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みーちゃんは生きたい!  作者: トミー尾杉
31/32

ex、罪処(ざいか)

訪問なさった方へ

30話まで御覧になられましたか?飛月未来の行く末を届けていただきましたか?

まだだよ、という方は是非1~30話をご覧になってからこの話にお入りください。

1~5話あたりまでで、だいたい飛月未来がどんな子かわかるかもしれません。

11話ぐらいから話が進みだしますので、そこから本格的に見ていただいても良いかもしれません。



――――ここからは生者のままでは味わうことのない魔の世界。死んだことがある者しか共感し得ない心理の世界。代償多き選択肢の結末にして始発点。

人生を諦めた彼女の悲痛の再来。彼女は真に散り逝くまで、負を抱え続けることでしょう。

 ――――自ら命を絶つことの何がいけないのか。

 世界で唯一平等に与えられた命を捨てることのなにがいけないのか。


 それは。

 自身の魂の破壊だからだ。


 わたしたちは肉体を持って生まれ、星の中で愛を育む。

 その経験を通してわたしたちの魂は成長していくのだ。

 成長した魂は何度も肉体を持っていろんな星に、いろんな生物として生まれて何度も多くを経験して。

 そうして魂は――――


 ・・・・・・なんて


 そんな壮大な魂の物語なんて死んでからわかったもので生きているうちにこんなものが判るわけがない。

 死ぬほどつらい。死んでしまうほどきつい。

 それがこの世というものだ。

 なんで生まれてきてしまったのだろうと考え続ける日々だった。


 では、もっと理屈的に。現実的に。

 なぜ自分の命を大事にしなければならないのか。


 それは単に――――もっていないから。

 折角生まれてきて、多くを経験して味わって。

 それは、生きている時にしかできないことだ。


 つらいこともかなしいことも。

 うれしいこともたのしいことも。


 それは生きていなければ味わうことができない心。


 楽しすぎれば魂が腐り。

 辛すぎては魂が錆びる。

 だからある程度、人生というものにはバランスがある。


 誰かを傷つけて楽を得れば、必ず自分に返ってくるし、

 痛みの先に、必ず楽がある。

 世界は、因果の応報で廻っているのだ。


 だからこそ、辛いからといって人生最大の逃げである『自死』は心のどこかで皆、禁じているのだ。

 必ず現れる幸福の訪れを、魂だか心だか、もっと大きな存在みたいなものは知っているから。


 ダメだ。ダメだと。

 ワタシに囁いていていたのだ。



 ・・・・・・では。

 人生最大の禁忌たる『自死』を行ったものはどうなるのか。

 それは。

 きっと。

 ワタシの経験では。


 ――――みんなの参考には、ならないだろう。




「・・・・・・え?」

 ――――薄暗い部屋の中に、いた。

 無機質な灰色の壁に、白いカーテンのようなものがあたりに取り付けられた部屋。

 花が数本、あたりに散りばめられているという異様な風景。


 硬い鉄板のような板の上に寝かしつけられた身体は若干こわばっているが、異様に身体が軽い。

 だが――――虫唾が奔るような負の感情が、心の中を這うように蠢いている。


「・・・・・・ここは」

 瞬間。一つの経験という名の記憶。

 脳裏に映るは衝撃の跡。


 風を切った身体は地面に叩きつけられ、前半身の消失する感覚と頭蓋をかち割られた感覚。

 鮮血と共に視界が赤に染まり、身体の中身がまるで解き放たれてしまったかのように感覚が消えていき段々と冷えて・・・・・・


「・・・・・・ヴッ」

 中からあふれ出しそうになるものを口から吐き出したくなる。

 だが腹の中は何もないようで、嗚咽を吐くことしかできず。


 頭を押さえ、身体の至るところを触って。

 自分の身体の安否を確認してしまう。


 確かに感じる肉の感覚。

