41.ガンダロフ以外興味は無い
『先程、おそらく前の愛し子様も懇願されておりやしたが、真ん中のにも力を贈っていただけやせんか?』
「力?」
『へぇ。わっちに贈っていただいたように』
あれか。某バトルフィールドの『大草原』。小人さんは何卒よろしくお願ぇしやす、と深々と平伏した。
「うん、わかった」
直ぐにでも行きたいけど、まだまだ訊きたいことあるから
「明日にでも行ってみる」
「『「『明日?!」』」』
何みんなして驚いてるの?あぁ、直ぐ行くって言わなかったからか。小人さんは号泣してありがたや~、とお辞儀を繰り返してる。
「明日?」
ガンダロフがもう一度心配そうに呟く。眉が八の字だ。
「いろいろ準備したいから直ぐには行かない。ガンダロフは」
「行く」
と彼は私の背中と腰に回した腕に力を入れた。ん、彼の熱が伝わってきて、私も火照ってきた。彼の身体に密着するようにしな垂れかかって、耳元で囁く。
「ルゥさん達はお留守番」
その言葉が意外だったのか、え?とガンダロフは腕を緩めて私と目を合わせる為か顔を向けようとした。けど、私は彼を離さず頭を抱え込む。彼の熱い吐息が胸元から鎖骨を撫でて、んんっ、ぞくぞくするっ!
「彼等がいたら、好き勝手出来ないでしょ?」
ガンダロフの短めの黒髪を指で梳く。甘い花の香りと爽やかな柑橘系の香りが辺りに漂って、あぁ、食べたい。
「好き勝手。だが、此処に置いていくのも不安なのだが」
この状態で喋られると、擽ったいな。
「ん~~?彼等は彼等の好きにしたら良い。どうせ彼等は人間にしか関心が無いのだろうし、私はガンダロフ以外興味は無い」
私がそう言ったのをどう受け取ったのか、ガンダロフは火照った顔をぐりんっと上げた。大きく見開いた黒い瞳は満天の星空を映した夜の海のようにキラキラと光りながら微かに揺らいでいて、ずっと見ていたい。
彼は何かを言おうとして、でも言葉が出てこないようで口をあうあうと開けたり閉めたり。かわいい。そのうち彼の瞳が夜の海が満ちてきたように潤んできて俯いてしまった。私はというと、その間中彼を見つめながら彼の少し癖のある髪を梳いてその手触りを充分堪能していた。彼の身体の熱が伝わってきて、それに呼応して私の身体の奥の何かがグルグルと唸りだす。熱い。甘酸っぱい香りと相まって、凄くいい気持ち~。
ふと小人さんと麒麟を見ると、手を胸の前で組み、眼福や~、と目を細くしてふにゃあ~っとした顔。何気にお二人仲良しさんだね。剣ちゃんもほわんと淡く光っている。
快感に浸るのは程々にして
「というか邪魔されたくないから、アーリエルさん、もう聖女引退しちゃって此処でルゥさんと二人でのんびり過ごしたら良いんじゃないかって勧めるつもり」
「それは二人をこの地に留めておく、というか閉じ込めるのか?」
お、ガンダロフ復活?でもこの体勢だと擽ったくて気が散るから考えが纏まらない。勿体ないけど、額にチュッと口づけてから腕を緩めた。彼は、はあぁ~~、と熱い息を洩らしながら顔を片手で覆った。耳も首筋も真っ赤だね。
「閉じ込めるつもりは無いよ。まぁ、引き籠もるかどうかは彼等の自由で。ただ、大きな木とのお話しを邪魔されたくないだけ。そういえば、紹介はしてもらえるんだよね?」
と小人さんに確認する。
『紹介?』
こてんと小首をかしげる。
「あれ?一緒に行くんだよね?『聖都』にあるっていう、真ん中の大きな木のところまで。小人の姿になったのはその為だと思ったのだけど?」
『はぁ、なるほどぉ…』
小人さん、腕組んでうんうんと頷く。なんだか他人事っぽいなぁ。
話をよく聞いてみると、なんと、他の大きな木には直接会ったことはないのだそうな。まぁ、樹木だからその場所から移動するのは容易ではないんだろうけど。他の木がどういう状態かは、気配でなんとなく察するだけだそうで。
『今は真ん中のが辛うじて表に出てるかなぁ?って感じがするだけでして』
でも、大気がこんなに気が薄くて息苦しいのにそれでも表で頑張っているのは、意固地になっているのか別の理由があるのか。
「いずれにせよ心配なんでしょ?じゃあ、一緒に行って直接お話ししたら良いんだよ。大丈夫、私の傍にいれば力の供給は出来るから消えることは無いし」
だから一緒に行こうと言うと、つぶらな黒い瞳を潤ませながら、ありがたや~と嬉しそうに拝まれた。
※※※※※
で、聖都の情報収集は聖獣達に任せて、美味しいおやつが食べたい!
