第17話
学校では、相変わらず独りの事が多い。
だけど、行くのが楽しみな自分がいる。
学校だけではない。生きることそのものに対して言葉にし尽くしがたいポジティブな心境がワタシの心を埋め尽くしている。
「未来ちゃん、帰ろーぜ」
「うん。帰ろ」
迸る心の激流に身を任せぬよう、できる限りゆっくりと。いつも通りの口調で彼女に返答する。
一緒にいるだけで、いやそれどころか彼女の事を考えているだけで、心も頭も全てが埋め尽くされる。
苦痛もどす黒いものも何もかも耐えきれる。目の中に世の不条理が入り込もうとも、もうワタシには彼女がいる。
――――楽しい。
人生というのも、悪くない。
もう少しだけ、生きてみてもいいかもしれない。
・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
「飛月未来さん。残念ですが、完全な復帰は無理でしょう」
「――――え?」
12月下旬
町を凍てつく空気が包み込みながら、年末がやってきたその頃。
ワタシの身体は、限界を迎えてしまったようだ。
元々痛めていたが、2週間前からロクに走ることができなくなり、学校の授業中でも継続的に座っているのが困難になってしまった。
痛みは日に日に増していき、熱を帯びていき、段々と体調さえも悪化。
年末ということもあり、学校も休みになったのでその日の夕方、なんとか布団から起き上がり息を切らしながら病院で向かい診てもらったら・・・・・・
「――――腰椎、分離症です」
何を言われているのか、わからなかった。
小さなモニターに映るMRIの写真。つぶれた円盤状の間にある歪な四角い骨の画像。
白く形の整っていない階段のようなものの一つの角度を変え、ドアップされて、その骨に――――黒く、1本の線が入っていた。
「見えますか、この線が入った場所・・・・・・第4腰椎というのですが、他の場所とは違って線が入っているのが、わかりますか」
「・・・・・・はい」
「中高生など、身体が未発達な状態でのオーバートレーニングでなる方が多い症状です。
特に、飛月さんは両側にひびが入っていますし、かなりの進行具合です。完治には、コルセット込みで半年以上かかるかと」
「は・・・・・・半年、以上」
「一応手術等もできますが・・・・・・」
「凄く、費用が掛かりますよね?」
「ええ。コルセット自体も費用が掛かります。ですので、今後は当院に通院していただきながらリハビリを行い、完治を目指していきましょう」
「あ、あの!や、野球は・・・・・・どう、すれば」
「・・・・・・飛月未来さん。残念ですが――――」
扉を閉めた音が、耳に入ったところで、ワタシは現実へと戻ってくる。
ちゃんと御礼を言ったかどうかも覚えていない。頭が真っ白だ。
「みーちゃん!」
「・・・・・・お母さん。仕事どうしたの?」
「やらなきゃいけないことを終わらせてすぐに帰ってきた!ど、どうだったの、腰は・・・・・・?」
肩を借り、何とか歩けるようになる。
しばらく、口を利くことができなかった。お母さんは黙ってワタシを近くの椅子に座らせてくれた。
口が震える。何を言っていいかわからない。
先ほど同じ中学に通う子もいた。隙を見せるわけにはいかない。
それに、お母さんに必要以上に心配をかけさせるわけにもいかないし。
だから・・・・・・だからできる限り。
沈み澱んでいく心の波を隠し包むように、顔の力を緩め、笑顔に・・・・・・
「お母さん。あのね――――もう、野球できなさそうなんだ」
学生も労働者も。というよりも、生きている限り怪我というのはとてもキツイものです。
怪我をしてしまったら自分を責め過ぎず安静に。してしまった人がいたらできる限り優しくして、手を差し伸ばしてあげてください。きっとそれだけで救われる心があると私は信じています。
あまり変なこととか偏見を言ってしまうとかなり心労が溜まってしまいますのでね・・・・・・




