体に優しいものが!食べたいんじゃ!!
「えぇ…一旦落ち着こう…わしゃよ…
ここは亜紀君が話していた異世界という所で…
わしゃはそこの悪者…魔王になっていた…なぜじゃ!?」
本当にわからない。わしゃが何をしたというのだ
仏様でもわしゃは怒らせてしもうたのか?
「う~む…しのこの言っても何も変わらぬか…」
そういえば、亜紀君がこの世界には魔法?というものがあると言っていたな。
けど…魔法ってどうやって使うんじゃ?
というか魔法をわしゃは使えるのか?
せめて魔法が使えるのかわかればいいのになぁ…
ピュン 「ほぇ?」
腕を組んで考えていると変な音が聞こえる。
前を向けば、文字の書かれたテレビの画面が写されておる。
「ひょぇぇ…なんかでたぁ…えぇなになに」
画面に書かれた文字を読んでみる。
「火炎魔法、水魔法、風魔法…あぁ!色々ありすぎてわからん!
これがわしゃの使える魔法なのか…?」
画面にはびっしりと文字が書かれていて、老眼でもないのに読みたくなくなる。
「うむ…つまりわしゃは魔法が使えるということか…?どうやって?」
魔法は妖術と似ていると亜紀君と話している時、思ったが
わしゃはどちらも使ったことがないからのう…
そうやぁ…昔孫が「必殺技は言わないといけないの!それがお決まり!」
と言っておったのう…
「えぇっと…火炎魔法?」
なんとなく画面の一番最初に書かれていた文字を
腕を前に出して読んでみた。
「まぁこんなんでできるはずも「ボボォウウ!!」うわぁぁぁ!なんじゃ!!」
急に真っ赤な視界があたり一面に広がる。
「わぁぁ!火が!火事になっておる!!」
凄まじい勢いの炎が広がっていく。
「えっとえっと…水ー!!!」
普通はその場から逃げるのが正解な気がするが
とっさのことに叫んでしまう。
すると叫んだ瞬間、ものすごい量の水が上から降ってくる。
さっきの熱いところとは真逆の水浸しの所になってしまった。
「これはぁー…使い方に問題があるのぅ…」
どちらも使い方によっては危ないためどうしたもんか…
まぁそれは後で考えるとして、
「この水浸しの部屋をどうしたもんかのう」
高級そうな部屋は一瞬のうちにして水浸し。なんなら自分も濡れている。
「たしかにわしゃは水も滴るいい男として有名じゃったが…」
一気にいろんなことが起こりすぎて、遠い目をしてしまう。
そんな現実から目をそらしていると後ろから気配がした。
「魔王様、お夕食のご用意がっ…これは…?」
「わぁぁ!メロア君、あぁえっとこれはだな…」
部屋に入ってきたメロア君が部屋の状況を見て困惑しておる!
なんとかして言い逃れなければ…
「なるほど。魔法の研究をしていたのですね」
「ふぇ?あぁ!そうだとも!!」
メロア君が勝手に納得してくれたためそれに便乗して誤魔化す。
「やはりそうでしたか。部屋は元に戻しておきますので。さぁ、夕食に向かいましょう」
うぐっ、メロア君の何の疑いのない純粋無垢な目が辛い。
あとで謝っておこう…
そんなことを考えているとまたメロア君は何かを唱えて
わしゃたちの居場所を変える。
「おぉう、次は広い廊下じゃのう」
教会の中のような作りをした場所である。
「さぁ行きましょう魔王様。」
「あっ、あぁ!そうだな」
メロア君にいわれるがまま歩いていく。
わしゃはどうなるのじゃろうか…
まぁまだここがよくわからぬし、あまり考えすぎないようにしよう。
何とかなると考えよう。
そう思い、重たい足を動かし前に進む。
数日後
「もう限界じゃあー!!」
魔界にまたもじいさんの叫び声が響き渡る。
「っ!?どうしましたか魔王様?」
紅茶を注いでくれていたメロア君の動きが止まる。
「どうしたもこうしたもないぞ!!」
今、わしゃは専用部屋のソファアにすわりながら愚痴を吐いている。
「味が濃すぎるのじゃ!!!」
「えっ?」
この世界に来てから数日、過ごしてみてわかったことが二つある。
一つは、この世界は魔界と人間界に分かれているということ。
人間界は昔の勇者さん?が最後の力を振り絞って守った土地
と言われていて、わしゃたちには手が出せないらしい
正直そんなことどうでもよい。
問題は二つ目、それはすべての味が濃すぎる!
食事の八割は肉、あとの二割は副菜?じゃがよくわからない食材ばかり使われた料理
作った方には申し訳ないが…言わせえてもらう!味が!本当に濃い!!
肉はとにかくしょっぱい、塩味が強すぎる。
砂糖と間違えて塩を一気に入れてしもうたか?ってくらいに!!
たとえるならば、薄い豚バラ肉一枚に対し、塩をも見込んで
それを焼き、さらに塩と醤油をどばっと味付けしたような…
それくらいしょっぱいのだ!
塩味が強い以外にも、脂が重かったり、酸味が強かったり…
とにかく味の強さが100
脂にいたってはどれもてかてかしすぎて金属光沢
放ってる?ってくらいにすごい…
胃もたれ直行列車のものばかりじゃ!
肉以外にも、汁物や副菜があるが…
スープなどがでるがあれはスープではない!
具材は、不格好に入れて、一気に火を通しただけになっとる!
固いものもあれば柔らかすぎるものもありとにかく食べにくい
汁にいたっては、水を使わず調味料だけでやったか…?
と言いたくなるほどの味。
塩味と辛味がまじりあい、喉が焼けるような感覚がする。
副菜も適当に切った野菜がそのまま出てくる。
びっくりした時は、じゃがいも?と人参?のようなものが
そのまま単体で出てきたことがあった。
あれは歯が欠けるのではないかと思った…
栄養バランスのかけらもない!
おまけに見栄えも悪く、見ただけで胃もたれを起こしそうじゃ
日本人にとってあの料理は辛すぎる。一日くらいなら
大丈夫じゃが
あれが毎日となると無理になってくる…
「なるほど…つまり料理が合わないということでしょうか?
でしたら料理人に伝えて変えてきますが」
「う~む…多分じゃがそういうことではないのだと思う…」
別にこの世界の飲み物食い物が苦手なわけではない
それこそ、今メロア君が淹れてくれた紅茶は
とても美味しい。
きっと今求めているのは…よし…!
「決めた!!わしゃは優しい味を作るぞ!!!」
じいさん、体に優しい料理を作る。