「温かいのと冷たいの、どっちが食べたい?」
「…温かい方で」
では、玉子と牛乳と小麦粉と砂糖で、ホットケーキに決定!牛乳…牛、居るんだ。そうだよね、馬、居るしね。
始めに小麦粉を細かく細かく製粉し直して。胚芽もそのままの全粒粉だからかなり雑味があるだろうけど、砂糖を減らしてその味を生かす方向で。そして牛乳を密閉容器で攪拌して、バターを作る。
「聖獣達も此処に置いていくのか?」
一緒に密閉容器をフリフリシャカシャカしながら、ガンダロフが訊いてきた。
「聖獣達に決めてもらおうかな」
「全員ついて行きます」
麒麟と交代した朱雀が、やはり密閉容器をフリフリシャカシャカしながら当然、といった感じで即答する。
「彼等の面倒を見る者がいなくなるな」
「ルゥさん自分で造れば良いんだよ。その為の力だもの」
聖獣達と同等の力を与えたんだから、自分達のことは自分でやって欲しい。
「眷族を造るくらい出来るでしょ。監視は付けて置くけど」
大きな木にも頼むし。でも。
「何か別の懸念があるのか?」
ガンダロフ、鋭いな。
「アーリエルさんには、静かに落ち着いてゆっくりと、自分自身とルゥさんのことを大事にして過ごして欲しいなぁ、って」
私の勝手な願いだけどね。
卵白を固いメレンゲ状に泡立てて材料を混ぜて、フライパンでは数が熟せないから鉄板で焼いて,熱々ふっくらホットケーキの出来上がり!
温かい内にルゥさん達と捕虜二人に持っていってもらって、さて、実食!
「バターとシロップ、好きなだけ掛けてね」
ほかほかふわふわ、シロップの甘い香りとバターの香ばしいさが食欲をそそるぅ。無塩バターだから気持ちあっさりめで、何枚でも食べられそう。
ガンダロフ、一口食べてしばらく固まってた。口に合わなかったかな?と心配して声を掛けようとしたら
「美味い!!」
と一言叫んで残りをペロリと食べちゃった。口から怪光線出したり蘊蓄垂れ流すような人じゃなくて良かった。
朱雀も良い笑顔で黙々と食べてる。たまに目を細めて、ほおぉ~~って美味しさの余韻に浸っているのが周囲に花が舞い踊っている感じがする。
小人さんには食べやすく切って、食器もミニミニサイズ。ちまっとしててかわいい~。座布団に胡座掻いて
『美味ぇ~!』
と口いっぱいに頬張って満足そう。…言うこと成すこと親父だな。
おやつを本気食いすると、気付けばお腹がパンパンで
「晩御飯要らないかも?」
「いや、別腹だろ」
晩御飯、何にしよう?
※※※※※
♪しとしと―――――、しと―――……。チャンの仕事が四角って、何ぞや?っていう記憶の中の幼い私の疑問は、両手の人差し指で四角をなぞった時点で♪これっくらいのっ♪お弁当箱に変わってしまったなぁ。
相変わらず雨がしとしと降る中、ガンダロフと小人さんを連れて森の直ぐ傍まできた。
読了、ありがとうございます。
<(_ _)>
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