プロローグ
2012年 11月15日 東京 羽田
12時間のフライトは流石に堪える。私は大きく伸びをした後、売店で買ったコーヒーを飲みながらターミナルで人を待つ事にした。全く歳をとったものだ。コーヒーを片手にぼんやりと人混みを眺めていると馬鹿でかい声が聞こえてくる。
「あれ??嘘でしょ〜ムリムリムリムリ!私まだ死にたくないんだけど」
「おい!聞こえるだろ馬鹿、俺だって思うよ!頭も白いし顔もやつれて目も死んでいる。でも人を見た目で判断するもんじゃねぇべよ」
あの騒がしい連中が、今回のパートナーかと思うと少し気分が落ち込んだ。何かの間違いであってくれと思いながらも近づいてくる二つの足音に覚悟を決める事にした。
「えくすきゅーずみぃー、はろー?」
声のする方へ顔を向けるとそこには、30代前半の男と若い女が立っていた。
「おっさん、きゃんすぴーく何語?」
女が続けてそう言いながら私の顔を覗き込んでくる。嗚呼こういうタイプは苦手だ。
「日本語で問題ありません。あなたが警視庁の?」
そう返すと男の方が軽くお辞儀をした後バッジを出した。
「どうも、特殊犯罪捜査本部の栗本と申します。そんでこっちが、、、」
「元、吉原No. 1泡姫のアケミでぇーす!ヨロしくね!」
私は言葉に詰まった。
「てか、おじさん大丈夫?前の人は結構それっぽい感じだったから、おじさん見てると拍子抜けって言うか〜不安?」
「こら、お前失礼やって!すんませんね、長旅でお疲れでしょうし取り敢えず本部で茶でもしばきなら話しましょ」
異様な空気の中彼らが用意した車は乗り込み空港を出る事にした。
およそ30年振りにこの地へまた帰ってくることになるとは。
見覚えのある懐かしい街並みを眺めていたかったが瞼が徐々に重くなってきた。長旅の疲れからか、車が走り出すとすぐに私は眠りに落ちた。
「あーあ、寝ちゃったよ。このおっさん、マジで大丈夫なの?すぐ死んじゃわない?」
「その時は、次な奴がくるだろーよ」