表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生魔神は陽気に歌う  作者: まちどり
13/247

13.お手々の皺と皺を


 スーツ姿の出っ歯のおじさんがひょろっひょろっと踊っている。

 ♪幸せ~って……


「なんだっけ?」


「お、目が覚めたか?」

 厳つい顔のお兄さんに覗き込まれてちょっとびっくり。誰だっけ?そして目覚めた時に『見慣れない天井がある』というのは、仰向けに寝ている時だけなんだな。横向きでも景色が見慣れないことに変わりはないけど。


 お兄さんの大きな手が頬に掛かった髪を払う。甘酸っぱい美味しい香りがふわっと漂う。これは……

「美味しい温州ミカンの酸っぱ味が強いの」


「うんしゅう…はわからんが、お腹が空いているんだな」

「……おはよ?」


 お兄さんことガンダロフは、呆れつつも優しく頭を撫でてくれる。思い出した。お姫様抱っこでドナドナの途中で眠ったらしい。


「じゃあ、夢の中での邂逅、とか言うと格好良すぎか」

「何か夢に出てきたのか?」

「魔神ちゃん改め分身体さん。私と混ざる予定だったと言ってたから、今は違うのかな」


 よいしょと身体を起こすと、心配そうに眉が垂れてるガンダロフと目が合う。


「好きにやって良し。人間共は気にするなって」

「好きにやって良し?」

「私とガンダロフがこの世界で幸せに過ごしてくれればそれでいいって。倫理観とかは任せる、だっけ」


「なんだそれは……分身体とはアレか。放任も度が過ぎないか?」

「『アレ』呼ばわりはなんか悲しいな。たぶん私の一部だよ。混ざってないだけで」


 そして放任は私の両親の十八番だ。慣れてる。ガンダロフは

「そうか……そうだな。済まなかった」

と項垂れた。彼にとって私と分身体さんは全くの別物のようだ。確かに現状はそうなのだけど。


 私はベッドから降りて窓際から外を見る。明るい青空、お昼前か後か……お腹の減り具合からすると、後だな。おやつ食べたい。


「『幸せ』に過ごす。『幸せ』って」


 お手々の皺と皺を合わせて、南~無~と誰とも無く拝んでみた。お手々の節と節を合わせてっていうのもあったかな。と軽く現実逃避していたら、合わせた両手を挟み包むようにガンダロフが両手を重ねてきた。暖かい。甘い花の香りが漂う。


「ガンダロフの『幸せ』は?」

「今、手の中にある」


 即答、凄いな。で、顔、真っ赤。私も釣られて顔が熱くなっていく。


「じゃあ、無くさないようにお互い気を付けようね」


 彼は大きく目を開いた。瞼、無くなっちゃった。と思うのと同時に抱き締められた。息が出来ない程ではないから加減はしているのね。身動きとれないけど。身体が熱い。お腹の奥が熱くぐるぐるしてきて、空腹と相まって少しキモチワルイかも。甘い香りが濃くなってくる。


「ずっと一緒にいる」


 願望ではなく決意に聞こえる。


「俺は今までの人生で、こんなにも幸せな気持ちを味わっているのが初めてなんじゃないか、ってくらい、今、とても幸せなんだ」

 ガンダルフが、熱い。

「アスタロトに出会えて、良かった。ありがとう」


 涙声っぽく聞こえるのは気のせい?で、釣られて私の身体も熱くなってくる。ただ、


 お腹空いたなぁ。


「ガンダロフ」

 上目遣いになるよね、この距離。


「私もガンダロフに出会えて、良かったと思う。ありがとう。これからもよろしくお願いします。それはそうとお腹が」

 空きました、と続ける前に抱き締められた。一気に言って空腹状態を伝えたかったのに。


 あぁでも、ガンダロフのこれは幸せのオーラとかいうモノなの?嬉しさ大爆発!って感じ。小心者の私には水を差すような真似は出来ないなぁ。かといって同調する訳でもなく。彼と私のこの温度差にちょっと引いてしまうし、申し訳なく思うし、切なくなってくるのは、偏に空腹の所為か。


 少し落ち着いたかな?背中に手を回してポンポンと優しく叩く。ガンダロフは拘束を緩めて小声で

「すまない」

と言うと、片手で口を覆って横を向いた。彼も私との温度差に何か思うことはあるのだろう。


 でも自分の思いを押し付けることも無く私が思うことしたいことを聞いてくれる。たまに思いが暴走して抱き締められるけど、うん、いい男だな、ガンダロフ。……調子に乗って甘えすぎないように気を付けなきゃ。


