第十四話 説明
「えと、この『特殊地下構築物攻略課』はですね、えっと、世間で今話題になっている『特殊地下構築物』、つまりダンジョンですね。えー、その『特殊地下構築物』の攻略がですね、うちの課の目標になっていますね!」
私たち二人は割り当てられたデスクに座って八千代さんの話を聞く。すると、
「一つ質問。」
と、ピンク......いや、少し白い。薄ピンクというわけではなく髪の根元部分が白くなっている。桃の色だ。
その桃色の髪の女性、五十嵐さんは、手を上げていった。
「八千代課長の年齢は?」
ん?今それを聞く必要があるだろうか?
「う......えっと、14です......」
「もう一つ質問、なんで14歳の子供が課長なんて職に就いてる?」
ああ......確かに妙だ。いかにステータスを持っているとしても、課長なんて職に付けるとは思えない。一体どういうことなのか。
「あ......その......」
「うーん、それは色々あってねえ。」
そこで、秘書の優希さんが出てきた。
「桜ちゃん......八千代課長は、元々『特殊害獣対策課』で仕事してたんだけどね?その時の仕事でちょっとやばいのに出くわしちゃって......そのやばいの関連で、ダンジョンが発生しちゃったってことで上は見てるから、その責任取りのためにこの『特攻課』の課長にされたのよねー。」
なんか色々黒い事情があるようだ......うん、ちょっと待てよ?
私は八千代さん......八千代課長の姿をまじまじと見る。そして気がつく。
あ、この子皐月モードで出会ったあの女子中学生じゃん。
なるほど、つまり八千代課長は私が色々やった結果課長を押しつけられたと......うん?これ大体私のせいか?
「ならばもう一つ質問、なぜ優希課長秘書はこの課にいる?」
「あっ、それはね!八千代課長がこっちにいくってなった時にちょっと怒っちゃって、それで別に『特対課』にいる必要もないからこっちに来ちゃったのよ〜♪」
ずかずかと踏み込む五十嵐さんに、優希課長秘書はほんわかと答える。でもまってほしい。確かダンジョンができたのは昨日の話じゃなかったか?行動が早すぎないか優希課長秘書?
「成程、ならこれからいくつか質問する。答えられることだけでいいから答えて。」
「了解〜。」
そして二人の質疑応答が始まった。私と美幸、八千代課長は置いてけぼりだ。
「まず、ダンジョンは現在幾つ見つかっている?」
「えーっと、確か34個ね。でもまだまだ増えると思うわよ?」
多い、ダンジョンの数が本当に多いと思う。中から魔物が溢れたらどうするのだろう?
「ここから最寄りのダンジョンは?」
「新宿駅に出現したやつね。それ以外は都外にあるから、ちょっと遠くなるわね。」
......結構近いところにあるな。もし溢れたらかなり危険だぞ?
「先程『特殊害獣対策課』という呼称があったが、それはつまり魔物がダンジョンが出現する前からいたということ?」
「まあ、そうね。大抵は『特対課』が処理していたけど、それでも間に合わなかったやつや逆にこっちがやられちゃうケースはあったわ。」
「今まで襲われなくてよかったねー、紗綾香」
「あーうん、そうだね美幸。」
私はアップデート前からいたし私自身魔物なのでわかっていたが、確かにアップデート後から参加した(であろう)美幸からしてみればそうかもしれない。
「どうやって私たちがステータスを手に入れたと判別している?」
お、これは私も知りたい奴だ。
「ごめんなさいね、それは私も詳しくは知らないのよ。」
まあ、予想していなかったわけではない。少なくともそうかもしれないと思っていた。
「嘘。」
しかし五十嵐さんはそう言った。
「私には〔心情察知〕という汎用スキルがある。これを使えば簡単な嘘くらいは見分けられる。ごまかしや隠し事には効かないし、嘘で何を隠しているかは分からない。けれど『私も詳しくは知らない』の部分は嘘だった。」
おお!?これは結構すごいスキルだ。いや、待てよ?これってつまり、私がステータスを公開した時まずいことになる......?いや、大丈夫だ。〔偽装〕の力を信じよう!
「え?紗枝さんあれどういう仕組みか知ってたんですか?私何も知らないんですけど。」
八千代課長が言う。五十嵐さんの方を見るが特に反応しなかったので、恐らく本当なのだろう。
「ごめんなさいね、桜ちゃん。まあ、確かに今のは嘘よ。ステータスを手に入れた人は魔力が少なからず出るわ。それを元に勧誘してるの。」
「なぜ隠していた?」
「あらあら、私の嘘を見抜くために〔心情察知〕を使っていた貴女が言うの?」
バチバチと二人の間で散る火花を幻視する。間の八千代課長はオロオロしてる。
「まあ簡単に言えばうちの課......というか、魔物関連の仕事は企業スパイとか野心家とかよくいるのよ。だからそれの警戒よ。安心してちょうだい?」
「どうすれば信用される?」
「うーん、そうねぇ......」
すると優希課長秘書は手招きする。五十嵐さんは警戒しながらも近づいていく。
「志野さんと澤田さんもいらっしゃい?」
そう言われたので近づいていく。
すると優希課長秘書は私たちの肩を順番に叩いていった。
(これでいいかしら?)
「「「!?」」」
そして、頭の中に声が響いた。コイツ、直接脳内に......!
(ふふふ、ノリが良くて助かるわ。)
(あ、今の聞こえてたんですか。そうですか。)
(紗綾香ー、今の「コイツ直接脳内に」ってなんのノリなの〜?)
(澤田さん。また後で詳しくあた......私の方から教えてあげますから、今は置いておいてください)
(......成程。これはいい。)
「と、まあこれが私の〔伝心〕スキルなのよ〜。」
これは......強力なスキルだ。そう私は思った。
「これを使って私たちの心を見張る、それで合ってる?」
「ええ、その通りよ。大体一週間ぐらい見させてもらうわ。貴女たちもそれでいいわよね?」
私たちはうなずく。一週間なら全然大丈夫だ。
「それが終わったら、パッシブからアクティブ......つまり、一日中から能動的な念話に切り替えるから、よろしくね?」
「了解、これ以上特に質問はない。」
どうやら五十嵐さんは質問を終えたようだ。
「志野さんと澤田さんもないかしら?」
「あ、特にあるわけじゃないです。」
「私の方もおんなじでーす。」
すると、八千代課長と優希課長秘書は顔を見合わせ、同時に席を立つ。
「そ、それではこれから『特殊害獣対策用装備課』で、皆さんの装備を決めさせていただきます!」