第16話
――――園田咲は生まれついて特殊な体質だった。
それは髪が何故か金色であること。
両親は黒髪茶髪だから‘’やばいこと‘’があったのかと少し騒ぎになったけど、遺伝検査で両親とは血がつながっていたから問題はおきなかったけどね。
それもあってか、小さいころからいろんな子にちやほやされると共によく髪について言われることもあった。
男子はよくアタシの所に来て、その度に女子から反感を買っての繰り返し。
――――小学4年生の頃あたり、つまり皆が思春期に入り始めてからそれは加速して、女子たちにバリカンで剃られそうになったり、ハサミで髪を切られそうになったりして、さ。
◇
「・・・・・・もしかして、その傷は」
「うん。抵抗した時にハサミの刃が首に刺さってガアーッと切れちゃって。
その時の傷がずっと残ってるんだ」
・・・・・・そう、だったのか。
だから咲さんはずっと髪を伸ばしているんだ。体育の時も邪魔そうにしながらなんで結ばないのだろうとは思っていたけれど、理由は――――
「学校側は隠蔽しようとしたけど失敗、示談になって賠償金をもらう予定だったけど、その子もその子の家族も『4年前の大災害』で亡くなってお咎めなし。親族も皆亡くなっちゃったみたいだからさ」
「あの、例の原因不明の大災害?
ワタシはまだ桜田町の外れに住んでいた時代だったから難を逃れたけど、そっちは凄かったって」
「うん。ワタシも家燃えちゃったしね。
・・・・・・んで、半年以上学校がなくて5年生になってからも、それは続いたの。
それからね、ママが気分転換に買ってくれたお気に入りの服を着て学校行ったら、髪を黒くしてやるって頭から墨汁をかけられて。
大好きだった洋服が汚されて・・・・・・家がなくなったり、仲が良かった子が死んじゃったりして我慢できなかったアタシ、泣いちゃって。
その時に――――墨汁をかけた子を引っ叩いた、あの子が現れたの」
そう言った彼女の顔は、なんだろうか。
悲哀?憧れ?なんかいろんなものが交じり合った感情の顔。
「クラスが一緒になったことがなかったから特に知っているわけじゃなかったけど、そこそこ学校内で有名な子でさ。大人しくて、どこか品があってって意味でね。
そんな虫も殺せなさそうな子が、同級生を引っ叩いたのだから黙ってた先生たちも唖然としちゃってさ。そこからその子の保護者達が学校に乗り込んできてって、色々あったもんだよ。
・・・・・・で、何が言いたいのかというとね。アタシも、本当はあの子みたいになりたいって思ったの。というか、思ってた」
「思ってたって・・・・・・過去形なの?」
「そう。どう頑張ってもあの子みたいに困ってる見ず知らずな子に手を差し伸べる勇気は手に入れられなかったから、アタシなりに考えて・・・・・・なんだろ。
――――いい奴だと思ったら手を差し伸べられることができるように、それでいて余計な騒動に巻き込まれないぐらいの地位も獲得しておいてって・・・・・・だからね、ごめん、未来ちゃん」
「なんで謝るの?」
「余計な事を身勝手にしちゃったかもしれないと思って。貴方を教室から連れ出したのも、アタシの我がままみたいなものだったからさ」
「――――ああ」
何故この子が周りの奴らと何か違うと思っていたのか、多分腑に落ちた。
園田咲は――――苦節を味わいながらも前を向いて生きている子なんだ。
いろんな辛いことがあっても、考えて自分を変えて社会に適応してきた子、なんだ。
・・・・・・いいな。
ワタシのような、人を羨ましがって恨むことを繰り返してきた奴なんかより――――カッコいい。
今までのドロドロした羨ましさじゃない。もっと心が躍るような、わくわくするようなそんな羨ましさ。
ワタシにはない、確固たる強さを持つこの子に――――ワタシは。
「――――咲さん」
「なぁに?」
「改めて、ありがとう――――ワタシを、連れ出してくれて」
そんなこの子に・・・・・・ワタシは――――
ようやく肩の痛みが抜けてきて今朝から腕立て伏せが再開できました!
身体を動かすってやっぱり良いね!




