9.おコ~ロ~リ~よ~
「呪いって、あの魔法陣の?」
呪い。確かにあの魔法陣は何かに対して絶対服従を、隷属を強要するという気持ち悪くも強い意志を感じた。ガンダロフはあんなモノに縛られようとしてたってこと?
「君を呼び戻すのに必死で周りのことは余り見てはいないのだが、確かに呪いが絡み付いて俺の中に入り込もうとしていた。だが、剣のおかげで払うことが出来た」
ガンダロフは剣の柄を擦って
「ありがとう」
と言った。剣ちゃん、ぽわぽわと光って嬉しそう。
「私からもありがとう、剣ちゃん。ガンダロフのこと守ってくれて」
『どういたしまして~』
「それにしても人を呪わば穴二つ、か。ガンダロフは呪いを返しただけだから、気に病むことはないよ。返されたくなければ初めから呪わなきゃ良いんだもの。自業自得だ」
もしガンダロフが呪縛に囚われていたらとか考えたくもない。すっごいモヤモヤする。
「ロト」
あ、私、今すごく嫌な顔してたかも。ガンダロフが心配そうに見てた。
「俺はもう大丈夫だから。ロトが全部燃やしてくれただろう?」
「うん…そうだね」
ガンダロフが私以外の人の元に行くの、嫌だと思った。なんて口走ったら今度こそ無事では済まないぞ。自重しよう、私。
「で、結局、聖者って具体的に何する人?」
「何って…………」
「魔神ちゃんから何か聞いてない?」
「魔神ちゃんって」
「私が意識不明の時に出てきた人」
「あぁ…」
ガンダロフは暫し思い返していたようで
「いや、何かしろとか、具体的なことは全く言わなかった」
「私には?何かして欲しいとか」
「いや、全然」
放任?好き放題勝手気ままにウェ~イってやって良し!ってこと?
「剣ちゃんは何か聞いてない?」
『素晴らしい!って褒めてくれた~』
そっか~、良かったね~。
他に訊きたいこと、あったような?でもせっかく和やかな雰囲気になったから、今日はここでお開き!ってことになった。
大きいテントの一つは救護所仕様で、ベッドが一つ一つ仕切りで区切られていたのでそこを拝借。防御結界を張って、我らの眠りは誰にも邪魔させない!
「仕切りが邪魔だな」
あ、ここに不安要素が一人。
「見られてるかもって思うと安眠出来ない!」
しょうがない、子守唄でも呟いてみるか。
♪ね~んね~ん~、コロ~リ~よ~、おコ~ロ~リ~よ~
……子どもを寝かしつけようと今みたいに呟いていたら、子どもに口を押さえられたっけ。目が『うるさい』って言ってた。コイツまだ言葉もよう喋れん癖にとか思ったけど、アレ?上だっけ?下だっけ?……
いつの間に眠ってたんだか。仕切りの向こうからは静かな寝息が聞こえてくる。そおっと起き出して覗いてみる。うん、ガンダロフも剣ちゃんも良く寝てる。大っきく育つんだよ~ってもう十分大きいし、それ以前に大人だし。
っていうか、これ、やっぱり現実?夢じゃないっぽいなぁ。だとしたら、何時毒ガスまみれになるかわからないような所に暢気に寝てる場合じゃないのかも。
では、後2時間程おとなしく寝ててもらおうかな。その間に気軽な単独行動、一人でお外探索、安全安心して眠れる場所と食べ物を探しに行ってみよう!
自分自身を害するものから防御するように、扉はエアカーテンで毒ガスが寝てる部屋に行かないようにイメージする。私が願えばほぼそのまま実現するって、なんなんだ?でも疑い始めたらたぶん使えなくなる。今はそんなの考えてる場合じゃない。先ずは身の安全の確保が最優先。
洞窟の外に出る。凄く寒い。肌に刺すような風の冷たさ。鼻水垂れてたら氷柱になりそう。それでも六一○ハッ○の匂いが仄かに漂う。何処かに温泉、ないかなぁ?
周囲をぐるっと見回して、ホント、岩と石と砂しかない。満天の星空を飛ぶ。もう無茶苦茶寒い。魔法で暖かくする。……出来るんだから本当に凄い便利!
