65.ヤンヤンヤンッ♪
此処は『聖都』の神殿の応接室。神官見習いの人達は何とか生き残ってたけど、神官達は殆ど亡くなっており役付きの偉い人達は塵と消えてしまっている。大神殿と同じ状況だ。本当に何を施したらそんな酷いことになるのだろう?残った人達で朝昼晩のお祈りを捧げたりとかできる範囲でお務めしていて忙しない。大神殿に間借りしている身としては、大神殿と共に此方の神殿もしっかりと運営できるようにお手伝いできればなぁ、間違っても手間を掛けさせる事態は避けたい、と思っているんだけど。
聖騎士ルセーニョの話を聞いて、ガンダロフが、さてどう始末を付けるかなと腕組みしたところで
「お連れいたしました」
と人型の白虎が他2名の聖騎士を連れて来た。ルセーニョより若い男性で何だかおどおどしてるなぁ。
「おぉ、お前達も来たか。であれば、私は大神殿に向かおう、案内を頼む」
と聖騎士ルセーニョは今来たばかりの白虎に出立を促す。
「待って。その必要は無いよ。大神殿の警護は間に合っているし、今聞いた話からすると貴方の居場所は大神殿には無さそうだし」
本音としては立ち入って欲しくない。私の言葉をいつものように補足するのかガンダロフが続いて言う。
「この神殿内を案内した後に大神殿を案内しよう。このことをマーリオに誰か伝えておいてくれ」
「はっ。畏まりました」
と白虎が退室する。え、連れてくの?聖騎士ルセーニョがニンマリと笑う。なんか苛つく。
「この者達にもジョウガ王国の神殿への報告義務があるだろう、一通り見せてしっかり報告させて、真面な人間を寄越してもらわないと」
なるほど。
ガンダロフと私で聖騎士3人を案内する。神殿内は明らかに人が少なくてひっそりしている。神官さん達はたまにすれ違ったり作業してたり本当にバタバタと忙しないのだけど、それを「挨拶もろくにしない」とか「落ち着きが無い」とか、そんな余裕無いの見たらわかるよね?とブスくれてたら、ガンダロフが宥めるように頭を撫で撫でしてきた。ふぅ、もう二人きりで何処かに行ってしまいたいなぁ…。
お昼御飯は神殿の食堂で、具沢山スープと硬いパン。食材は私達が持ってきた物も使ってあるのだけど、味付けが質素過ぎる。聖騎士達が文句言わずに食べているってことはこの世界の定番かな?お昼時なのに人はまばらで食堂の広さが際立つ。通常であればこの広さを用意しておく程の人数が利用していたのだろうけど。
「では、大神殿に案内します」
白虎はそう言うなり人型から獣型に変化した。後から来た聖騎士2人はもう先に見てたのかビクッと身体を揺らしただけだったけど、聖騎士ルセーニョは暫く驚きの表情で固まってそれから
「え゛え゛ーーーーっ?!」
煩い。いちいち癪に障るよね、この人。馬さん達も白虎の変化よりルセーニョの大声の方がびっくりしてる。
「俺達は麒麟と行くから、先に出発していてくれ」
とガンダロフ。麒麟はオルジオさんとレアンとロジェ団長達と今後についてのお話をしているんだっけ。
白虎と聖騎士たちを見送って麒麟を待つ間、神殿の奥の裏庭のベンチで一休みする。…周りに人の気配が無いからって、お膝抱っこは恥ずかしいのだけど?人どころか鳥や虫等の小さい動物の気配がとても薄い。お昼寝したくなる陽気なはずなのに、なんだか淋しくて切なくてガンダロフの首筋に顔を埋める。
甘える私の背中をよしよしと撫でながら、ガンダロフが今後の予定について話す。
「聖騎士達は大神殿に一晩泊めて、報告してこい!と明日ジョウガ王国へ向かわせる」
「3人とも?」
「様子を見て、だがルセーニョは帰ってもらう」
言葉と声だけ聞いてると真面目に作戦練ってる風なのだけどね。ガンダロフは身体を密着させるように私を抱きしめて、誰かが見ててもお構い無しって感じ?…彼の身体の暖かさが伝わって、落ち着く。気持ち良い。イライラしていたのがスゥーっと消えていく。そっか、構って欲しかったのは私だ。ガンダロフの大きな背中に両腕を回してぎゅぅっと抱き返して
「面倒ごとはさっさと片付けなきゃだね」
と囁いて耳朶をカプっと食んだ。
「はぁ~。行きたくない」
とガンダロフが溜息を漏らして
「が、そろそろ行くか」
と私を抱えたまま立ち上がる。いきなりのお姫様抱っこ!すると待ち構えていたのか麒麟が獣体でガンダロフの前でスッと現れて乗りやすいように伏せをする。もしかして待たせてた?
