第1話 Sur la montagne
「おっ!あるんじゃん、ラッキー!」
ガレキに手をつっこみながら漁る男は薄汚い格好で無精ヒゲを生やしたおじさんがいた。
口にはくわえタバコをしたままだが、そのタバコはもう燃え尽きた後で意味もなくくわえている。
「よっと!!」
ガレキの中から謎のカタマリをとりだし汚れを落としながらカバンにいれる。
「あー、そろそろ行くか」
ガレキの山の上で夕焼けを眺めながらカバンを持って立ち上がり、田中太郎は歩き出した。
暗い道を歩く田中は、薄暗い路地の待ち合わせ場所に向かっていた。
待ち合わせ場所に指定されていた場所に行くと一人の男がそこに待っていた。
男「・・・」
田「よお!」
田中は男に声をかけると田中に気づいた男は田中に近づいてきて2歩ぐらいの所でピタリと止まりこちらを睨めつけながら口を開いた。
男「例のブツをよこせ」
田「・・・」
男「?」
田「ん~その前にそれなりのモノをもらわないと」
男「チッ、わかったよ」
男は持っているケースを開け、金が入っていることを見せる。
それを田中は受け取り偽物ではないかと1つだして偽札じゃないことを確かめケースの中にしまう。
田「はい、結構」
男「お、おい!例のブツを渡せよ!!」
田「はいはい、そう急ぐなって」
ポイッと男に投げ渡すと突然投げられたモノをワタワタとしながらキャッチする。
男「へへっ・・・ん?」
投げられたモノを眺めるがもらうハズのモノと明らかに違うことが分かる
男が田中の方を見ると、そこに先程いたはずの田中が忽然といなくなっていた。
男「アイツ・・・!ダマしたな!!」
男から騙し取ったケースを抱えながら田中は薄暗い路地を走る
田「はははっ!」
男2「オイ!止まりやがれ!!」
さっきの男の仲間がどこかに隠れてたようで、見つかってしまい追いかけられてしまう。
田「お!他にもいたのか!」
廃ビルだらけが建ち並ぶ間の路地で男達と田中は走り回っている。
田「ヤベー、結構いるじゃん」
後ろから追いかけてくる男達が4人ぐらいいる。
男2「待て、このやろう!」
男3「逃がすな!」
田中が走っているとその先にフードをかぶった子供が遠くに見つけた。
丁度曲がり角と隠れやすそうな凹みを見つけ全速力でそこまで走りきる。
田「ちょっとかくまってくれ」
フード「え」
フードの子供にそう言いながら、凹みに入り隠れる田中。
その後ろから息を切らしながらも追いかける男達がやってくる。
男「おい!今ここに眼帯の男が来なかったか!?」
フード「え、あ、ああ。あっちに行ったけど・・・」
男「行くぞ!あいつを逃がすな!」
男達は見当違いの方向に走り出し、足音が遠ざかり静かになると田中は凹みから顔をだして周りを見る。
男達がいないことを確かめると田中は凹みからでてきて、フードの子供の頭に手を置いた。
田「あーりがとな!」
フード「え、あ、いや・・・」
「というか、なんで追われてるの?」
田「んー」
「ウソついちゃったからカナ!☆」
フード「ダメじゃん」
田「まぁまぁ!ここらじゃ日常茶飯事ってもんよ!」
フード「・・・」
男「おい!!こっちにいたぞ!!」
そんな言い合いをしているとさっきの男達が戻ってきてしまったようで見つかってしまった。
田「あ、やべ」
男2「あのフードもグルか!」
フード「え、ウソ、違っ!」
男3「あのフードもアイツの仲間だ!捕まえろ!」
フード「えっ、だから違うって!」
田「あはは!すまんな!」
フード「笑い事じゃすまないよ!」
田「まぁまぁ、とにかく逃げるぞ!」
田中が走り出し、その後ろを慌ててフードの子供も追いかける。