 感じたことのない布生地に覆われた自分の身体に違和感を覚えながらも、感じた痛みと冷たさがないことに心底安堵していた――――そんな中。


「・・・・・・おや。目を覚ましましたね」

 ギギギッと軋んだ扉の開く音と共に、縦長い人影がこちらに現れた。

 それは、人で在ったが。

 その影はどこか蛇のようにスルスルと奇妙で気色の良くないものを纏わせながらこちらに近づいてきているように思えてしまう。


「思ったよりも早いお目覚めだ――――実験は成功のようですね」

「・・・・・・おまえは?」

「リード!奴は目覚めたか!?」

 空いた扉からもう一人。

 目の前の男ほどではないが背が高く、ごつい体格をした男が声をあげてながら走ってこちらにやってきた。


 長身の男は細い目を怪しく輝かせながら大層嬉しそうにこちらを見つめ。

 後からやってきたのは、白い髪に白い髭を口の下や顎に生やした男。


「・・・・・・スーロ。あまりはしゃがないでください。問題はここからです」

「う、うむ。そうだな」

「〝ヴィ″の復活。契約が果たされれば私の望み通り、貴方の〝不死″を研究させていただきますよ」

「しつこい奴め。わかっておるわ」

「・・・・・・しかし猶更惜しい。『あれ』がまだ汚染されていなければ〝エゴ″に対する切り札にも成り得たかもしれませんでしたが」

「嘆いても仕方あるまい。どこにいるのかも定かではないのだ。そろそろ動かねば〝ライド″の奴が・・・・・・」


「・・・・・・おい」

 上半身だけを起こして彼らを睨みつける。

 目の前でわけのわからないことを話すな。

 こっちは一体何が起きているのか全く分からないんだぞ。


「・・・・・・お前たちは、なんだ?」

 敬語を使う余裕もない。

 目の前にいる奴らは、明らかに何かをしようとしている。


 ヴィの復活?不死の研究?エゴに対する切り札?ライド・・・・・・?


 ・・・・・・一体、なんの話だ?


 異常に軽い身体といい、身体の中を奔る嫌な気分といい。

 ワタシはこいつらに、いやワタシの身体はこの男たちに何かされたというのか。


「どうですか、飛月未来さん――――蘇った気分は?」

「――――よみが、えった・・・・・・?」


 ・・・・・・こうやって人と話している以上、自分がまだ生きているということを嫌でも実感させられる。何故あんなことをしておきながらワタシは今、生きているというのだ?


「お前は凄まじいほどの負の感情を纏いながら死んでいった。その遺体を利用させてもらったのだ」

「・・・・・・は?」

 スーロと呼ばれていた老人の言葉に対して吐き出すように答える。

 死人を復活させる技術?なんだそれは?

 そんなものがあるというのならば、もっと有効的な活用方法があるのではないのか?

 ワタシなんかよりも、もっと・・・・・・


 いや、違う。

 なぜ、ワタシだったんだ。

 また、あの世界に戻らなければいけないのか。

 怖さも痛みも味わって。また生きなければならないというのか!?


 ・・・・・・・ふざけるなよ。


「――――ふざ、けんな!」

 段々と、沸々と心の沼を満たすように怒りが込みあがってくる。


「なぜワタシを生き返らせた!?

 こんなことをされても・・・・・・苦痛の延長線上を生きるだけじゃないか!?」

 またあんなことを味わう必要があるのか。


 ワタシは全てから解き放たれたかったから『やった』のに。

 これでは、あの行為の全てが無駄だったではないか!


 死んだことに後悔はあった。

 やったことに酷く後悔した。


 だけど。

 今のワタシの中身は、もう前までのワタシじゃない。

 なんかもう酷くてひどくて。

 何もかもが憎くて、妬ましくて。

 愛してほしくて、いろんなものが欲しくて、


 ――――タマラナイ


「何を勘違いしている。お前のためではないぞ、飛月未来。儂は姪の復活のためにお前の肉体を利用させてもらったにすぎん」

「事情なんか知ったことか!

