表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ドールハウスにこびとが住んでいる

作者: 柚子桃しずく

子供のころのことって、ほとんど忘れているよね。

印象深いことだけが残っている。

その中のひとつがドールハウスである。


――――


「ママ~これで遊んでもいい?」

「え? ん~いいよ。大事に遊んでね」


そういって母からもらったものはドールハウスだった。

結構古いドールハウスだ。

母に聞くと、母のお母さん、つまりわたしのおばあちゃんにもらったものらしい。


ドールハウスにはキッチンがあり、食器棚もちゃんとあります。

テーブルにいす、なんと暖炉まであるのです。

しかもかなりクオリティーが高い。

2階には机とベッド、2段ベッドまであった。

本棚もちゃんとあり、なかには本も入っていた。

そこに、ウサギの家族がいたのです。

お父さんウサギ、お母さんウサギ、お姉さんウサギに妹ウサギ。

さらに、双子の赤ちゃんウサギの5人家族のようです。

わたしはこのドールハウスで遊ぶのが好きだった。

毎日のように遊んでいた。

でも、母に必ずいわれていたことがあった。

それは、遊び終わったら必ずドールハウスは片づけるということでした。

まあ、当たり前です。

遊んだら片づけるはあたりまえ。

だから、片づけないでいると怒られていた。

しつけだ。

ある日、祖父が遊びにきた。

なんと、ドールハウスのテーブルといす、滑り台にベンチと木で作って色も塗ってもってきてくれた。


「ありがとう、おじいちゃん」


祖父は手先が器用だった。

かなりの出来栄えだ。


家具が充実してたくさん遊んだ。

ひとりで家族ごっこをして遊んだ。


――――


そんなわたしが大人になり、社会人になった。

アパートの2階で、一人暮らしをしている。

毎日、会社に行きほとんど家にいない。

あわただしい毎日を過ごしていた。


そんなある日、久しぶりの休みの日。

めずらしく家でゆっくりしていた。


ふと、コーヒーの香りがした。

ん?

コーヒーの香り?

気のせい?

わたしいれてないし、下のうちかな?


クンクン!


香りのする方にいってみた。

ドールハウスの中からする?


ドールハウスは大事に飾っていた。

遊びはしないが引っ越しでもってきた。

そして飾ってある。

少しほこりがかぶっている。

でも、なんでこの中からコーヒーの香りがするの?


わたしは、不思議に感じた。

まあ、たまたまだろうとその日は気にもとめなかった。


しかし、その日の夜。

小さな音で目が覚めた。


ん?

今のなんの音?


ほんとにかすかに聞こえたちいさな音だった。

でもその後、何も聞こえなかった。


なんだったんだろう。

気にせず寝た。


次の日、ドールハウスの中を見るとハウス内の配置が少しかわっていた。


え?

いすここじゃなくてこっちに置いたはずなんだけど……。


なにか。違和感を感じていた。


あ、時間がない!

会社に行かないと。

急いで会社にいった。


――――


ふぅ~

今日も疲れた。


わたしはベッドに横になり寝た。

すると、夜中に目があいてしまった。

ふと、ハウスに目を向けた。


すると!

だれかいる!

動いている!

だれ?

こびと?


わたしは、驚いた。

でもここで声をあげたら、どうなるかわからない。

見て見ぬふりをした。


今のなに?

こびとだよね。

いつからここに?


そんなことを思っていたら朝になってしまった。


あ~眠れなかった~


ハウス内をみた。

こびとの姿はない。


ベッドの布団がよごれているのが目に入った。

手洗いをして干した。


そして、会社にいった。


――――


会社からもどり、布団をドールハウスのベッドにもどした。


その夜、寝たふりをしてみていた。


すると、やはりこびとがいた。

こびとは綺麗になった布団をみて、とまどっているようだった。


ふふっ。


ふと、このこびとはひとりなのか気になった。

みているかぎりひとりのようだ。

だって、ウサギの家族と会話をしているようだった。


このこびとさん、もしかしてずっとひとりなの~

このウサギさん家族が家族なのだろうか。

そんなことを思って、かわいそうになった。


わたしはあんなにこどものころに遊んでいたのに、いまでは忘れて飾っているだけ。

ほこりもかぶってかわいそう。


こびとさんがいすに座りコーヒーを飲んでいた。

となりのいすにウサギさんのお母さんが座っている。

ふたりでコーヒーを飲みながら、子供たちの話でもしているように見えた。

すごく楽しそうだ。



――――


次の日、母に聞いてみた。


「ねえ、おかあさん」

「なに?」

「ドールハウス覚えてる?」

「もちろん」

「あのドールハウスってもしかして、こびと住んでる?」

「ゆきちゃんもみたの?」

「え? ……もってなに?」

「お母さんもこどものときみたんだよ」

「そうなの?」

「まだ、いるんだねぇ」

「そうみたい」

「よかった~」

「何が?」

「まだいるってことはドールハウス大切にしてくれてるってことよね」

「うん、まあ」

「大事にしてね。あの、こびとさんの家だから」

「うん」


わたしは、ドールハウスの手入れをした。

ピカピカになった。


これでこびとさん喜ぶだろう。

そして、わたしはリスのお友達も椅子に座らせてあげた。

これでまた、コーヒーを飲みながらお話しができるね。


わたしはこびとさんに気づかれないように、ドールハウスを綺麗にした。

あるときは、布団を干した。

ドアが壊れたら修理した。


わたしのこどもにも、このドールハウスで遊ばせようと思う。

遊んだら、しっかりお片付けをしようね。

こびとさんの大事なお家だから。

最後までご覧いただきありがとうございました。

もしかしたら、あなたの家にも受け継がれているものがあるのかもしれない。

忘れているなら思い出して。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] すごく可愛いお話しですね。 ほっこりしました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