49.マオちゃん
♪おべんとおべんとうれしいな~♪
お日様は真上にある、はず。未だもやっていて見えない。麒麟と青龍とジョー1号2号改め集塵機ズも呼び寄せて、報告がてら休憩だ。
そして何人たりとも邪魔させない!結界を張って、みんなで息抜きしよう。敵地ど真ん中だけど。地面を平らにしてラグを敷き、『お値段、以上』のソファセットを出す。寛ぐ気満々だね。
ガンダロフは小人さんと大きな木の光の様子を見ている。光は彼の膝の上で小人さんによしよしと撫でられて大分元気になったかな。
集塵機ズはまだまだやるぜ!と元気いっぱい。付き合わされた麒麟と青龍はちょっとお疲れ?
「結界を張ったのは良い判断だね」
黒いもやもやが他の地域に拡散しないよう麒麟が広範囲に結界を張り、青龍が風を操って上空の一カ所に集めて集塵機ズに効率良く吸引させていた。
「どの位溜まった?」
紙パック式掃除機と同じ要領で、吸い込んだ黒い靄を濃縮して容器が一杯になったら結界で包んで排出、それを巾着袋に入れていく。そうして溜まったのはまだまだほんの少し。上空には黒いもやもやが分厚い雲のように空を覆っている。
「全排除には一週間以上は掛かります」
麒麟は申し訳なさそうに眉を下げた。
「不眠不休で、の前提でしょ?休憩はきちんと取らなきゃだ。それに君達だけでやる必要も無い。おおよその全容が掴めただけでも上出来」
と、ポンと麒麟の肩を叩く。
「力業で出来ることは私に任せて。君達聖獣は、私やガンダロフの手が回らない所を補ってもらってるし、実際とても助かってる」
今も麒麟以外の聖獣達はお昼ごはんの準備を手際良くしている。自発的に行動出来ているのは、有難い。
「ありがとう。頼りにしてるよ」
「っ!斯様なお言葉を頂き、望外の喜びでございます」
麒麟は目を潤ませ頭を垂れた。
聖獣達は食事はしないと言うので元の姿に戻ってもらい、小っこいもふもふを愛でながら食べる。
昼食は、厚焼き玉子サンドイッチとベーコンレタスサンドイッチ、山鳥と野菜たっぷりスープ。
「美味しい!」
「美味い!」
そろそろおにぎりとかご飯が食べたいなぁって思ってはいるけど、美味しいもの食べているともうそれだけで満足しちゃう。チョロいな、私。
ご飯の後に、報告と確認を兼ねてみんなでお茶にする。
私が作るものは何でもご馳走なんだとかで、以前作ったタンポポコーヒーとお茶請けに焼メレンゲをポポポポポ……と即興で作る。
「魔法って凄いよね~」
「本当に凄いと思うのは、お茶請けを作る為だけに高度な魔法を惜しげも無く使う君なのだが」
暗に私が食いしん坊だと言いたい?否定はしないけど。使わなかった卵黄は、そのうち濃厚プリンを作ろうそうしよう。うん、楽しみが増えた。
人型になった聖獣達、顔はキリッとしてお仕事形態なのだけど、周りにお花が舞っているようなほわほわとした雰囲気なのは焼メレンゲの仕業だろうか。
「剣、ユキチからの報告を聞かせてくれ」
『承知』
私達がルゥさんと別れた後。
アーリエルさんと元捕虜二人に紹介されて、家の中のこと、馬さん達の世話を熟している、と。ルゥさん達は私達ともっと話がしたかったようだが、『聖樹』の対応に向かったとのことでアーリエルさんは安堵した様子だと言う。
「こちらの『聖樹』がほぼ存在が無くなったことについては何かしら変化はある?」
もし、あるとすればアーリエルさん。でもたぶん、無い。私達がいた住居は襲撃後に結界を強化して、外界とは殆ど遮断されているから。影響があればとっくに判っている。
『ううん、未だに「大丈夫かしら」と心配しているって』
