第12話
「・・・・・・行きたく、ない」
――――あれから1週間。
事態は予想通り悪化する一方である。
本を奪い返した次の日は瞬間接着剤らしきものが椅子に撒かれていた。
白く点々と椅子に垂れたそれを、男子共は品がない表現をしてさらに教室を荒らし、何故かワタシが教師に呼ばれることとなった。
その次の日は、上履きが燃やされていた。ところどころが焦げていて靴箱から出した時に燃えカスの臭いが鼻腔に入り込んできたのだ。
次の日はなく、休日が明けると机が丸ごと消えていた。
中にあった教科書の行方をワタシは知らない。
ここから2日間、特に異変はなかった。
しかしこれに対する教師陣の対応がこれまた酷い。
何回か相談をしたが、「忙しい」の一言で終わらせる担任だとか、社会での勉強だとか、教科書を失くしたなら買ってきなさいだとか、挙句の果てに虐められるおまえが悪いだとか。
本当にワタシより年上なのかと思うぐらい、稚拙な対応。
机の事に関しては、「じゃあ空き教室から別のものを持ってこないとな」だった。
――――少し期待をしたワタシが馬鹿だったのだろうか。
教室の有象無象たちの他愛ない行動よりも、教師どもの救いようがなく、生徒の一人を助ける心意気もないその在り方に、疲れてしまった。
ワタシには何もしないくせに、成績のいい子や養子の優れた子とはとことん仲良く話しているのだ。いくら何でも贔屓が露骨すぎる。
――――いよいよ、学校に行く気が失せ始めた。
お母さんが頑張っているから、それに夢へ近づくために野球を休むわけにもいかないから学校に行っていたが、これ以上行ったら、ますます死にたくなるだけだ。
「お母さん。今日学校休みたい」
「あら、熱でもあるの?」
「・・・・・・かもしれん」
「一応計ろうか」
母が引き出しから体温計を出し、受け取って脇に差す。
体温は平常そのもの。
我ながら、無駄な免疫の強さにはあきれるものだ。
「・・・・・・どうする、学校?」
お母さんは今日も夜遅くまで仕事だ。
嫌な思いをしながら、大変な思いをしながらワタシの生活のために仕事をしてくれているのだ。
ワタシが、失望如きで休んでいては、いけないのではないか?
「・・・・・・行く、よ。頑張って行ってくる。受験する時の内申にも関わってくるし」
「わかった。外に出たら何か良い事があるかもしれないから。
母さん、今日はできるだけ早く帰ってこれるように頑張るからさ、みーちゃんも頑張って」
「・・・・・・うん」
教科書が消失した件は、母には言っていない。きっと、また心労をかけてしまうことだろうから。
・・・・・・行くと決めたら、行くしかない。
そろそろ、見せかけだけの道徳の教師から教科書の件で怒られることだろう。
学校から帰ってきたら、自主練前に本屋へ行って買おう。
家の扉を閉め、鍵がかかっているかを何度か確認する。
昨今は治安が悪くなり、空き巣や強盗、強盗殺人も増え続けているらしい。
・・・・・・殺された人や傷ついた人たちは、何か悪い事をしたのだろうか。
ワタシもだ。何か、悪い事をしたのだろうか。
生き続ける限り、延々と搾取されて物も自信も奪われていくだけなのだろうか。
「――――理不尽、だらけだ」
筋肉痛が酷い・・・・・・
動きたいのに身体が動いてくれない・・・・・・




