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屍少女は何になる  作者: 島原流星群
第一章 屍生・狩猟・変革
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閑話 その3 夢幻

 

「ふぇ......?」


 洋館。洋館がそこにはあった。大きくて、屋敷みたい、というか屋敷そのもので、庭もあって、そして建物には蔓が這っている。


 そんな洋館を見て、私は呆然としていた。


「って、ボーっとしてる場合じゃない。早く家に帰らなきゃ......!」


 そう思い、何処かに出口はないかと———


「うん......?出口?」


 何故私は出口と思ったのだろう?そう思ってみると、洋館の周りには不思議な壁があった。


 色は蜂蜜色で、ムラはなく均一だ。しかし壁があるということは室内で、つまり室内に草原と洋館があるという入れ子人形じみた状態になっていると考えるべきだ。


「いや、待てよ......?」


 確か、ここに来る前に私は〔錬金空間〕という技能のアクティブ化のYESボタンを押していた筈だ。そう思い、能力画面を呼び出し、もう一度〔錬金空間〕を触ってみる。


 <〔錬金空間〕調合系職業が持つスキル。錬金道具の揃った空間を内包する。


 〔錬金空間〕をノンアクティブ化しますか?

 YES/NO             >


 やっぱり。どうやらここは〔錬金空間〕で作られた空間らしい。私は即座にNOを押して元の世界に帰った。


「ふぅ。」


 焦った。もしあのままずっとあそこにいたら恐らく私は紗綾香に会うことができなさすぎて発狂死していただろう。しかし......


「すごかった......!」


 別の空間を作る。魔法どころか神の奇跡の部類ですらあるものを見せられて私は色めき立っていた。


 もう一度あそこに行きたい。そう思うがもう寝る時間だ。


 そして私はベッドに潜った。



 §



 腕が痛い。胸も痛い。どこもかしこも痛くて仕方がない。


「———、——、———。」

「—、——。」


 何か言っている。なんだ。何を言っているんだ?一体何を言われている?ただ、恐ろしいことを言われている。


「——バ———、———。」

「大罪———、——よ!」


 蹴られた。痛い。痛い痛い痛い。


「......」


 私は何か言った。何を言った?何か大切なものの名前を言ったんだ。それなんだった?


「——誰———?」

「知———、ヤ——。」


 その瞬間、


 私の中に尋常ではない程の嫌悪感と怒りが生まれた。



「ッ!ハァッ......!ハァ......」


 私は夢から覚めた。......酷い夢だった。


 あまりにも現実味があった夢だったと記憶している。だが、それがなんなのかはもう忘れてしまった。



 そのあと、私は学校に登校した。


「おっはよ〜紗綾香。」

「おはよう美幸。」


 私は紗綾香に挨拶する。紗綾香はこっちの顔を見ながらにっこりと笑っている。


「ん〜どうしたの?私の顔を見ながらニマニマしてさ〜?」

「いや......別に何かあるわけじゃ......」


 やっぱり、何か隠している。ただ一つだけ違うのは、私も同じく隠し事があるということだ。


 私はふと、紗綾香になら言ってしまってもいいのではないか?と思った。そもそも隠す必要のあるものではない。そう思い、私は紗綾香に昨日起きた不思議な現象を伝え———


「ん〜?ほんとかな〜?」

「ほんとだってば......!もう、美幸ったら。」


 うん、やっぱり無理。私は意気地無しだから、もしこんなこと言って紗綾香が私のことを違う視線で見てきたら耐えられない。だから言わない。


 この気持ちは、このまま留めておけばいい。



 §



「ただいまー。......?」


 学校から帰ってきた私は、玄関に靴が一人分多いことに気づく。


「あ、おかえりなさい。美幸、ちょっと役所の方からあんたにお客さんが来てるわよ?何か心当たりある?」


 ......役所?お母さんが言ったことを反芻するがどうにも心当たりがない。そのまま私は役所の人が待っているというリビングに向かった。


「あ、美幸さんですか!どうもどうも、本日はお忙しいところお邪魔して申し訳ございません!いやあのですね、少々お尋ねしたいこととご提案がございまして!そちらのお話をさせていただきたいのですよ!あ、どうぞどうぞ!学校帰りでお疲れでしょう?ささ、どうぞおかけになってください!あ、お母様は申し訳ございませんが席を外していただければと存じます!いや、何も騙そうってわけじゃなくてですね!色々込み入った話をしたいのですが何分余人に聞かれると少しばかり不都合のある話でして!いやーほんと申し訳ない!それではお母様の方はご退室いただくということで!いやーありがとうございます!」


 そう早口で捲し立てる燕尾服を着た男を見て、「胡散臭......」と私は思わず小さくではあるが口にしてしまった。



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