第15話
文字数が3000文字を超えています!長くなって申し訳ないです・・・・・・
――――それからというもの。
なぜか。本当に何故だろうか。
ワタシは、園田咲と行動を共にすることが多くなった。
「未来ちゃん、一緒に帰らん?」
「う、うん。帰ろうか」
登校時は家の方向が違うので別々だが、下校時は少し寄り道してから共に帰路につき、
『明日の学校終わったら空いてる?一緒に勉強しない?今物理ヤバくてさ』
『わかった。でも遅くなりすぎると練習できないから』
『りょーかい!助かるわ~、一人だとやる気しないからさ』
小さく振動を起こすスマホを見ると、かなりの頻度であの子から連絡が来ている。
母や野球チーム関連の事柄以外の連絡が来たことがないのに、いつの間にか彼女の名前がメールの上側にあることが多くなってしまった。
「・・・・・・なんなんだよ、あの子」
顔が引きつっているのだろう。今まで感じたことのない方向に口角が上がっている。
きっと、勘違いだ。
ワタシはこんなチョロい奴ではないはずだ。
どうせ、ワタシをもっと知ったら失望するに違いない。
どうせ、すぐにこんなことも終わる。
――――いや、それよりも。わからないことがある。
何故あの子はワタシを気にかけてくれたのだろうか。
・・・・・・後から友達代とか言ってせびられたらどうしたものか。
あれから――――手を引っ張られて学校を抜け出して早2週間が経とうとしている。
気になってはいたが、今まで母以外とロクな会話をしたことがないので聞き方がいまいちしっくりこない。
どうやって聞き出したものかと考えながら枕に顔を押しつけ、足をバタバタさせながら頭を抱えるのだった。
「いや~マジで助かるよ。期末近いじゃん?そろそろやっておかないとあのエロガッパにまた変な条件つきだされそうでさ」
「・・・・・・物理の奴はあまり良い評判を聞かない。そういうことだったんだ」
「物理の奴て、言い方おもしろ。アタシも今日からそう言おうかな?」
次の日、彼女に誘われてやってきたのは――――家だった。
初めて、記憶にある限りは初めて人の家に入った。
それほど、ワタシは他の人たちと縁がなかったのだ。
「家に誰もいないし、此処なら多少うるさくしてもいいかなって」
――――玄関を超えすぐの階段を上がる。マンションとは違う家の構造に少しびっくり。
・・・・・・部屋は予想外にも質素な感じであった。
彼女が普段使っているであろう机と椅子。無機質な白いベッドが壁沿いに、長方形のテーブルが部屋の真ん中に、いくつかのぬいぐるみが部屋のあらゆる場所に点々と・・・・・・
・・・・・・勉強するとは言ってたけどいつもみたいにショッピングモールのフードコートじゃないのかよ!
こんなことなら登校前に菓子折りでも買っておけばよかった!
なんて思いもしたが、できる限り慣れてない感を出さないようになんとか振る舞う。
隙を作れば、人はいくらでもそれを利用してくる。絶対に、油断はしない。
「未来ちゃんてさ、言葉固くない?まぁそれも個性ってやつなのかな?」
「どうなんだろ?あまり人と話さないからわからない」
「アタシはカッコイイと思うけどね。その孤高な感じ。友達は要らない、みたいなやつ?」
――――欲しくても手に入らないんだよ!別に要らないわけじゃない!
・・・・・・しかし、大層楽しそうに話すものだ。
――――不思議な、人。
なんだろうか、今まで出会ったことがないタイプ。
ワタシを独りの世界から脱却させた力強さ。天真爛漫な笑顔、綺麗な目、肝の強さ。
前はただのうるさいギャルみたいな子だと思ってたけど、何か、何かがそれとは違う。
この違和感は、なんだ?
・・・・・・知りたい。
ワタシに気をかけてくれること。それと、この子のことも。
「ねぇ、咲さん」
「ん、どったの?」
テキストから目を離し、隣に座るワタシを見つめてくる。
琥珀色に似た赤茶色の大きな瞳に吸い込まれそうになりながら、息を一つ吐き出し、
「・・・・・・どうして、ワタシを連れ出してくれたの?」
「つれ、だした?なんのこと?」
――――何を言っているのだワタシは!?
なんでそんなロマンチックで文学的な言い方をしているの!?
は、早く訂正を――――!