月は出ていない。というか、そもそもある?空飛ぶの、気持ちいいなぁ~。風が強いけど、大歓迎!って感じではしゃいでいるような?このまま風に吹かれて流れて漂って溶けていくのも気持ち良さそう。でも今は泣いてしまうから無理。
生き物の気配を探る。ん、あっちの方、騒がしい。隠密形態で行ってみよう!
隠密状態で15km程下った森の中。ちょっと開けた所に大きめの山小屋とかテントとか。そして馬と狼が戦闘中。というか馬さん、何頭も食糧になってる。狼もやられてはいるけど、そもそも戦闘力が違うよね。群れの食糧としてはもう充分だろうに、まだやるの?
周辺を明るくする。朝が来た!って感じで、目眩まし。馬さん狼さん、驚いて固まってる。意志の疎通は可能でしょうか?姿が見えるように隠密形態解除して馬さん狼さんの間に割って入る。
狼さんリーダーを探す。いた。一回り大きくて、返り血を浴びているけど銀色の毛並みが輝いて
「格好良い~。さすがはリーダー」
『…オマエはナニモノだ?』
「あ、言葉が通じる。こんばんは、私はアスタロトというモノです。狩りの邪魔してごめんなさい。でも馬さん達に訊きたいことがあるから皆殺しは勘弁して欲しいです」
馬さん狼さんの状態を把握して、徐々に明るさを落として元に戻す。馬さん、随分とやられてるなぁ。ほぼ全滅。残った馬さんに密かに治癒。
『せっかくの獲物を見逃せと?』
「いいえ、刈り取った命は持って帰って存分に味わってくださいな。大事な家族が待っているのでしょう?」
『目の前にもまだいる』
「生きているモノ達は私が用があります」
『直ぐ死ぬぞ』
「貴様には既に関係の無い事だ」
口調を変えて威圧を加える。覇王の如く。あ、腰抜かした。後、失禁とか気絶とか。威圧が凄すぎて声も上げられないっぽい。……引っ込めよう。会話にならない。
「欲を張りすぎると大事なモノを失うよ?」
『オ、オマッ、ナッ、ナニモッ、ッ、?』
腰抜かしたままで動けないのかぁ。はぁ、手が掛かる。優しく治癒。ついでに返り血とか失禁とか、馬さんも一緒に綺麗にしてみる。出来た。
「もういいから、疾く去ね」
食糧になった馬さんを狼さんの方にいわゆる念動で置いていく。で、用無し!とばかりに背を向けて馬さんを見る。栗毛馬さんを庇うように大きい黒毛馬さんが立っている。ブルブル震えてる。暖かくしておいたんだけどなぁ、じゃなくて。
「改めて、こんばんは。私はアスタロトといいます。ここに居た人間達について訊きたいのだけど、お話出来ますか?」
ブルブル震えるて立っているだけで精一杯な感じ。
「無理?じゃ、いい」
話せないならしょうがない。建物内部を探索しよう。と歩き出したら
『…あ、あの』
か細い声。馬さん達の方を見ると、栗毛馬さんが黒毛馬さんの前に出てきた。黒毛馬さん、心配そうに寄り添ってる。
『……わからない。人間たちが突然消えてしまって。寒くなって。狼が沢山襲ってきて、仲間が沢山、殺られた…』
栗毛馬さんが訊いてくる。
『お前はナニモノ?』
うん、さすがは太っ腹母さん馬、肝が据わっていらっしゃる。怖いだろうにしっかりと答えられてるし誰何も出来てる。ってか、身重なのにこんな山奥に連れてきちゃ駄目でしょ!
「私はアスタロト。事情を知っていそうな人を探しているのと、休息できる場所を探していたの。あなた方は何故此処にいるの?」
馬さんたち、困ったようにお互いの顔を見合わせて、今度は黒毛馬さんが答える。
『山の下より遠いところから人を乗せてきた。…お前は人、なのか?』
あ、何気に難しい質問。
「人、の形をした人ではないモノ、かなぁ」
苦笑するしかない。
「人かどうかの判断はご自由にどうぞ。ただ」
くるっと振り返って様子見の狼さん達にも聞こえるように
「私と私の大切なモノ達に危害を及ぼすならば、容赦はしない」
あ、固まった。過度に怖がらせてどうするよ、私。
「食糧、ちゃんと持って行ってね」
狼さんに声を掛けつつテントの方に歩く。誰も何も言わない。身動ぎもしない。
読了、ありがとうございます。
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