大公令息アリアス・ユノアルド①
その週の日曜日。
イグニスに誘われてユノアルド邸でディナーをいただく予定のため、昼過ぎから準備に取り掛かる。
高位貴族家への訪問ではあるがごく私的な訪問のため、ドレスはシンプルだが品のあるもの、アクセサリーも華美すぎないものをチョイスした。
今頃の時間、王宮ではお茶会の真っ最中だろう。
今回の茶会の主催は正妃様だったから、恐らく王太子スタンリーの婚約者探しも兼ねて開催されたのだと思われる。
お茶会の後半にはスタンリーも集まった令嬢達の前に顔を出すはずだ。
あまりにも整いすぎて現実離れしたスタンリーの姿を見て、令嬢達が悲鳴を上げ顔を上気させる姿がありありと目に浮かぶ。
ーーースタンリー。…スタン。
スタンリーは良い男だ。
容姿だけでなく能力も人柄も申し分ない。
誰にでも優しいが、女性にだらしないということは全くない。
いつでもジュリアに一途なのだ。
スタンリーが王族でなければ、ジュリアも求婚に二つ返事でOKしただろう。
せめて王太子でなければ…。
思いを巡らせているうちに、侍女達の手によりメイクが施され、髪が結い上げられていた。
出かけるために部屋を出て玄関前の大階段を下っていると、ちょうど帰宅した兄・ケネスが大階段を上がってくるところだった。
「あらお兄様、おかえりなさい。今日は早かったのね。」
「王妃様主催の王宮の茶会があったから陛下が早く仕事を切り上げられたんだよ。そういえば、ジュリアは茶会に行かなかったのかい?」
「ええ。先約があったのでお断りしました。」
「先約か、それはまた…。それで、着飾ってどちらにお出かけで?」
「学院で親しくさせていただいてる、ユノアルド様の邸にお呼ばれしたのよ。」
「ユノアルド…。大公国か。確か次男殿とジュリアが同級生だったかな?」
「そうです、イグニス・ユノアルド様。今日はイグニスのお兄様もいらっしゃるようなので、ご挨拶してまいります。」
「そうか。気をつけて行っておいで。」
ジュリアが侯爵邸前に準備された馬車に乗り込むのを見届けると、ケネスは小声で呟く。
「気の毒に。…スタンリー。」
馬車に揺られること数十分、ユノアルド邸に到着する。
馬車から降りると、ユノアルド邸の執事が待ち構えている。
「ようこそいらっしゃいました、クラウンベルツ様。
ご案内させていただきます。」
「ありがとう。」
執事のあとについて行き広々としたダイニングに通されると、長いダイニングテーブルの奥側に2人着席しているのが見える。
「ジュリア!よく来たね。さあ、こちらへ!」
ジュリアを見つけるとイグニスが嬉しそうに席を立ち、ジュリアの前まで歩いて来ると胸の前に左手を差し出した。
「イグニス。ご招待ありがとう。」
そう言うと、ジュリアは差し出されたイグニスの手の上に右手を重ねる。
イグニスはそのまま席までジュリアをエスコートすると、正面に座る人物にジュリアを紹介する。
「兄さん。こちらが僕の親友のジュリアだよ。」
「ジュリア・クラウンベルツです。本日はご招待ありがとうございます。」
ジュリアが優雅なカテーシーで挨拶をすると、目の前の人物はふっ、と頰を緩める。
「イグニスの兄、アリアスだ。アリアス・ユノアルド。以後お見知り置きを。」
「兄さんは学院の3学年に在籍してるよ。僕らの一つ上だから、王太子殿下と同じ学年だね。」
イスを引いてジュリアを座らせながら、イグニスが説明する。







