95.北の大きな木の所に転移
大司教寝室で最終確認をする。
「じゃあ、まず北の大きな木の所に転移してから住居に行く。アーリエルさんの具合をみて、大神殿に来てからお話し合い。大神殿に連れてくるのはアーリエルさん、ルゥさんと捕虜二人の計四人。で良いかな?」
「あぁ、その行程で大丈夫だ。ユキチ達には通達してあるのだろう?」
『うん、『聖樹』のことも四人に伝えたって』
準備万端だね!
「大神殿には私と朱雀がお供します」
聖獣達は同伴と待機に別れて行動。大司教寝室に常設した転移門の枠の前に私とガンダロフが立つと、人型になった麒麟と朱雀が控える。
「ガンダロフ。背中から抱き締めて」
「う、うむ」
本当はこんなに密着しなくても良いのだけど、気持ちの入りようが違うからね。そして後ろでは青龍、白虎、玄武とマーリオ君とレアンがお見送り。ガンダロフが居残り組をチラッと見てから私に声を掛ける。
「ロト、門開通、よろしく頼む」
「うん、任せて」
私は壁に手をついて、目を閉じて意識を飛ばす。
集中!
直ぐに北の大きな木の根元の景色が見えた。…最後に見た時よりまた大きくなったねぇ。目をゆっくりと開けて襖を勢い良く開くように両手を外側へ開くと、目の前に北の大きな木が聳え立つ風景が拡がった。
「行ってきます!」
「行ってくる」
「「「「「行ってらっしゃいませ、お気を付けて」」」」」
ガンダロフと手を繋ぎ直して門を潜った。
「主、ますたー、剣先輩、お待ちしておりました」
こちらはユキチがお出迎え。
「お待たせ、ユキチ」
「お疲れ。いろいろと苦労掛けているな」
『細々やってもらって助かったよ』
労いの言葉を聞くとユキチは一瞬、ん、と声を詰まらせて
「勿体ないお言葉でございます」
と深々とお辞儀をした。
ユキチは昼食のお礼を述べると麒麟とその時の揚げ物パーティーについて意見交換を始めた。二人とも熱が籠もっている。北の地、しかも標高もそれなりに高いのに見渡す限りの草木が青々と茂って爽やかな風が吹き渡って
「ここは活気に満ちているね」
もうすぐ訪れる春を謳歌しようと全てのものが期待に満ちてて、俺ぁ、ワクワクすっぞ!って気配が其処彼処から感じる。
「大きな木もさらに大きくなったな」
ガンダロフが一廻り大きくなった木を仰ぎ見ると、木陰で寛いでいたらしい馬さん達がパッパカと走ってきた。
『アスタロト、お帰り~』
『お帰り~』
フンフンと鼻息も荒く歓迎の意を表す三頭に
「ただいま!って言いたいところだけどまたすぐ行かなきゃなんだ」
とジルの鼻先を撫でる。
「三頭共元気そうで良かった」
ガンダロフが笑顔を向けるとグラナが
『草も水もとてもおいしい。ありがとう』
と言うとリパスが嬉しそうにヒンッと嘶いて同意した。
また来るね、と馬さん達に別れを告げて、いざ、アーリエルさんとルゥさんの元へ!ユキチの報告によると、アーリエルさんは『聖樹』の崩壊を告げられた時、顔色を無くして崩れ落ちてしまったのだけど、完全に消滅した訳ではなく休眠状態であることがわかると一応は落ち着いたという。
「大神殿に戻りたい素振りはあったか?」
ガンダロフの質問にユキチは
「それは迷っておいでで、というよりは、どうしたら良いかわからない様子にお見受けします」
と答える。
「…それって、今までずっとラクーシルの言う通りにしていたから自分では判断できない、とか?」
私がぽそっと呟くとガンダロフが頷く。
「おそらくラクーシルの前はルゥさんの言う通りだっただろうからな」
所謂傀儡というものだ、とガンダロフは続けた。……思案顔で私を見るけどなんだろう?私が首を傾げると彼は
「っ!あぁ、いや、ロトは、傀儡にはならないなと思って」
と口を手で覆って顔を逸らした。おぉぅ、真っ赤になった耳朶と首筋が無意識に私を誘ってる?先程から香っていた甘い花の香りに爽やかな柑橘系の酸味が加わって、はぁぁ、早く用事済ませてガンダロフを味わいたい。
住居の玄関ではメイドさん達が
「「「お待ちしておりました、主、ますたー」」」
と恭しくお辞儀をしてお出迎え。
「ウメコ、イチヨウ、シキブ、美味しいものを作ってくれてありがとう!」
「あぁ、ケチャップにソース、それに柔らかいパンは初めて食べたが凄く美味かった。ありがとう」
私とガンダロフが開口一番にお礼を述べると
「喜んでいただきなによりでございます。先程は私達にもその御業を奮っていただき、ありがとうございました」
と三人共頬を赤らめた。
「御業って大袈裟な。でもお互い美味しいものを作っていこうね!」
「「「はいっ!」」」
うん、良いお返事!