「じゃ、飛んでいきましょう!」
麒麟に相乗りで裏庭からそのまま空を上って駆けていく。大神殿への道のもうすぐ半分ってところで白虎と聖騎士達を追い越していく。馬さん、頑張れ~!と心の中で応援する。
「主、ますたー。ロジェ団長とシャンテ隊長が『空を飛びたいのだがどうしたら許可してもらえるのだろうか』と相談を受けたのですが」
「やっぱり蓑虫にして」
「やるなら聖騎士ルセーニョだけにしておけ」
試験体、一人ゲット!
「でもロジェ団長達って、レアンから話を聞いても『飛びたい!』って思ったってことでしょ?」
「『飛びたい』のであって『蓑虫になりたい』訳じゃないからな」
後ろに乗ってるガンダロフの熱い息が耳裏から首筋をそろっと撫でていく。んんっ、ゾクゾクするっ!
「飛びたい…飛ぶ…魔法で…?魔法使いが飛ぶのって、よく箒に跨がってたりするけどマハリクマハリタ?」
────ヤンヤンヤンッ♪箒もデッキブラシもそれ自体に力は無さそうなのだけど、いずれにせよ跨がって飛ぶとなると痛いよね。
「箒?良くわからんが、魔法を使うこと自体が稀有で空を飛ぶなんて考えたことも無かったな」
「話の中では魔法も魔術もいろいろある。♪アッブラカタ~ブラ~とか開け!ゴマ!とか」
厄除けに開門の呪文だ。あの小さな粒を開くほどに繊細な魔法の技術が必要だということかな?
「あ、そっか、呪文だ。♪ビビデバビデブ~~。鼠を馬に、南瓜を馬車にする」
「それで空を飛ぶのか」
「……飛ばない。空を飛ぶのは魔法の絨毯で、あれは…呪文でどうこうするって訳ではなかったような。うん、やっぱり蓑虫」
「それは却下」
えぇ~~……。
「大体、何故蓑虫に拘る?」
え?ガンダロフに問われてふと考える。
「……何でだろ?」
呆れた~って声が聞こえそうな溜息が私の首筋から胸の方へ下りてくる。うん、こんな訳わからんのに付き合わせて申し訳ないです……。
※※※※※
大神殿に着くと、玄武がお出迎え。神官宿舎の応接室で白虎達を待っていると、マーリオ君とルイジ君がやってきた。
「聖騎士様方には客室を用意しておきました」
「ありがとう。忙しいのに済まない」
「いえ、とんでもないです。本来は私達で対応すべきところを助けていただいて、とても感謝しております」
マーリオ君のほわっとした笑顔に癒される~。でも直ぐに眉が八の字になって
「今回は調査ということですよね、次回訪問時には祭事を執り行える人材を是非とも派遣して頂きたいのですが」
「そうだな、今回は聖騎士だけの派遣で祭事には関与しないようだから、明日にでもジョウガ王国に帰す」
ガンダロフの中では彼等が早々に帰るのは確定ってことで。
「できればマーリオ君かレアンが一緒に来て、ちゃんと働いてくれる人を選んでもらえると助かるんだけどなぁ」
「確かにその方がいろいろと手間が省けて早く立て直しが出来そうだな」
「でもね」
私は抑もの疑問を口にする。
「『祭事』って、何してるの?神様へのお祈り?朝昼晩で読経が聞こえてくるのは、レアンが唱えてる?」
読了、ありがとうございます。
<(_ _)>
続きが気になる、面白い、と思われた方は是非スクロールバーを下げていった先にある広告下の☆☆☆☆☆を★★★★★に、ブックマーク、いいね、感想等をお願いします。




