3-2
ライオンみたいな平気で横取りするような泥棒がいないことが理想だ。
とはいっても目の前にチャンスがあれば全力で狩りをすることになる。
1回のチャンスも取り逃がしたくない。
命に関わることだ。
見つけた。
トムソンガゼルだ。
もういくしかない。
スピードなら負けない。
それでもできる限り接近して、そこから一気にいく。
狙ったのはやはり子供だ。
残念ながら彼女はそれほど強くない。
ライオンと1対1でもかなり危ない。
その代わりスピードだけはある。
今回はやっと食事にありつけた。
最も柔らかい腹に顔を突っ込んでブヨブヨした内臓をむさぶり喰う。
長いものは大腸だろう。
食える時に食えるだけ腹におさめるのが鉄則だ。
真夜中だろうと大雨の日だってお腹は空く。
黙っていても時間になるとごはんが出てくればどんなにいいだろうかと思う。
夢のような話だけど。
怪我をした時とかでもそうだ。
誰も治してくれない。
自分でなんとかしなければならない。
なんとかできなければ死ぬだけだ。
野生でいるってことはそういうことだ。
でも、どうしてこんなことを考えているのか?
時々こんなことがある。
少しするとそんなことも考えられなくなってくる。
不思議だ。




