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みーちゃんは生きたい!  作者: トミー尾杉
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第25話

「・・・・・・いたいな」

自室。気温が低くなる中、足元に湯たんぽを置きながら高校受験のために勉強を進めていたが、痛みのせいで集中できずにいた。

こんなことでは、もし生きたくなってもロクな将来をむかえることはできない。

咲さんはもういない。

自力で、独りでやっていくしかない。


「・・・・・・まいったなぁ」

気分を上げるために曲を聞きながら行っていた学習は、最初こそ効果あったが痛みと共にやる気は沈んでいく。

意味がないと曲を切り、コルセットを外してスマホを持ち、布団に寝転んだ。


・・・・・・通知はなし。

仕事中の母からも、あの人からも当然連絡は来ない。

未練たらたらみたいで、気持ち悪い。

ちゃんと、自分から縁を切ったのだから。自分が悪いのだからこんな女々しくなるな!


「・・・・・・なんで、みんな普通に家族以外の人を愛したりできるんだろう?」

気になって、ネットの世界に潜り込む。

心の深層では、どこか自分を満たしてくれる答えを探していたのだろう。

だからこそ、非常に裏切られたような気がした。


『若いうちに恋をしよう!大人になってから経験ナシは通用しない!

まともな恋愛をした人は恋を沢山しよう!』


『社会に出てからの出会いはなし!?遊ぶなら学生のうちに!』


『恋愛の失敗は若いうちに!若い頃の恋愛の失敗はコストがかからない!

傷つくなら若いうちに!』


『モテるようになるためにはレッスンあるのみ!

ブスとでもいいから付き合って経験してレベルアップしよう!』


『残念ながら・・・・・・学生時代にまともにモテたことがない人はロクな人生を送ることがないでしょう』


『恋愛も筋トレと同じ!?何度も繰り返して傷つきながら最高のパートナーを手に入れよう!』


『高学歴高収入!優しさや性格の良さを異性に求めるのは嘘!?

やっぱり性別問わず経歴を手に入れて好きなだけ・・・・・・』


「・・・・・・は?」

声が、漏れた。


え、恋愛ってこんなものなの?


人を愛することって、こんなものの為にあるというの?


「・・・・・・はは」

笑いが落ちる。

なるほど、合点がいった。

皆、愛したり愛されたいわけじゃない。

満たされたいんだ。

人に恋したり、愛したり愛されたりという感情は道具でしかないんだ。


「わけ・・・・・・わからない!」


なんでそんな簡単に人を愛することができるの!?


どうしてそんなに容易く愛してるって言えるの!?


何なの愛とか恋って!?


なんで恋や愛に失敗なんてあるの!?


意味が解らない!なんだよ若いうちの恋愛って!コストがかからないって!筋トレと同じって!

筋トレの方がきついに決まってるだろ!

人を愛することって苦痛を伴うものなの!?


そこまでして恋とか愛を重要視するのはきっと・・・・・・


「・・・・・・よく、ぼう」


生物の根底にある、愛。

皆、それに飢えているのだ。


ワタシだってそうだ。お母さん以外からも愛されたい。気にかけてほしいし大事にしてほしい。

ワタシも気に欠けるし大事にするもん。


――――無償の愛がほしいわけじゃないの。


――――ワタシだけを愛してなんていうつもりはないの。


だって。一緒に生きていくって支え合うことでしょ。利用しあうことじゃないでしょ。


そんな恋する心や愛する繋がりを利用するかのように、まるで道具のように扱う奴らが多くの人から恋慕を抱かれるのっておかしくないか?


「・・・・・・あ」


『一途はモテない!間違った恋愛弱者の価値観を壊して・・・・・・』


「・・・・・あ」


その一文が、壊した。

ワタシの中にある14年間の形成も、ワタシをワタシたらしめたものが完全に否定されたようだった。


ワタシが咲さんを想っている心は、あの子を頭の中で思い浮かべて、楽しく過ごしていた日々は、間違っていたというのか。


「もしかして、違和感を抱いてるワタシが・・・・・・おかしい?」


うつ伏せになり思い詰めていた顔が、段々冷たくなる。

濡れた枕に流れる嗚咽交じりの声。


今までの景色を俯瞰すれば、ワタシはおかしかった。

皆が皆楽しそうで、恋して愛して愛されて、結婚して浮気して、別の人の子ども産んで、裏切って傷ついて傷つけられて――――


それに嫌悪感を抱いていたワタシが、おかしかったのだ。


でも、ワタシはそんなことできない。

人を容易く傷つけたりなんて、できない。

恋や愛を裏切りたくない。


だけど、今の社会は。これが普通なんだもんね。


・・・・・・ワタシ、人に恋したり愛したりするの。

向いてないのかもしれない。


生物の根底にある愛。

それが空になってしまうのならば、それは死んでいるのと同じではないか。


「てんで・・・・・・ダメだ。ワタシ」


――――もう、いい。


急激に胸の中が冷えていく。

寂しさの波が押し寄せてくる。胸の奥底がズキズキと痛むし、頭はもう文字を受け付けない。



これからこの世界で・・・・・・生きていける自信がないよ





愛することとは他者を思いやるという行為によりもたらされる。

他者から進んで手を差し伸ばされることなど、よほどのことがない限り在りえない。

自ら進んで手に入れるしかない。愛されるためには踏み込むしかない。

それが人間社会の愛。生物たちの愛。

本能のままに他者を追いやって奪ってでも手に入れる愛。


・・・・・・ほんとうにそれって、愛されることなの?

ほんとうにみんなはパートナーのことを愛してる?

形だけの、表だってのものになってないの?

結果としていずれ生まれてくるであろう子どもに胸張って愛を教えられる?


愛ってこんなに難しいことなのに、どうしてみんな容易くできるのだろう?


飛月もおれも、考えすぎなのかな・・・・・・

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