ガンダロフは顎に手を当てた考える人ポーズで指示を出す。
「そうか。…そのうち、出来ればアーリエルさんが住居に来る直前の『聖樹』の様子を聞いていて欲しい」
ん?『聖樹』だけ?ちょっと気になったから訊いてみた。
「『聖都』の住民とか、一緒に住んでた人達については、何か言ってる?」
普通は知人の心配、するよね。
『……ううん、それらしき事は聞いていないって』
「ふぅん、お世話になってた人達の事は、気にしてないんだ」
ガンダロフが怪訝な顔つきになる。
「どんな暮らしをしていたんだ?」
「情報が少なくて推測も侭ならないけど、もしかしたらマオちゃんに聞けば少しはわかるかも」
「『マオちゃん?」』
「うん、マオちゃん」
ガンダロフをはじめ、此処にいる全員の表情が、誰?って言ってる。
「えっと、『大きな木』も『光』も他所にもあるだろうから、それぞれ名前を付けて分かり易くしようと思って……で、『真ん中の大きな木』で『マオ』」
今は光だけど。
『じゃ、わっちは?』
ガンダロフの胸元から小人さんがひょこっと現れた。またそこにいたんだ。
「『北の大きな木』は、タケシ」
『きたの』って言ったら、タケシだよね。
『『タケシ』!良い名でやす!ありがとうございやす!』
と、タケシは、ナハッと笑った。
マオちゃんはお休み中。安心した反動か一頻り泣いた後、そのまま眠ってしまったという。
『マオは、自分も地中で眠って休みたかったのだけれど、人間がちょこちょこ煩いので仕方なく起きていたんだそうで』
それが、ちょっと前に根元に変な物を仕込まれて、それがじわじわと力を吸い取っていくのと気持ちが悪いのとで地中に潜れなくなって、その嫌な物に極力触れないように頑張っていたけれど力尽きて触れてしまい、後は見ての通り。
「根元の変な嫌な物があの大きい黒い球か。結局あれで何をしてたのだろう?」
「碌でもないことでしょうけどね。マオちゃんはゆっくり休んでもらって、私達はこの土地の汚染?を浄化?黒い球とか黒いもやもやとかの影響を綺麗さっぱり取り除こう」
上空の黒いもやもやは風の壁で囲み一旦放置する。聖獣達は二手に分かれて集塵機ズを連れて周囲の探索と私達の警護をする。私達はまずは黒く染まった大きな木の残骸の処理をする。とこれからの作業内容を全員で確認した。
「生きてる人、いるかな?」
「気配は感じないが、潜んでやり過ごしているやも知れぬ。保護して話を聞く」
「ということは話が出来る状態にしなきゃ、だ。何人くらいいるかなぁ?」
テントで避難所を作って、炊き出しをしよう。お腹いっぱいになれば、いろいろ話してくれるよね。
沢山作ったつもりだけど焼メレンゲは残り1つ、みんな遠慮して手を出さないようだから。
「最後の1個、頂きます」
と摘まんで口に運ぶ。そのまま食べても甘いのだけど、口の中で割ってガンダロフの頬に手を添えて口移しで半分を食べさせる。
「っ?!」
焼メレンゲのサクッとした食感とふにっと柔らかい唇の感触、口の中の甘さと彼の体温と共に感じる甘酸っぱい香り。あぁ、美味しくて蕩けそう。
ペロッと舌舐めずりして
「ごちそうさま」
と言うと、ガンダロフは顔を瞬時に赤くして口を手で塞いだ。固まったように動かないけど、もぐもぐゴックンと喉仏だけが動く。
「美味しかった?」
と訊くと、コクコクと頷く。
「良かった。そのうちまた作るね。あ、でも別に焼メレンゲじゃなくても良いのかな?」
と小首を傾げたら、ガンダロフは両手で顔を覆って俯いてしまった。耳も首筋も真っ赤。ナニコレ食べたいくらいかわいい。




