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奇妙なものを見た。
初めて目にしたものだ。
この地域で最も大きな生きものは象だ。
それに匹敵するほど大きな生きものだ。
走ってるんだが音がうるさい。
普通なら気づかれないようにひっそりと走るところだ。
奇妙なものは急に動きを止めた。
驚いたことにその奇妙なものから降りてきたものがいる。
なんだ、後ろ足だけで立っている。
そんな生きものが複数いる。
周りにいる動物たちには驚いてる様子はない。
みんなのんびりしてる。
警戒してるのは彼女だけか?
彼女は姿勢を低くして身を隠している。
謎の生きものたちの一挙手一投足を静かに観察している。
周りにいる動物に近づくこともなくただ黙って見ているだけ。
いったい何者で何をしてるんだろ?
そういえは、時々だけど空がやかましい時がある。
うるさい鳴き声を上げながら大きな鳥が飛んでいる。
あれもただ通りすぎていくだけ。
地上にいる動物たちには目もくれない。
不思議だ。
あの毛がない猿みたいなのは何をやってるんだろ?
へんてこな物を取り出して両手で持っている。
危険だと判断した彼女はその場からそっと離れていった。
「なぁ、マイケル。
うまい具合に撮影できると思うかい?」
「さぁ•••でも、そうあって欲しいですね」
ランドクルーザーから降りてきた3人はアメリカから来ている。
目的は野生動物の撮影だ。
他に車を運転しているのは現地のククメという案内人だ。
車を所持していて案内もできるということで雇っている。
大学の研究者はキースという中年男性。
その助手のマイケル。
そしてカメラマンのジャミロ。
撮影費用は大学というよりもテレビ局から出ている。
野生動物のドキュメンタリー番組を作るためだ。
キースとしてはテレビ局の要望に応えながらも学術調査もできるとあって大いにのり気になっていた。
彼女は距離を取りながら用心深く盗み見ている。
しばらく見ていたがあの猿たちは何をするでもなくただそこにジッとしてるだけ。
これ以上警戒する必要もないし見てるのも飽きた。
さらにこの場から離れようとした時だ。
背中あたりにチクッとした痛みがあった。
危険だと悟った彼女は反射的に駆けた。
できるだけ安全な場所へ逃げなければならない。
得体の知れない生きものには関わらないほうがよい。
怪我でもしたら自分では治せないのだから。
それが独りで生きていくための鉄則だ。