そのまた後ろからも男達が数人追う形となった。
田中とフードの子供は廃ビルの中へと入り込みホコリやゴミを蹴飛ばしながら走って逃げていく。
フード「おい!このままじゃ袋小路だぞ!!」
このまま進んでいくと廃ビルの屋上で明らかに逃げ場なんてないとことがわかる。
田「大丈夫!ついてきて!!」
田中が走りながらも顔だけフードの子供の方を向きニカッと笑うが、フードの子供は怪訝な顔してそれを見つめた
屋上につくと田中は準備運動を始めたのでフードの子供は呆れていた。
フード「は?そんなことしてる場合じゃn」
田「行くぞ」
フード「え」
田「とお!!」
フード「は!!?」
田中は隣にある廃ビルに飛び移る
田「おーい!君もこいよ!」
フード「そ、そんなこと言っても!」
ビルとビルの間は大体人2分の距離でフードの子供は唾をのみこみながらビルの下を見る
男「おい!こっちにいるぞ!」
フード「くそっ!」
フードの子供は意を決して隣のビルに助走をつけて飛び移った
無事、隣のビルに飛び移つることができ、腰が抜けヒザをついていると後ろから男達がそこまできていた。
フード「ちょっ!今腰がぬけて・・!!」
田「ちょっと、ごめんよっと!!」
フード「え!!?」
田中は腰がぬけているフードの子供を米俵みたいに担ぎ上げて走り出した。
子供一人抱えながらビルとビルの屋上の間を飛び移り渡り走り、そして飛び降りた。
フード「え」
フード「うわああああ!!!!」
田「うっ!」
フード「ぶっ!」
下には運良く沢山のゴミ袋が積み上げられていてそこに着地した。
フード「し・・・死ぬかと思った・・・」
田「ははは!!」
フード「わ、笑い事じゃねえよ!!!!」
田「・・・っと、そうだな、行くぞ!」
フード「は」
田中がそう言うとまたフードの子供を抱えて走り出した。
上から男達が何か言っているがその声がどんどん遠ざかり、やがて人通りがあるここらへんでは大通りと呼ばれる所でフードの子供を下ろした。
田「ここまでくれば大丈夫だろ」
「そんじゃあな!巻き込んですまなかったな!」
フード「は、ほんとにな!・・・ってもういないじゃん・・・」
田中はいつの間にか人ごみにまぎれてどこかに消えていた。
《数多くある廃ビルの中の一つ、とある事務所にて》
田「サリーちゃあああん!たっだいまあ~~~!」
ボロボロの事務所のドアをすごい音をたてながら開け自分より小さなサリーにとびつく田中太郎
サ「たなか」
「田中、おい。」
田「ん~!やっぱ今日もバリ可愛い~!俺の結い上げスキルあがちゃってるもんね~!」
「それもサリーちゃんの土台がとてもいいからこそなんだけどね~!」
サ「田中」
田「ん?何、サリーちゃん?」
サ「くさい、はなれて」
田「えっ・・・・・・」
ぱっとサリーから手を離し距離をとりながら自分の服をクンクンと嗅ぐ田中
田「まじで・・・?」
サ「ウソ」
田「も~!サリーちゃんったらぁ~!」
ウフフと小指をたてながら気持ち悪い仕草でクネクネする田中を横目にサリーは田中の頬を両手で挟んで事務所の来客用の椅子の方に視線を向けさせる。
田「ん?どうした・・・」
そちらを見るとフードを被った先程巻き込んでしまったフードの子供が座っていた。
田「あ!さっきのフードの子!」
フード「・・・どうも」
田中は人の良さそうな笑みを浮かべながら近くにあったボロボロの椅子を引き寄せて子供の向かい側に座った。
サ「何、田中の知り合いなの?」
サリーが田中に近づきフードの子の方に視線を向ける
田「ん?いやさっきね」
「・・・」
田中はアゴに手を添え片眉をあげて喋るが途中言葉がとまる。
