52.泣きながらお食事
施術していく中で気になる人が居たので、ガンダロフを伴ってその人の元へ行く。
「私はアスタロト。彼はガンダロフ。あなたのお名前は?」
私が声を掛けたのは、青い瞳とくすんだ茶髪の見た目は十四、五歳の少年。膝を折り両手を組んで私を見上げているその表情は、なんで僕、声掛けられてるの?と言っている。
茫然としたまま固まっているので、彼と同じ高さの目線になるように私も片膝をついて再度尋ねる。
「あなたのお名前は?」
その少年はパチリと瞬きをして
「マーリオといいます、女神様」
「ガンダロフ」
私は隣にいる彼を見上げて
「私、白いワンピースとか着てた方が良かったかな」
「似合うと思うが気にするところはそこじゃない」
ガンダロフは、はあぁ~、と息を吐きながらしゃがんでマーリオ君に指摘する。
「彼は男だ。女神じゃない」
神様でもないけどね。
「で、彼に何の用だ?」
とガンダロフは私に訊いてくる。
「ガンダロフが提げてる指環、彼に縁のある物じゃないかと」
そう言って私はガンダロフの胸元を指差す。
「っ?!そうなのか?まさか本当に見つけるなんて、凄いな」
とガンダロフは鎖をするするっと引っ張って指環を表に出した。古ぼけた金の指環が、どことなく嬉しそうにキラリと光る。
その指環を見た瞬間、マーリオ君は大きく目を開いて
「何故貴方がそれを持っているのですか?」
とわなわなと小刻みに震え指環を指差す。
「この指環はね、北にある教会の地下にあったの。指環と一緒に衣服もあったのだけど、それを身に着けていた人のことはわからない」
私が説明している間に、ガンダロフは鎖から指環を外して手の平に載せていた。
「とても強い守護の念を持つ物だから、縁のある人に持っていて欲しいと思ってた。見つかって良かった」
そう言うと、マーリオ君の顔が真っ赤になって固まってしまった。なんで?ガンダロフに説明を求めようと振り向くと、彼の頬もほんのり赤みが差している。
「ん゛んっ、で、指環は返して良いのか?」
と咳払いをしてガンダロフが訊く。
「うん。で、マーリオ君。君とこの指環の事と、前の持ち主の事を教えて欲しい」
大広間に聖獣達が入ってきたのが見えたので、ここでは落ち着かないから後でね、と言って、マーリオ君に指環を渡して聖獣達の元へ行く。
ガンダロフが麒麟に声を掛けた。
「お疲れ。街の方の話は食堂で詳しく聞くことにしよう」
すると、聖獣達の後ろからピョコピョコンと高校生位の少年?が二人、顔を覗かせる。
「ジョーイ、ジョニー、お疲れ様」
私が二人に声を掛けると、聖獣達の横にささっと並んで敬礼をする。
「清掃、終了しました」「しました」
先程、集塵機ズを人型にしてピンクの髪に赤い瞳をジョーイ、水色の髪に青い瞳をジョニーと名付けた。ショートボブにクリーム色の帽子とつなぎ、焦げ茶色の腰ベルトポーチと長靴の装備。主に清掃を担う眷族として造り変え、まずはこの宿舎の清掃をしてもらっていた。
「何か不具合は無い?」
「「はい、今のところ無いです!」」
「では、彼等の退室後、ここの片付けとお掃除をお願いね」
「「了解!」」
※※※※※
ここに集められてた神殿関係者達には、ガンダロフが全員食堂で食事をとること、代表者を決めて私達の指示を受けることを伝えていた。みんなでぞろぞろと大広間から食堂へと移動する。食堂では既に人数分のパンと具沢山のスープが用意されていた。
私とガンダロフ、代表者としてマーリオ君と同じテーブルに着く。マーリオ君は貴族の令息だそうでこの中では身分が一番高いのだとか。私達はお茶をいただきながら、さてお話ししますか。
先に麒麟から街の様子を訊く。
「かなり混乱しております」