 ワタシじゃなくてもよかっただろ!なんで、よりによってワタシなんだよ・・・・・・」


 あたまが、酷く痛む。

 なんだこの・・・・・・脳内も心も全てが雑にかき回されているような感覚は


「スーロはともかく、私は契約の為でもありますが。案外、貴方に期待をしているのですよ」

「おい、余計なことを」

 まぁまぁと宥めながら、リードは楽し気に微笑みながら話を続ける。


「・・・・・・『バベル』との融合例、というよりも『邪神』との融合はライドという成功例がありますが、こちらにも成功例の一つぐらいあってもいいではないですか。

 それに、それ以外にも・・・・・・

 貴方の持つ『魂底』、そしてその膨大な嫉妬のエネルギーがもたらす〝可能性″というものに、私は期待せざるを得ないのですよ、ね」

「嫉妬の・・・・・・エネルギー?」

「さて、一回試してみますか」

 ワタシの疑問なんて知らぬといわんばかりに、リードと呼ばれた男は一枚の紙をこちらにつきつけてきた。


「・・・・・・え?」

 その内容は。

 死亡届であった。


 ワタシのものではない。



 ――――だいすきな・・・・・・お母さんの、もの。


「貴方が亡くなった2日後に飛月昭子は覚醒。右腕こそ麻痺していましたが無事に退院。

 その後、遺体で発見されました。

 まるで――――貴方の後を追うように地面に身体を叩きつけて」


「・・・・・・あ」


 ――――それは、つまり。


「・・・・・・あぁ」

 ワタシは。

 ・・・・・・ワタシは。


 ワタシの我がままな行いは


 ――――お母さんを、殺したということだ。


「アァ、アアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!」


「ほぉ。これは凄まじい。では改めて・・・・・・」

「待て、儂が名を決めよう」

「ふふ、お好きにどうぞ」

「奴から嫉妬の感情を押し付けられたのがヴィだ。ならば、こやつも嫉妬を冠する名を与えてやろう。

 飛月未来・・・・・・これからお前は――――」


 中身が蠢く。

 段々と身体も心も全部がどす黒いものに呑み込まれるような感覚。

 身体が異様な光を発しながら。


 ――――ワタシのせいで。

 ・・・・・・ワタシのせいで。











 ワタシのせいでワタシのせいでワタシのせいでワタシのせいでワタシのせいでワタシのせいでワタシのせいでワタシのワタシのせいでワタシのせいでワタシのせいでワタシのせいでワタシのせいでワタシのせいでワタシのせいでワタシのせいでワタシのせいでワタシのせいでワタシのせいでワタシノセイデワタシノセイデワタシノセイデワタシノセイデワタシノセイデワタシノセイデワタシノセイデワタシノセイデワタシノセイデワタシノセイデワタシノセイデワタシノセイデ――――――――――――







 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・



 漆黒の躰にざらざらとした肌。

 鋭利な黒爪に全身に走る紫と緑の血管のようなもの。

 視界は多角的に、全てが見える目。

 額に生える角と、針山のように割れた口。

 瞼を裂き、肥大化した円形の目。

 その目の色と躰。

 それはまるで翅のない――――


 嗚呼。

 蒸気上がるこの肉体は、

 罪の証。


 人を殺してしまった、罪の在処。

 この躰に刻まれたその姿こそ、ワタシがこれから背負うものだろう。


 ・・・・・・事の顛末。


 ワタシの行為は、ワタシの人生にだけ留めることではなかった。

 遺していった人の人生にも十分影響を与えるということ。


 生きていれば。

 生きてこそいれば。


 こんなことには、ならなかったのに。

 こんなことになるなんて、思っていなかったんだ。


「・・・・・・ゴメン、ナサイ」

「・・・・・・ゴメン、ナサイ」

「オカア・・・・・・サン」


 がらがらと部屋全体が崩壊しつつある。

 天井からは月明かりが一筋。

 人を辞めた躰を、優しく照らし続け。


 ワタシは――――


 身体が、もとの人のものに戻っていく。

 どうやって戻したのか。戻る方法があるのか。誰かが戻してくれたのかはわからない。



 奴らはどこかへ消えてしまった。

 だが、リードという男の声が、どこからか聞こえてきた。


『・・・・・・楽しみです。貴方がどのようにしてこれからを生き、この星に起こる大改革に向き合っていくのか。ふっふっふっ』

 怪しく笑う声は次第に消えていき、もう聞こえなくなった。


 薄灰色のドレス。

 脳裏に映る、独りの少女。

 金色の髪に緑色の瞳。ワタシと同じ色のドレスを身にまとった少女。


 聞こえてくる「もっと愛されたかった」という小さな声。


 ――――貴方も、そうだったのね。




 ・・・・・・最悪な人生の延長線。

 どのようにして歩くかを、これからちゃんと決めなければいけない。


 ドロドロとした嫉妬の世界は未だ晴れないけれど。

 いつか必ず。


 この生が無価値ではなかったと思えるように。

 一度死んだのだから、死の感覚も恐怖も誰よりも知っているワタシだからこそ。


 次の死は、もっと誰かのために。

 誰ももう、こんな気持ちになってほしくないから。


 何をすればいいかわからないけど。


 今度こそ、価値ある死を――――



「・・・・・・行こう」





ここまで御覧いただき、誠にありがとうございました。

まさか蘇るなんてね、不思議なこともあったものです。


この物語は勿論フィクションでございます。


だって、死人に口はありませんし、死んだ後の事なんてわかったものではありません。それに、死んだ人間が無傷で戻ってくるわけが、ないのですから。


この物語をなぜ綴ったのか、飛月未来とはなんだったのか。そして次回作のちょっとした紹介なども、このお話の後ろに投稿しておりますので、是非見てやってください。


いいねをくださった方、感想を送ってくれた方、ありがとうございました!

凄く励みになりました!


ではでは、ありがとうございました!皆様に幸がありますように!

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