サリーはそんな田中に目を細め、ジロッと睨んだ。
サ「田中?もしかして迷惑かけt「かけてない!かけてない!!」
田中は来客用の椅子に座っているフードの子供の方へ逃げて肩を抱く。
田「な!なにもないよな!たださっきちょっと喋っただけだよな!」
フード「え、ちょ、ちょっと!(めちゃ力強っ)」
フードの子供は田中から離れようと体をよじるが力だ強くビクともしない田中にびびり観念する。
フード「そ、そうです・・・」
「さっき少し喋った程度です・・・」
サ「・・・」
田「な!」
サ「・・・」
フ「・・・」
田「サリーちゃあん・・・」
サ「ま、いいわ・・・」
興味をなくしたのかサリーは田中達から離れガラクタいじりをしに自分の机の方に行った。
田「・・・はぁ」
フ「あの・・・もう離してください」
田「あぁ、すまんすまん」
「で。何の用だ」
フ「・・・その」
田「うん」
フ「人を・・・探して欲しいんです」
田「人。探しね」
「どうしてここで頼もうと?」
フ「こ、ここなら見つけてくれるって言ってる人がいて・・・」
「大した報酬なしでもいいって」
田「ふーん」
フ「ダメなら他をあたr「いいよ」
フ「え」
田「さっきのこともあるし、まけといてやるよ」
フ「ほ、ほんとに!!?」
田「ほんと、ほんと人助けもたまにはいい」
フ「たまに?」
田「あ、すまんすまんなんでもないよ」
「で。その前にお互い自己紹介をしようか」
「俺は田中太郎、覚えやすいだろ?」
フ「えっと、私ハ、むつみ・・・むつみです」
田「むつみか、よろしくな!」
そんで・・・割愛すると
田「弟が、攫われたと・・・」
む「はい・・・」
田「この街じゃよくある話だな。窃盗、誘拐、殺人なんでもござれってな」
フ「・・・」
田「うんうん。じゃあ急いだ方がいいな!」
「行くぞ、むつみ」
フ「えっ?」
田中は立ち上がり、むつみの腕をつかんで立たせる
田「サリィちゃあん!行ってきまぁーす!!」
サ「(無言で手を振る)」
む「ちょっ!」
ニカッと笑う田中はむつみの手を握り事務所のドアからでていった。
そして田中達が今いる所は曇った空の下、霧がかかっているこの辺りじゃ一番盛んなメインストリートとなっている大通りを2人で歩いている。
むつみは田中に繋がれた手を眺めながら遠慮がちに口を開いた。
む「あ、あの手・・・」
田「ん?あぁ嫌か?」
む「その、えっと・・・嫌ではないけど」
田「嫌じゃないなら大丈夫だな!」
「あ。そだ、むつみ今から行く場所なんだが治安がめちゃ悪だから絶対離れるなよ!」
む「え」
田中はむつみの手を引きながら狭い道を通ったり歓楽街らしき場所では田中は女の人に手を振っていた。
そうこうしているうちに目的である酒場らしき廃ビルの前までくると入り口辺りに一人の女性が立っており身なりから、そこらへんの娼婦と似たような格好をしており、田中達に気付いたのか声をかけてきた。
女「あ!田中じゃんか、久しぶりー!」
田「おー、セレナじゃないか!今日暇なのか?」
セ「ん~?ちょい休憩中ってところ~」
「てかアンタ何、最近顔見ないと思ったら子供こさえたの~?」
セレナはニヤニヤしながら、むつみを物珍しそうに見つめるが、むつみは田中の後ろに隠れる。
セ「あら、アタシってそんなに怖く見えるかしら?」
田「香水臭いから離れたんだろ、子供は敏感だからな」
セ「はあ?田中それまじで言ってる?きずつくなー」
田「すまん、すまん冗談だ」
セ「じゃあ、その鼻つまむのやめてくんない?」
田「ヌハハハハ!」
「ところでドッジィは中にいるのか?」
セ「ん?アイツならいつも通り奥で酒飲んでるよ」
