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転生魔神は陽気に歌う  作者: まちどり
53/227

53.亡くなった人沢山


 ガンダロフが横道に逸れた話を戻す。

「では、指環は元々は君の所有物だった、ということか」


「はい。この指環は代々スラザーズ家の当主が継承し身に着けている物です。父から小さな袋に入れられた状態で直接渡されて…その三日後に父は母と共に馬車の事故で亡くなりました。

 誰にも見つからないように首から提げていたのですが、神殿の敷地に入る際の検査で引っ掛かってしまい、ワーリオ様に取り上げられてしまいました」


「なるほど。手元に戻って良かったね」

 私がそう言うとマーリオ君は頬をほんのり赤らめて

「あの、本当にありがとうございました」

とお辞儀をした。


「で、なんでみんなして倒れてたのか、話してもらえるかな?」


 マーリオ君、えぇっととか口籠もって、あれ?なんだか話辛そう?するとガンダロフが質問を言い換える。

「最初に異変を感じた所から話してもらえないか?」


「異変……」

 頑張って思い出そうとしているのか、マーリオ君は顎に手をやったり遠い目をしたりと今此処ではない何かを見ながら、ぽつりぽつりと話し始めた。



 ♢♢♢♢♢



 「『聖女召喚の儀』の為に北の地下神殿に赴いた面々が消えたらしい」

 聖女様が召喚されるという話は一週間ほど前から公然の秘密として其処彼処で囁かれてはいたが、下働きの身としては日常が極端に変化する訳でも無く。ただ、上の者達が動揺と共にバタバタと忙しなく動く様は下の者達にも言い得ない不安をもたらしていた。


「魔神が現れたとかで、大司教様直々に討伐なされるってよ」

 神官達がそう話しているのを、大変そうだなぁと他人事のように聞いていたが、その翌日にまさか目の前で衛兵がザラッと塵になって消えたり神官達が苦しげに倒れて息を引き取ったりと、呻き声が渦巻く地獄絵図が目の前で展開されるとは思いもしなかった。


 自分達の体調も思わしくない中、救護院での介護も一段落した今朝、今まで静かにそびえ立っていた『聖樹』が突然黒く染まり崩れ落ちた。その影響なのか途端と具合が悪化し、気付けば宿舎の大広間で介抱されていた。



 ♢♢♢♢♢



「マーリオ君達が倒れたのは、黒いもやもやが原因っぽい」

 まあ、想像通りだよね~。と私が言うと

「では衛兵が塵になって消えたのは、ラクーシルの影響下から外れた所為か?」

 ガンダロフが応える。時期的にはそれで合ってるよね~。

「それと救護院?そこにも体調の思わしくない者達が多数いるということか」

「その救護院の収容者ですが、私共が訪れた時には既に全員亡くなっておりました」

 麒麟が少し眉をひそめて報告すると、マーリオ君をはじめ、麒麟の声が聞こえた人達から息を呑む音がした。


「沢山の人が亡くなった……たぶん街の方も亡くなった人沢山いるよね。そんな多くの亡骸を何処にどう埋葬したら良い?」

 集めて火葬?

「放置は拙いだろう、腐敗が進むと疫病の温床になってしまう」

「黒いもやもやに汚染されて暫く経つとゾンビになったりとか、無いよね」

 シューティングゲームみたいにガンでバシュバシュ撃ちまくれ!


「ぞんび?はわからんが、厄介なことになる前に早急な対処が必要だな」

 ガンダロフがなんとなく困惑顔に見える。あ。

「死者の弔いにこの世界特有の物事とか、ある?ガンダロフの世界でのこだわりとか」

 まぁ、亡くなった人を悼み、その魂を安らげるという気持ちをどのように表現するかではあるのだけど、そういうのって地味に大事だよね。


マーリオ君に聞いても特に変わったことは無さそうだったので、神殿の空いている敷地の邪魔にならない所に穴掘って遺体をまとめて焼いて埋めて、名前を刻んだ石碑を立てることにした。


「此処で亡くなった人達については、お名前と身に着けている物で遺品になりそうなものを取り置いて一覧表を作成しててもらおうかな」

 マーリオ君達にその作業を任せて、お手伝いとして玄武とジョーイ、ジョニーを同行させる。


「では俺達は街の様子を見て、出来れば傷病者の手当てと遺体の運搬を行う」



 ※※※※※



 街に行く前に、二階建て住居がすっぽり入る穴をドンッと掘っておく。この穴に遺体を全部入れるんだけど、溢れるかな?でも燃やして灰にするから大丈夫だ、たぶん。




「どうぞお乗りください」

 麒麟が獣型になって私が前、ガンダロフが後ろに乗る。

「二人も乗せて、重くない?大丈夫?」

「この軽くないしっかりした感触が幸せの重さなのだと嬉しく思います」

と機嫌良さげに麒麟は返す。


 馬さんより大きくて、視線が高い。

「おぉぅ、なんか新鮮!」

 思わずキョロキョロしちゃう。

「手綱や鞍が無くても安定している」

「ガンダロフ、ちゃんと腕を廻してね」

と彼の腕を私の腰にしっかり廻す。二人の身体が密着すると、彼の熱が伝わってきて私の身体も熱くなる。ん~~~っ、暖かくて気持ちいい。


 青龍、朱雀は人型で、これまた大きい獣型の白虎に跨がって移動する。猛々しくも勇壮な白い虎に美男美女、ゲームとかアニメとかのスチル絵を実写で観てる気分。凄く格好良い!じっと見てたら、青龍は手を振って、朱雀はぺこりと小さく頭を下げて、白虎は長くてしなやかな尻尾をブンブンと振り回したので、私も手を振って応えた。


 穴を掘った敷地奥から正面の門、門から出て街に至るまで、所々に衣服が抜け殻のように置いてある。

「中身だけ塵となったようだな」

とガンダロフ。

「洞窟内の神殿や教会地下にもあったね」

 洞窟内は手を付けてないからまだそのまま残っているかな。

「俺を襲った奴等と同類なのだろうか」

「一体どんな術を施したら、人が塵になって消えてしまうんだろう」

 それこそ『神秘』っていうモノかもしれない。


 山道、というよりはカーブの多い坂道のような感じで、常時馬車が離合出来る幅がある。植生は杉とか松とかの針葉樹が多くて、フィトンチッド目一杯浴びてる~。山の中腹より頂上に近い所の神殿敷地から中腹より少し下方に降りた所に街があった。『聖都』だ。


 読了、ありがとうございます。更新、不定期です。書けたら上げます。

 続きが気になる、面白い、と思われた方は是非スクロールバーを下げていった先にある広告下の☆☆☆☆☆を★★★★★に、ブックマーク、いいね、感想等をお願いします。

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