「お昼はちゃんと食べた?」

 彼の背中に回した手を下ろしながら聞く。


「朝のスープはもうそんなに残っていなかったから、物足りなかったんじゃない?」

「いや、充分満足した。…朝は食べ過ぎたんだ、凄く美味しかったから」


 まだ少し顔に赤みが残っているけど、普通に受け答え出来るまでに落ち着いたかな。


「そっか、それは良かった。じゃあ、私お腹空いたから、晩ご飯の仕込みをしつつ何か食べよう」




 ということで二人で台所に行ったらば、なんと!玉子が!調理台の上で立って待っておりました!


「え?玉子?何で立ってるの?凄い!」


 まるでハンプティ・ダンプティ!そしてガンダロフは苦笑い。うん、一番に指摘するのはそこじゃないよね、たぶん。


「で、何で玉子がここにあるの?」


「鶏小屋を掃除した時に見つけた」

と笑顔で報告。


「お掃除してくれたんだ、ありがとう!」


「厩舎も出来る限り綺麗にはしたんだが、血痕がどうしても残ってしまって。血の臭いがすると落ち着かないだろうから、馬はまだテントにそのまま置いている。まぁ、繋いでいないから別の場所を彷徨いているかもしれんが」


「栗毛ちゃん、身重だものね。早く落ち着く場所を調えて、安心して出産に挑んで欲しいな」

「あぁ、無事に元気な仔馬を産んでもらいたいな」


 で、玉子、どう料理する?


「玉子焼き、目玉焼き、オムレツ、ゆで玉子。フライパンは作れるけど、油が調達出来ないから無難にゆで玉子か」


 と、ここまで考えて、ふと思う。これ、ガンダロフの玉子だよ。しかも1個きり。私が調理して一緒に食べるとばかりに思ってたけど、それって厚かましい。


「?どうした?料理するのは難しいか?」

 ガンダロフが聞いてくる。眉毛が八の字。


「ううん、ガンダロフはどういう風に食べたいの?」


 彼は少し考えて

「いや、玉子なんて滅多に口にできなかったから、思い付かない」

と首を振る。


「ロトが美味しいと思う食べ方で食べてくれ」


「『食べてくれ』?それって私も食べていいの?」


「元より、君が美味しそうに食べる姿が見たくて持ってきたんだ。是非、食べて欲しい」


 嬉しい!玉子もそうだけど、私が美味しそうに食べる姿が見たいって、その気持ちが嬉しい!たとえ餌付けの一環だとしても。


「ありがとう!頑張って考えるから、一緒に食べようね!」


 素でピカピカの笑顔で答えた自覚はある。が、今の私は顔面偏差値がもの凄く高いという認識はあまり無い。かくてガンダロフは瞬間的に茹だった?ってくらい顔が真っ赤になり、両手で顔を覆って背を向けてしまった。不意打ち食らわせた感じ?ブツブツと呟いてはいるけどその内元に戻るだろうから、そっとしておこう。




 先ずは戦闘服エプロンを着用して、朝と同じ具だくさんスープを作る。頭の中では木琴が夜9時お馴染みの軽快な曲を奏でている。揃えた材料を洗って皮剝いて切って鍋に入れて水張って弱火で煮る。簡単だね。


 玉子は食べる前、温め直す時に火を止める前に割って入れて、半熟より硬いくらいで半分こだ。さて、味見と称してつまみ食いだ。♪あ~ぶくたった~煮え立った~……。


 と、ガンダロフ、復活してた。私の方を目を細めて楽しそうに見てる。小皿とフォークを2つ用意して、芋(里芋っぽい)を載せて彼に渡した。


「味見、どうぞ。熱いから火傷に気を付けてね」


 彼は少しびっくりして

「俺も?いいの?」

と言いつつ受け取った。


「調味料を使ってないのと、まだ味が染みてないから超薄味だと思う」

と、自分の芋をフォークで半分に割る。猫舌と言うほどではないけど、熱いの苦手だもの。


 読了、ありがとうございます。

 <(_ _)>

 続きが気になる、面白い、と思われた方は是非スクロールバーを下げていった先にある広告下の☆☆☆☆☆に評価やブックマーク、いいね感想等をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