4.赤いマフラーを棚引かせて
数多ある作品の中から選んでいただきありがとうございます。
<(_ _)>
本日は3話投稿します。
これは1/3話です。
突然、口から熱い息のようなものが大量に吹き込まれた。それは私の身体の隅々まで行き渡り、私の輪郭を強く象るかの如く何度も何度も駆け巡る。凄く熱い。
んで、息苦しい。うん、息苦しい!溺れてるの?って位に息苦しいんだけど!藻掻きたいのに身体が重くてうまく動かない!苦しくて苦しくて苦しくて、息を吸おうとしたらちゅっっ、と暖かくて仄かに甘酸っぱいものが口の中に入り込んで消えた。生唾をゴクンと飲んでふ、って息を吐いたらヒューって空気が肺に入ってきたので、そのまま息を吐くことを意識して静かに呼吸する。
ペトトッペトペトッ、ペタタタタッ。
さっきからなんだか生温か~い感触が、あぁこれは顔に何か滴っているんだと自覚する。どくどくどくと鼓動がうるさい。まるで競技終了直後のアスリートの胸板に耳を押し付けているみたい、っていやそのままやん。私、抱きかかえられてるっぽい?
「アスタロト」
うっすら目を開けてみると誰かが覗き込んでる。ん~~~~、誰?
「気が付いたか、はぁ、良かった」
ポトポトと生温かい液体が顔に降ってくる。涙だと思いたい。厳つい兄さんが号泣一歩手前?状況がよくわからん。んで『アスタロト』て……あ、あれ?えーっと
「ガンダロフ」
名前を呼ばれて安心したのか、ガンダロフはふわっと笑みを浮かべた。安堵したいい笑顔。そして大事なモノを抱え込むように私を剣と共に抱きしめた。
甘い花のような香りが濃く漂う中に柑橘類の酸っぱ爽やか系の香りが若干混じってて、でも嫌な感じではなくてなんなら美味しそうな印象すらあるのだけど、私、お腹空いてる?んで、此処は何処?そして何故お膝の上に抱っこ?!あ、剣が鞘に収まってる。剥き身だと危ないものね。とりあえず、濡れてて気持ち悪いのをサッパリさせなきゃだ。
ガンダロフは私の後頭部をゆっくり撫でている。柔らかい髪のサラサラ感を堪能しているような気もする。掛かる息が熱い。なんだろう、この『母ライオンにいい子いい子されてる子インパラ』みたいな気分。怖くて顔、上げられない。トクトクトクと鼓動が聞こえる。というか周囲が静か過ぎる。
落ち着け、私。先ずは顔を拭こう。フェイスタオルサイズの蒸しタオルを二つ、両手の平に出す。ポポンッ。今顔を上げたら、お互いの顔が近すぎて、びっくりした勢いのままガンダロフの顔面に熱い蒸しタオルを押し付けそうだ。彼が動きを止めたところで、下を向いたまま蒸しタオルを一つ渡す。
「顔拭いてさっぱりしましょ」
ガンダロフの声が降ってくる。
「あぁ、ありがとう」
はぁ。暖かいのが気持ちいぃ~。顔と首筋を拭いてさっぱりとしたところで、そろそろお膝から降りたいのですが。何気にガッチリと押さえてあるのだけど。
「立ちたいから、腕を退かしてもらってもいい?」
顔を伏せたままお願いしてみる。
「……大丈夫か?まだ動かずにいたほうが良くないか?」
……ホント、私が落ちている間に何があった?
