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第一話
また今日もか。そう思いながら投げ込まれた掃除道具を掻き分けて個室から出る。体の節々が痛い。投げ込まれた物の中に何か重い物があったようだ。頬と肩が少し切れて血が滲んでいる。僕はずぶ濡れのまま便器の中へ押し込まれた鞄を拾いその場を去った。
いつもの道を通り、廃れたシャッター街から一本奥の道へ入るとお気に入りの廃ビルがある。毎日のように足を運んでいる、6階建てのそのビルの屋上へとまた今日も向かう。そう、今日こそはって思いながら。
屋上へ上がり、鞄を放り投げワイシャツの裾をズボンからだし上から三つ目までボタンを開けた。濡れた制服に風が当たって冷えていくのを感じる。このビルの屋上から夕陽を眺める。汚い町のシルエットに夕陽が落ちていくのはなんとも言えない光景だった。とても好きな景色だった。だけど今はそれすらも何も感じなくなってしまった。