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NO舞台  作者: 金子文誉
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管理事務所で

 今日も彼は一人で走っている。陸上競技場の管理事務所内から竹井美幸は部活動でもないのに、休みの日になってはやって来て、一人走る青年に感心していた。ほどなくして、首にタオルをして、空になったペットボトルをもって、バッグを担いだ本間泰浩が管理事務所のドアを開けた。その出入り口にある個人利用表の終了時間に記入をした。彼はティシャツの袖で顎の汗をぬぐう仕草をしてから

「ありがとうございました」

 少し息上がったような口調で挨拶をした。冷房の効いた管理事務所を恨みがましく思う様子もない。

「お疲れ。熱中症に気を付けて」

 竹井の一言に、

「大丈夫です」

 と返事をして、そそくさと出て行った。竹井はおもむろに席から立って利用表を一瞥した。本間泰浩青年の開始時間と終了時間を確認する。それだけだった、他意はない。彼が一人で練習をしたそのわずか二時間足らずの時間、炎天下の中走っているのに、自分は冷房が効いた管理事務所で涼んでいられることに気が引けたというのもいささかなくもなかった。彼が部活動に参加しているわけでもなく、走る好奇心のみで一人練習をしているというのは、来場のたびごとに利用表記入時のわずかな会話の積み重ねで知れるようになった。十日ほどのちにある秋の記録会に参加すると言う。それが今年唯一彼が参加するレースであり、高校最後の大会であるとも。竹井は袖をまくってきているスタッフジャンパーが少し重いような気がしてならなかった。


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