




「団長様、いつまでこちらにいらっしゃるおつもりですか?」


「いつまでもいますよ」


「研究が大詰めを迎えているのでしょう?そちらはよろしいのですか?」


「頼もしい部下に任せて来ましたのでご心配には及びません」


 挨拶も終わり、長男と今日の感想について会話を交わしていると、暇になったのかとうとう奥さんと団長が俺を挟んで言い争いを始めてしまった。

 魔法の師匠ではあるが、愛人候補にと図太く擦り寄ってくる団長を牽制しまくっている。

 あまり効果は伺えないが。


 団長が忙しいのは本当のことである。

 その研究だってきっと、部下には荷が重いような内容なのだろう。

 俺も、団長にそこまで気に入られるような事はしていないのだが。


 もはや見慣れて来た構図に俺と長男はスルーを決める。

 幾ら気に食わなくとも、『魔法使い最強』というカードを切り捨てられないのは奥さんだって分かっているのだ。

 殺伐とはしているが魔法の授業の時はお互い割り切っている様子なので、2人の相性は案外悪くないのかもしれない。


 その後もあーだこーだ牽制のラリーを続ける2人の声をBGMに、娘ちゃんの様子を伺う。

 ソファに座る娘ちゃんの周りを、仲の良いお姉さん方が囲んでいる。

 しばらくすると、そのほんわかとした空気の中に水を差す者が現れた。


 金髪に緑の瞳を持つその人物の特徴に心底うんざりする。

 あの人が不参加だから下2人を連れてきたんだけどなー……。


 俺の両脇でなおも言い合っている2人の会話を手で制すると、揃って俺の視線を辿った。


「なぜあの人がここに…。不参加のはずでは?」


「ご自分だってそうでしょう?」


「お二人とも、口喧嘩はほどほどにして下さい」


 とうとう長男が口を出した。

 途端にしゅんとした2人に一番効果があるのは長男であることを知る。

 俺の威厳はもうこの2人には通用しないからな、ちょうど良い。


 視線の先、突然の乱入者は、呆気に取られる女性陣の輪を縫って娘ちゃんの手首を取った。


 距離がありその会話は聞こえないが、明らかに有無を言わさない動きである。

 その行動に次男が何かを言い、乱入者の表情が怒りに満ちるのを見てため息を吐く。

 次男にはあの人の対応は荷が重かったか。


「ラウル、クラウディアを頼む」


「かしこまりました」


「閣下、私はどうしましょう?」


「……、好きにしろ」


「はーい」


 かなり厚かましくなったな、この男。

 しかし、己の言動に断りを入れてくると言う事は、暗に限りなく公爵家の味方についていることを示していた。

 憎めない男である。


 乱入者が声を荒げているからか、もはや会場の注目はその一点に集まっている。

 少女の腕を掴んで離さない青年と、それを離すようどうにか説得を試みる少年。そして少女の顔色はこの上なく悪い。

 何があったのかその光景だけでなんとなく想像できる傍観者たちは、少年と少女に同情的な表情を浮かべていた。

 青年に対する擁護の声が全く聞こえないことに、この国の未来を憂う人までいる始末。

 俺もそれには激しく同意するな。


 現場に到着し、こちらに気付いていない青年に声をかける。


「王太子殿下、お手をお離しください」


 テメェ何娘ちゃんに触れとんじゃ、アァ?


 そう思いを込めると、存外低い声が出てしまい自分でも驚いた。

 青年は睨め付けるように俺の顔を見て、そして一転怯えた顔と共に弾かれたように手を離した。


 そんな怖い顔してたかな。

 まあ、怒ってはいるのだが。


 ほっと息を吐く娘ちゃんと次男を確認し、再び青年に視線を向ける。

 すると我に帰ったのか、今度は顔を真っ赤にして怒り始めた。

 情緒は大丈夫か?この子。


「公爵とはいえ、いきなり話に入るとは無礼だろう!」


 そっくりそのままお返しするが。


「殿下こそ、娘に何か御用でしょうか」


「……あぁ、そうだったな。公爵が来たならちょうど良い。この娘のことだが、僕の側室に迎えるが良いな?」


 ……は?


 はっきりと口にされた言葉に言葉を失う。


 …え、ちょっと待て。ここまでの阿呆とは聞いていないのだが?

 問答無用に結婚を申し込むのは権力者なので百歩、いや万歩譲って良しとしよう。

 しかし王家に公爵家の人間を入れないのは建国以来の法で決まっており、貴族なら幼少期の段階で習うはずなのだが。


「娘は公爵家の人間です、殿下」


「?そんな事はわかっている」


 話が通じない。

 もっと直接言ったほうが良いか?


「公爵家と王家は血縁的に不可侵なのです」


「あぁ、そのことか」


 知ってて言ってるのか?