「この状態では落ち着かないから自分の足で立ちたい」
「いやしかし」
「立 ち ま す」
顔を上げると視線がぶつかる。近い近い近い近い!でも逸らさない!直ぐにガンダロフが真っ赤になった顔を逸らして手で口元を覆う。よしっ!私は剣を抱えたまま、彼の膝から降りて立ち上がった。剣、意外と軽く感じるなぁ。
ガンダロフも直ぐに立ち上がった。
「大丈夫か?ふらついたりはしないか?」
「うん、大丈夫。心配してくれてありがとう」
クルッと回って彼に向き合う。彼は顔を両手で覆って、かわいい、とかなんとか小声で呟いている。
周囲はたぶん石造りの広い空間で、小学校の体育館より若干狭いかな。壁には電球っぽい?蝋燭とか松明ではない灯りがかろうじて点いている。薄暗い。足元には黒く炭化した何かで模様が描かれている。魔法陣かな?その直径4メートルくらいの円周の外側には、脱ぎ散らかした服のようなものが点々点々……。
「これが小学校とかだったら『躾がなってない!』って言うところだよね」
「?何の話だ?」
お、ガンダロフ復活。剣を渡しつつ、軽く現状確認を行う。
「はい、これ。鞘、造ったんだね。質素だけど持って歩くのであれば丁度良いのかも」
あれ?眉をひそめて変な顔。
「覚えていないのか。まぁ、しょうがないのだろうな」
「何を?」
ガンダロフは困惑しているような迷っているような。
「……魔神の話だ」
「マジン?」
アニキが赤いマフラーを棚引かせて「ゼェーーーッッ!」と叫ぶ幻影が脳内に浮かぶ。
「剣を出したことは覚えているんだな」
「うん。凄いの出来たーって思ったのは覚えてる。で、気が付いたらベショベショだった」
「ベショベショ?」
「ガンダロフの……涙?」
「あぁ~~~。……済まない」
彼は鞘に収まった剣を剣帯に装着しながら謝罪した。
「いやこちらこそごめんなさい。あんなにボロボロ泣いてたのって、私よっぽど酷いことしたんだよね。なんだか話聞くの怖いな……ガンダロフ?」
ガンダロフは手で口元を覆い赤くなった顔を逸らした。目が泳ぎまくっている。
「あ、あぁ、話さないで済むのであれば、話さない方が良いのかもな……」
ちょっと!何その反応!一体全体本当に何があった?!
「……先ずは落ち着いて話ができる場所を探しましょうか」
「う、うん、そうだな」
改めて周囲をぐるりと見渡す。この点々とした衣服ってもしかしてっていうかやっぱりっていうか、うん、今は無視!
出入口は……壁をぐるっと沿うように階段が設けてあって、上がった先に扉が見える。扉の向こう側はどうなってる?それに、この部屋に私とガンダロフ以外の生き物の気配は感じられないけど、実は何か居るとかだったら嫌だなぁ。
「あそこしか出るところは無さそうだな」
ガンダロフが階段上の扉を指差した後、視線を落として
「これを除けて行くのか。なかなかの難儀だな」
死屍累々って感じの衣服の山々。
「飛んでけばいいんじゃない?」
「は?飛ぶ?」
「うん。ピーターパンみたいに」
出来るよね、私。さぁ、やってみよう!と思ったら
「待て待て待て待て早まるな!」
彼に腕を掴まれた。なんだか自殺する人を止めるような切羽詰まる感じ。
「力を使い過ぎると意識を失ったり倒れたりするんじゃないのか?」
すごく心配気に見つめてくる。
「え?そうなの?じゃあ私がガンダロフにお膝抱っこされてたのって、力の使い過ぎ?」
「っ!お膝抱っこ!……あぁ、いや…しかし……お膝抱っこ……」
ガンダロフは真っ赤に染まった顔を背けて、手で覆った。っていうか、本当に何があった?
確かに剣を出現させた時は、すごく力を持っていかれたって感覚はあった。私は両手の平を眺め、ガンダロフの腰にある剣を見た。『御用?出番?何でもやるよ?』とウキウキしながら言ってる感じがする。『また今度。その時はよろしく!』と返しておく。
さて、ガンダロフはまだ復活しないようなので、力をこっそり使ってみる。扉の向こう側がどうなっているのか、どのようなモノが、特に敵対的勢力が存在しているのか探っていく感じ。『探索』というものになるのかな。目を閉じて意識を自分の外側に、部屋の隅々に、扉の向こう側に向けていく。
……この部屋にはやはり私と彼以外の存在は確認できない。利用可能な道具はそこかしこに点々とあるのだけど、拾って選別は後日ということで。扉の向こう側は6畳程の小部屋、その先に上り階段。薄暗いけど灯りが点っていて、甲冑?の塊が2つ。階段を上がっていく。かろうじて足元が見える程度の明るさ。結構上がるなぁ、小学校の校舎3階分よりも少しある。上がった先はまた6畳程の小部屋で──
「ロト」
お、ガンダロフ復活。私が飛ばないように?腕は掴んだまま。私は目を開いて彼を見上げる。不安げな表情がじわじわと赤くなっていく。いやもうそれはいいって。
読了、ありがとうございます。
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本日は3話投稿します。
これは1/3話です。
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