70.腐れ縁だと
朝から地震、びっくりです。皆様、頭上足元お気を付けて。作中にも地震の表現がございますので御留意くださいませ。
「オル、ってレアンのこと?」
「そういえば、ルセーニョがレアンにやたらと突っかかっていたのだが、あの二人、過去に何かあったのか?」
とガンダロフが訊く。うん、私も気になってた。
「オルは元々東方の教会付きの修道院から大神殿の修道士見習いとして召集されたと聞いたことがあります」
聖騎士二人の話によると、ルセーニョはジョウガ王国の高位貴族の四男。レアンとルセーニョは同時期に大神殿に召集され、そこからの腐れ縁だとルセーニョ本人が言っていたのだとか。
「同い年ではあるのですが、修道士見習いと従騎士、所属も出身も異なるし接点はあまり無いのですけどね」
そして五年程前にルセーニョはジョウガ王国支部に配属になったという。
「大神殿で問題を起こして追い出された、と言う噂でしたけどね」
重大な過失であれば公的に除籍・追放したが軽微なものを重ねていくような状態だったようで、親元に突き返されたというのが真相ではないか、と。だけど親は地元の権力者と言うことで忖度されて今の地位にある、らしい。
「じゃあ、剣術の腕前とかはあまり期待できないレベル?従騎士としては?」
と訊くと、二人共苦笑してご想像にお任せします、と即答を避けられた。…何故ここに来たよ、ルセーニョ。
「では、レアンとルセーニョは何かしらの因縁があったのかもしれないが、詳細は分からない、であっているか?」
とガンダロフが確認する。
「はい。ルセーニョが追い出される決定打になったのは、出張先に警護対象の修道士オルを故意に置き去りにしたのではないかと疑われた件ですね」
聖騎士ダングが話を続ける。
「道中もたびたび嫌がらせを行っていたのは認識されていてそのたびに注意を受けていたのが、出張先の都市から出発する時、既に積み込みの終わっている荷物を「まだ残っている」とオルに取りに行かせて、上官には「全員揃った」と虚偽の報告をして出発させておいて、後で「オルが乗っていないから迎えに行く」と単騎で取って返した、と」
なんだそれは、とガンダロフが呆れた顔をする。私も同じ顔をしてるかも。
「オルは徒歩で馬車を追った、というか門兵に締め出されたらしいですね。門兵はルセーニョからオルに対しての悪評を吹き込まれていたらしくて」
「それで、行方不明?」
「えぇ。つい先日まで消息不明だったのです」
聖騎士二人も渋い顔。
空白の五年間、どう過ごしていたのだろうって気にするのは普通だけど。でもその原因を作ったの、自分じゃね?それ以上のことは二人にも解らないというので
「レアンには後で詳しい事情を聴くとして。今はレアンとルセーニョを合わせないようにしておこう」
『混ぜるな危険』な香りがする。
で、ヴィオロさんの手記だけど
「文字、綺麗だね。さすが毎日写経してるだけある」
端正で読みやすくて、ヴィオロさんの人柄が現れているのかな。と文字をなぞってみる。
欲しいのに欲しくない。気持ち悪いのに気持ち良い。触れたくないのに触れたい。
無くなってしまえば良いのに消えるのは怖い。もう何も考えたくない。息をするのも煩わしい。
死にたいと思ったことはないのに生きたいとも思えない。『死』は救いになるのだろうか。
僕は、僕でいたい。望んだのはそれだけ。
立ちくらみがした。座っているのに。身体全体が輪郭が無くなっていくように、グラグラと揺れる。
「ロト!」
『ますたー?!』
ガンダロフが叫んで私を庇うように抱きかかえる。
「ガンダロフ。目眩が酷いの、地面が揺れてるみたいに」
口を押さえて蹲るように前かがみになってた。弱々しい自分の声に少しびっくり。
「目眩か。地面は今、確かに揺れたのだが」
え?
「…地震?」
「あぁ。直ぐに収まったが。具合が良くないのであれば今日はここまでにしよう」
顔をガンダロフの方に向けると目が合った。ガンダロフの瞳が不安げに翳って、彼の顔が滲む。え?びっくりして瞬きしたらポロンと何かが落ちてすっきりした、と思ったら直ぐに滲む。彼が息を呑んだのが伝わってきた。あぁ、また心配させてる。
ヴィオロさんの手記は、テーブルの上に置いてあった。
「また、放り投げちゃったのかな、私」
「何を?……また?」
小刻みに揺れている私の肩を抱いていたガンダロフの手が強張る。
「……いや、手記は静かに置いていた。何を読み取ったのかはともかく、もう、行こう」
と、ふわっと浮き上がったと思ったらお姫様抱っこされてた。
「え、ちょっと、待っ」
「待たない」
ガンダロフが珍しく強引だ。
「アスタロトの具合が良くないので、今日はここで失礼する」
と、驚きの展開についていけてないのか、え?とか、は?とか変な声を出す聖騎士二人とベルシームに、ガンダロフは一方的に断りを入れて扉へ向かう。
「ベルシーム!」
私は抱えられたままベルシームに声を掛ける。
「持ち出しは出来なくても閲覧は可能だったら、聖騎士さん達には満足いくまで見せてあげて」
ガンダロフがはぁ、と小さく息を吐いて振り返る。
「ベルシーム、よろしく頼む」
「承知しました」
「御配慮ありがとうございます」
彼等の返事にガンダロフは頷いて、部屋から出た。…涙が止まらない。
読了、ありがとうございます。
<(_ _)>
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