「そんなもの、もはや必要ないだろう。いつの時代の法だと思っている?」


 あ、これは本当に話が通じないやつだな。


 法は必要だから存在している。

 建国以来、時代の変化に少しずつ変わって来ているが、公爵家と王家の取り決めについては当時から何も変わらない。

 変えていないのではなく、変えてはいけないのだ。

 それが建国王と公爵家初代当主が交わした血の契約であるから。これを破ると、この国からは神の加護の一切が消えてなくなってしまう。


 王太子の教育係は何をやっているんだ。

 職務怠慢で解雇するべきだろう。


 チラリと玉座に座る国王夫妻を見ると、国王は幾分かやつれた顔を、王妃は感情の見えない笑顔でこちらを見ていた。

 国王は生まれの境遇にハンデを負いながらもどうにか職務をこなしており、国民からの評価は悪くない。

 王妃もこの王太子が唯一の息子であるが、ゲロほど甘やかしている訳ではないと報告を受けている。

 この場合、問題なのは王太子の周りにいる貴族連中か?

 今日も誰かしらに唆されて会場にやって来たのかもしれない。

 国王は参加を渋っていたと言うし。


「では、殿下が元老院にて法を変えることができました暁には、娘を王家に送りましょう」


「ほう、言ったな?」


「ええ」


 そんな事は絶対にできないがな。

 元老院は王家ではなく公爵家の管轄だから。

 それすらも知らないのか。


 周りの人間からの白い目にも気づかず、意気揚々と踵を返して去っていく王太子。

 そしてその背中に途中から合流する男がひとり。

 王家に近いレグルス伯爵だが、俺に向けていつも通り狐のような顔で一礼してその背中を追い消えていった。


 何を考えているのかよくわからない男だ。

 あれでは王太子を唆した本人であると自白しているようなものである。




 災難が去りこの場にいる誰もが息を吐く。

 掴まれていた手首を隠し、お姉様方からの慰めに笑顔で応じ大人な対応を見せる娘ちゃんに歩み寄る。


「ティナ」


「はい、お父様」


 見上げる娘ちゃんの声はいつも通りだが、微かに腕に力が入っているのを見逃さなかった。

 俺が宿主に憑依して3ヶ月が経とうとしている。その中で数えるほどしか会話はしていないが、それくらいの変化は分かるようになっていた。


 目の前で膝をつき手を差し出す。


 その俺の行動に、会場中から軽く悲鳴が上がる。

 公の場で膝をつくなんて初めてである。王にも頭を垂れないのだから、納得の反応だろう。


 娘ちゃんも驚いているが俺の意図は伝わったようで少し渋った後、諦めたように大人しく俺の手の上に手を置いた。


 安心させる思いも込め、その小さな手を優しく包み込みながら、王太子に掴まれていた細い手首を見ると赤黒い痣になっていた。

 それを見てイラッとした負の感情が湧き上がる。


「ルーフェス」


「一つお願いを聞いてくれたら良いですよ?」


 こんな時まで抜かりないな……。


 団長の言葉にチラリと遠くにいる奥さんを見る。

 目が合うと何か察したのか不貞腐れたようにそっぽを向いてしまった。

 ほんと、可愛らしい人である。


「ああ、いいだろう」


「ふふふっ、楽しみですね」


 金銭の方がいくらかよかったな。

 これでも線引きはしているから過激なお願いではないだろうが、何となく不安である。


 しかし、これをきっかけに娘ちゃんが次男の追放について行くとか言い出したらどうしよう……。

 しばらく王家とは距離を取るか。


 そんなことを考えていると、団長の魔法があたりの金色の粒子を巻き込みながら、娘ちゃんの手首に集まっていく。

 聖属性は怪我が治せるから便利だよなー。

 じんわりと血色の戻る手首を見て頷く。


「大丈夫か?」


 そう言い顔を上げる。

 すると痛みが引き安心したのか、笑顔が崩れ口がへの字に曲がっていくのがわかった。

 11歳の少女に16歳の男が力尽くで迫ったのだ。

 いくら肝の据わった娘ちゃんとはいえ、怖かったことだろう。


 人の目なんて気にせず甘えていいぞと視線で伝えると、涙を堪えるような表情と共にふらっと体を寄せて来た。

 その背中をトントンと撫でる。

 耳元でぐすんと鼻を啜る控えめな音が聞こえた。


 さて、娘ちゃんにこれ以上嫌な思いをさせないためにも、今日はお開きにすることにしよう。


 その軽い体を片手で抱え上げる。

 びっくりして涙が止まっている娘ちゃんを横目に、娘ちゃんのお友達に挨拶を言い残し家族の元へ向かう。

 呆然と立つ次男を見て歩き始めると、はっと我に帰ったように後をついて来た。


「父上……」


「手を上げなかっただけ上等だ、気にするな」


「はい……」


 不甲斐なさを感じているようだが、あれは仕方がない。

 まぁ、将来ハーレムを築くような男になるのなら、今の俺以上のフォローができないといけないんだがな。

 俺が憑依したことで家族の仲が改善され、妹に依存しなくなったのかもしれない。

 精神的にはいい影響だろうが、追い詰められていた方が力を発揮するという点ではあまりいい変化ではないのかもしれないな。


「閣下、お帰りですか?」


「ああ、世話をかけたな」


「でしたらお見送りいたしますよ。ここにいる意味もないですし」


 その露骨な言葉にジト目を向けるとにっこりと朗らかな笑顔を返された。

 相変わらずだな、この男。


 その後、娘ちゃんを抱えたまま奥さんと長男とも合流し、馬車に向かったのだった。





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(❁ᴗ͈ˬᴗ͈))))

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