76.爺さんが唾を飛ばして
訓練場から王城まで距離があるのでロジェ団長は馬を駆り、私達はその後をバイクで追っかける。王城に着くと麒麟は私の、白虎はガンダロフのフードに潜む。青竜と朱雀と玄武はガンダロフの指示で隠密形態にて王城内外を探索。会う人達に「ロジェ団長が何故今ここに?!」「その者達は何者だ?!」等と足止めされそうになりながらもロジェ団長は「詳細は後程!」と振り切ってやっと国王陛下の寝室前まで到着!許可を得て入室すると、もわぁぁ~んと嫌ぁな空気がお出迎え。空気が澱んでいて臭いし何となく薄暗いから
「診る前に先ずはカーテンと窓を開けて空気を入れ替えて。これでは健康な人でも具合が悪くなる」
とハンカチで口を押さえながら近くにいたメイドさんに言うと、
「何を勝手なことを!お前達は何者だ?!」
とはげ散らかした爺さんが唾を飛ばして喚く。マスクしようよ、って言いたい。
「先ほども言いましたが、この方達は『聖都』と大神殿での異変と騒動を収めて、意識不明に陥った者達を目覚めさせた大魔法使いです」
ロジェ団長が簡単に説明して、早く陛下を診てくれと私達を誘導するけど
「そんな怪しい者共に陛下を診せる訳にはいかん!」
と爺さん達がどいてくれない。
ガンダロフが、はぁ、とこっそり溜息を吐くと腰のマジックポーチから3枚程の紙を出してロジェ団長に渡す。
「貴方方と『聖都』で話した内容を纏めた物だ。これに異論が無ければアスタロトの言うことに従って欲しいのだが」
と爺さん達を一瞥して
「手遅れだった場合、俺達に責任を転嫁されたくないな」
確かに。というか、いつの間にそんな物を用意してたの?
ロジェ団長は少し驚いたように目を見開き「かたじけない」と紙を受け取るとざっと目を通し、そのまま爺さんに渡す。
「『聖都』での会談内容だ。今回の彼等への報酬については成功報酬のみだ。私はここでこのまま手を拱いて陛下が死に向かうのを見ているだけより、彼等に一縷の望みを託したい」
そんな大層なモノ、託されたくないなぁ。って口に出てないはずなのに、ガンダロフは宥められるように頭をよしよしと撫でて、ロジェ団長達に向き合う。
「で、俺達はどうすれば良いのだ?」
そりゃもう、好き勝手に!とは言ってもらえないだろうけど
「やるのであれば、さっさと始めたい。時間が経つと生還率が低下する」
「生還率?」
ガンダロフの手が止まる。
「目を開けても意識が何処かに行ったまま帰ってこないかも。どういう状態か詳しく見ないと何とも言えないけど」
ラクーシル絡みであれば、心や魂?そういうものに傷を負っている可能性は否定できない。
「このままであれば、見た目は穏やかに眠ったまま逝ってしまう。その方が都合が良い人が何人いるか知らないけど」
なんてこと言うんだ!!って目つきで注目される。穴が空きそう。
「王室内部のドロドロに関わりたくないから、このまま帰っちゃおうか」
「いやいやお待ちください!どうか!どうか!陛下を目覚めさせてください!」
ロジェ団長が涙目になりながら懇願する。…泣かせるつもりは全く無かったのだけど、本当にこの人無駄にキラキラしてるなぁ。と現実逃避気味に眺めていると、ロジェ団長の隣にまた別のキラキラした青年がスッと並んで私を真正面から見据えた。
「貴方方にその術があるならば、是非とも我が父を目覚めさせて欲しい」
そう言うと俯いて腰を落として
「膝は着かないで」
私の低く鋭い声に、そのままの姿勢で固まる。だから膝と腰に負荷が掛かって辛そうなんだけど。
「私にそういう趣味は無い。主従揃って似た者同士、仲良しなのはわかったから私を巻き込まないで」
と私は温度が感じられない声音で淡々と言葉を連ねる。姿勢を戻したこの人、国王陛下を『我が父』と呼ぶのだから王子ってことだよね。ガンダロフが
「では、診せてもらってもよろしいか?」
とロジェ団長、王子(仮)、そして爺さん達を順に見回す。爺さん達は苦々しい顔をするも、もう何も言わない。
改めてロジェ団長に促されてというか急かされて、国王陛下を診る。肩までの長さのくすんだ金髪はパサパサで肌はしわしわでかさついててもしかしたら若い頃は花の顔月の眉的な美形?だったとしても悲しいかな、跡形も無い。ガンダロフが私の分のマントも持って横に付いてこそっと訊いてくる。
「どんな具合だ?」
「何というか……枯れたイケおじ?心も体も疲弊して、力が出ない」
新しい顔よ!って取り替えて元気になるヒーローのようにはいかないけど
「ゆっくりと気力体力を回復させればそのうち目は覚める。それと…長年摂取してきた毒がここぞとばかりに本来の働きをしているから、先にそれを取り除く」
「毒?長年摂取してきた、だと?」
「うん、この部屋にあるかも。探してみて」
『『承知!』』
隠密形態でガンダロフの肩にちょこんと乗っかってた麒麟と白虎に指示する。
「では、いきます。毒素排出」
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