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みーちゃんは生きたい!  作者: トミー尾杉
30/32

第30話(完)

 マンションの屋上は残念ながら立ち入り禁止。


 ならば、できる限り高い階段から。


「・・・・・・綺麗だ」

 階段を上るにつれて、天に近づくにつれて地上の明かりが眩しく感じる。

 やけに、眩しく感じる。

 全てが、太陽に見える。


 ――――全部全部、妬ましい。

 ・・・・・・光るな輝くな。眩しくて仕方がない。


 コンクリート製の、分厚い壁のような柵に手をついて、身体を上げようとするが、中々身体が上がらない。


 ――――なんで、生きてるんだよ皆!


 ――――どうして生まれてきちゃったんだよワタシ!


 死にたくない!シニタクナイ!まだ幸せになれるって信じたい!


「・・・・・・なにをいまさら」


 けど・・・・・・けれど。


 疲れた。

 疲れてしまったんだ。


 苦労の末に見えない闇に、折れたのだ。

 もう、立ち上がれない。

 夢も恋も未来も、全部頓挫、折れた。


「ワタシー!頑張ったよー!」


 意味もなく、叫んだ。


 誰に届くわけでもない。

 ただ虚空に響くだけの、無価値な声。


 思い切り腕に力を入れる。

 身体は転がるように目の前の壁を越えて――――宙に浮いた。


 生まれて初めての、解放感。

 頬を切る強烈な風。引っ張られる感覚。


 よく手をつないでお母さんと土手を歩いたなぁ時々スーパーによってアイス買ってもらったなぁ幼稚園ではよく可愛がられていたなぁ初めて握ったバットは重かったなぁグラブは少し革に匂いがきつかったなぁ豆は痛かったなぁチームで活躍できて嬉しかったなぁ初めてホームランを打った時お母さん泣いて喜んでくれたなぁ家で素振りしてて机に当てて机を壊しちゃった時はすごく怒られたなぁ旅行楽しかったなぁ市選抜に選ばれた時凄くびっくりしたなぁ河川敷にいた時間もしかして家と学校の次に長いかもなぁ月明かり綺麗だったなぁ楽しかったなぁ監督嫌だったなぁお母さん忙しそうだったなぁ学校嫌だったなぁ頑張ったなぁ勉強も頑張ったなぁ教師たち嫌だったなぁあの日暑かったなぁあの日は寒かったなぁ親子丼好きだったなぁお母さん大好きだったなぁ咲さん好きだったなぁ



 お母さん生きてるかなぁ咲さんこれからどう過ごすかなぁ



 あ。

 お母さんにお礼を言いそびれた。


 あ。

 結局、咲さんに想いも伝えてなかったな。


 今更・・・・・・やり残したことがでてきた。


「・・・・・・あぁ」

 地面が、近い。


 なんだ。案外。

 楽しいこと、いっぱいあったじゃん。


 不幸に、闇に視界を覆われていただけで。

 感じることはできたのではないだろうか。

 少しは在った。在ったはずなんだ。

 確かに刻まれていた楽しい日々を。楽しかった毎日を。


「やらなきゃ、よかった――――」


 ――――人は今を生きる生物。

 未来を生きる動物ではない。だから期待は苦しいだけだ。


 だけど、過去があったではないか。

 傷つくこともあったけれど、間違いなくどこかしらに。

 自分を構成してくれたものがあったはずだ。


 何故ワタシはあの時に本を取り返すような行動をしたのか。

 何故ワタシは咲さんを遠ざけようとしたのか。


 ・・・・・・そうじゃん。


 誰かに、自分と同じように幸せで在って欲しかったからじゃん。

 傷ついていくことを許容できないものが、自分には在ったではないか。


『――――未来ちゃんはカッコイイ人だよ』


 ああ。


 そういう、ことだったんだ。


 もっと早くに、自分の良さに気づいておくべきだったなぁ――――




 ――――2月中旬。

 桜田中学校を震撼させる数年ぶりの大事件。

 対応はこなれており、メディアはすぐに学校に寄り付かなくなり、

 ある教室の壁側の席の添えられた一束の花が一つ。


 それは学校が添えたものではなく。


 彼女の最期の言葉を、背負うことを選んだ少女からの・・・・・・




今回の話を以て、残念ながら飛月未来は死んでしまいました。お悔やみ申し上げます。

しかし、後日談があります。

ex、罪処ざいか。どうか彼女のこれからの未来、その始まりを見届けてやってください。

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