「え、えっと。どうしてあの日に学校から連れ出してくれたのかなと」
「あ、ああ。あの事、ね。なんだろう?」
うーんうーん、と右人差し指を曲げ唇にくっつけながら唸る。
考えている姿も海外の人形のような儚さの中に見える美が垣間見える。
って、何を考えているんだワタシは!?
「どしたの未来ちゃん?なんか挙動おかしくない?」
「・・・・・・気のせい」
そう、とまた思考を再開したのか目を瞑り黙り込む咲さん。
そして、「まぁいいか」と小さく呟き、ワタシの方を見る。
「上手く言語化できるかどうかわからないけど・・・・・・有り体に言うと興味なのかな?」
「きょ、きょーみ・・・・・・?」
意外な返答にオウム返しな上に棒読みという酷い言葉が口から洩れだす。
そんなワタシの言葉に咲さんは真面目そうな顔をしてうん、と頷き、
「元々ひとりでいることが多い未来ちゃんってどんな人なんだろうって気になってはいたんだ。
それから前に本奪ったアイツから取り上げて返したことがあったじゃん、あれがきっかけで――――カッコいいと思った」
「かっこ、いい?」
今まで生きてきて言われたことがない言葉に頭の中が混乱する?
本を取り上げたぐらいでどこがカッコいいのだろうか。
「もしかしてしっくり来てない感じ?だって誰もが黙ったり笑ったりしている中で動ける人って凄いじゃん。
アタシは散々あんなの見てきたし、渦中に入ると面倒だからってみてただけだったけど、未来ちゃんは動いた」
――――確かにその通りだ。
行動を起こした後に後悔したものだが、普通はあんな面倒事の嵐に自ら突っ込んでいくバカはいないだろう。
よく言う苛めを見逃さない的な正義を振りかざそう運動が成立しないのも、自分がまきこまれたくないからだろうし。
つくづく、間抜けな事をしたものだ。そのせいで余計な出費が増えたし。
「んで、本を奪った奴。まぁあみなんだけどさ、結構やばい奴が身内にいるらしいんよ。
未来ちゃんならもしかしたら一人でもどうにかなるかもと思ったけど、ストレスはたまるだろうし、万が一なことがあったら――――もったいないと思った」
「もったいない?どういうこと?」
「え~、まぁ・・・・・・こんないい女を見捨てるのはもっていないって」
「い、いい女!?」
ど、どういうこと!?
それは性格的に、それとも身体的に!?
い、いや、この子はどれだけワタシを混乱させるのだ。
き、きっとそんな意味ではないけれどあれもしかして家に親がいないとか予告なしに家に連れてこさせるとかまさかそういう意味的なあれではないよね大丈夫だよね!?
「ぷすす、顔赤いよ?」
「そ、それは・・・・・・うん、まぁ褒めてくれたみたいで。からかったわけじゃないでしょ?」
もっちろん、と笑いながらも力強く何度も頷く。
そして・・・・・・その顔が、ほんのりと雲ったかのように見え始め、
「やっぱ面白いね、未来ちゃん。そういうカッコいい子――――うらやましいと思う」
「――――」
言葉が、出てこない。
カッコいいとかいい女とか、それ以上に。
自分が、羨ましいと言われることが。
それが、周囲のあこがれのような彼女に言われることが信じられない。頭がカンカンと打ちつけられるような感覚と少々の眩暈が襲い掛かる。
「・・・・・・なんだろう、ね。さっきはさ、カッコいいとかいい女とか本音をいったけど」
「あれ本音だったんだ」
「本音だよ」
咲さんはおもむろに波打つ薄金の後ろ髪を撫で始める。その姿はいつものような天真爛漫さが抜け落ち、視線は此処になく、どこか想いを馳せているような。
「・・・・・・さっきはどっかの誰かみたいにキザな言い方してみたけど。
その実、というかあまり自覚はないししたくないけれど――――もしかしたら、アタシは身勝手に、昔の自分とアナタを重ねて助けたかったのかも」
どっかの誰かというのがよくわからなかったが、そんな疑問は一瞬にして吹き飛んだ。
目の前の少女は雑に撫でていた後ろ髪を掴み上げ、「見て」と言って左隣にいるワタシに、
――――うなじを見せてきた。
透き通るような白い肌に・・・・・・似つかわしくない一本の傷。
ちょうど刃物が通った後のようなそれが、痛々しく綺麗な首に刻まれていたのだ。
「こ、これは?」
「・・・・・・ちょっと昔話に付き合ってもらえる?」
「うん、聞くよ――――」
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