町長・区長などの取り仕切る立場の者が見当たらず、一部略奪行為などの形跡があり治安はよろしくない、と。黒い靄の影響で辛うじて動ける状態の者が殆どだったのが、私が放った浄化の魔法で毒素等が取り除かれ、若干の衰弱は見られるものの自力で回復出来る程度だという。
「治安の悪化は好ましくないな」
ガンダロフは、ふむ、と顎に手を当てる。
「マーリオ、街の警邏等は今までどうなって」
マーリオ君、えぐっえぐっと泣きながらお食事中。
「いや、話は後で良いから、落ち着いて食べてくれ」
マーリオ君がパンを頬張ったままコクコクと頷くのを見て、麒麟が手拭きをマーリオ君の傍にそっと置いた。
マーリオ君だけじゃなくて此処で食事をしている皆さん同じような状態で、うれし泣きなんだろうけど、なんだか湿っぽい。なんて思って眺めていたら、ガンダロフが話し掛けてきた。
「ロト、この者達にやらせたい事とは、大聖女であるアーリエルさんの世話なのだろう?後はルゥさんとアーリエルさんをここに連れてくるだけで良いのではないか?」
あ~~、確かにルゥさんであればお世話係の教育は出来るよね。
「そうだね。此処での異変の状況を把握したら、ルゥさん達を此処に連れてこよう」
そして後は丸投げだ!
「で、街の方は、構う?無視する?私としてはどちらでも良いよ、どうせ暇だし」
「治安が良くない所に君をわざわざ連れて行きたくはないな」
とガンダロフは渋い顔。でもね。
「絡んできた奴等を片っ端から矯正していくのも面白そう」
「直ぐに飽きるのでは?」
「飽きたら燃やしてお終い、とか」
しないけどね。
ガンダロフは腕を組んでむむ、と少し考え込む。あれ?窘められるのかと思ったのに?
「市井の者達を恐怖で支配するのは短期的には良いか。混乱を治めることが最優先だしな。どうせ此処には長居するつもりは無いのだろう?」
「うん。私達が傍若無人に振る舞えば、後から来るルゥさん達が善人に見えて支配はやりやすいかもね」
人間の管理は人間にお任せしようそうしよう。
「で、そろそろお話し、出来るかな?」
マーリオ君に話を向ける。彼はもう食事も終わって落ち着いた様子で私達の話を聞いていた。
「あ、はい。先程は失礼しました。パンもスープも凄く美味しかったです。ありがとうございました」
何をどう訊くかな?とガンダロフに顔を向けると、彼が口を開いた。
「まずは君の身の上話を簡潔に、それから君達の日常に異変が起こってから俺達と会うまでの間に、何があったのか教えて欲しい」
※※※※※
マーリオ君はこの神殿では下働きとして働いている。元は此処から東にあるジョウガ王国の貴族子息だったのが、両親が事故で亡くなって叔父の家族に家を乗っ取られて、叔父の三男と共にこの神殿に放り出されたと言う。指環は此処に来る道中にその三男に取り上げられてしまったのだとか。神殿に着いてから直ぐに離れて生活していたので、三男がどうしていたのかはわからないそうだ。
「ワーリオ様は乱暴も、んんっ、力がそこそこ強い方でしたので、どなたかの護衛でも務めていらしたのかも」
「その三男、ワーリオって名前なの?」
「はい。私より3才年上です」
マーリオにワーリオときたら
「『ルイージ』っていう弟がいたりしない?」
そして想い人の名前は『ピーチ』!
「いいえ、弟はいません。妹が一人、『ディアナ』といいます」
マーリオ君はパチリと瞬きをすると真面目に答えた。
読了、ありがとうございます。
<(_ _)>
次回『カクテー深刻、曝かれた真実!~嘘っ!こんなに持ってかれてたの?!』お楽しみに!(嘘です、たぶん)
続きが気になる、面白い、と思われた方は是非スクロールバーを下げていった先にある広告下の☆☆☆☆☆を★★★★★に、ブックマーク、いいね、感想等をお願いします。