「・・・てその子もこの中に連れてく気?」
田「そうだよ、この子は今回の依頼人だからな」
セ「ふーん・・・」
「そ。じゃあ気をつけなさいよ、お嬢ちゃん。ここら辺は特に危険だからさ」
田「・・・」
セ「なによ、田中その顔は」
田「やさしーんだな」
セ「子供だけよ、とっとと行きなさないな」
田「はいはい、ありがとう」
む「・・・」
廃ビルの扉に入っていくとジメジメとした肌にはりつくような空気に薄暗い空間だった。
照明はあるが、光がついてるものやついていないものもあり、形がどれも統一されていないもので後からつけたものや持ってきたものだとわかる。
お客は薄汚い男達が多く、入ってきた田中達を品定めするようにジロジロ見てくる。
むつみは不安になり、田中の服の端をにぎる。
田「大丈夫」
田中は少ししゃがみこんで、むつみと同じ目線になりニコリと笑いむつみを励まし、すぐに体制を戻すと田中は迷いなく奥の方の丸い4人掛けのテーブルに1人で座ってる男に近づいて適当な椅子にドカッと乱暴に座る。
田中は向かい側に座ってる男にそのまま声をかけた。
田「よぉ、ドッジィ景気はどうだ?」
ド「・・・」
田「おいおい、だんまりなんて俺とお前の仲じゃないか、仲良く会話の一つや二つしようぜ」
ド「・・・」
「あいも変わらずよく回る舌だな田中」
田「いやいや!お前ほどじゃないよ、ドッジさんよ」
ド「はっ!よく言う・・・で今回は何の用だ」
「オレぁは今賭け事に負けて機嫌が悪いんだ手短に頼むぞ」
田「おしゃべり(情報屋)なお前に聞きたいことがあるんだ」
「子供の誘拐や人身売買してるやつらに心当たりはないか?」
ド「・・・対価はあるのか?」
田「ないな!」
ド「ハァ・・・」
「じゃあ、そうだなその子供とこちらの情報を賭けてみるっていうのは?」
田「のった!」
む「え?」
田「大丈夫!安心して!」
ド「撤回はナシだぞ!」
田「おうよ!」
む「えっ!ちょっと、私の意志は!?」
田「俺が勝つからさ!」
む「いやいやいや!勝てるかわからないじゃない!」
ド「ははは!お嬢さんよ、ここにきてしまったのが運の尽きさ!」
む「た、たなかさん・・・」
田「ん!そんな顔しなさんな、大丈夫だよ!」
む「・・・」
不満な顔で田中を見るが田中はニカッと笑いむつみの頭にポンっと優しく手を置く。
ド「さぁさ!」
「今回はトランプでの簡単な勝負だ。」
「この中から1枚選んで大きい数字を出した方が勝ち。シンプルで猿でもわかるルールだ。」
むつみがフと周りを見ると田中とドッジィの座るテーブル周りに少しばかりギャラリーが集まっていた。
ドッジィはテーブルの上にどこからだしたのか、わからないトランプを均等に綺麗に並べていき田中を見る。
ド「さぁ、一枚選びな」
田「・・・」
「ドッジィ、お前からだ」
田中は無表情でドッジィを見つめる。
ド「・・・」
ドッジィは1枚トランプを引き「ダイヤの13」をひいたのをニヤニヤしながらこちらに見せてくる。
周りはザワつき、むつみは不安そうに田中を見上げる。
田中は無表情のままトランプに目を落としていたが、突然スッと手を動かし自分の顔の前にカードを持ってドッジィに見えるようにだした。
田中が引いたカードは「ジョーカーカード」だった。
ざわついていた周りが一瞬静かになり先程より、ざわつき声が大きくなる。
ド「・・・」
田「俺の勝ちだよな?」
さっきまで無表情だった田中がニコリと笑っていた。
ド「・・・田中」
田「ん?あぁ返すよ」
スッと田中はドッジィが何か言う前にジョーカーカードを返す。
ドッジィはそれを受け取りジッとそれを見ると、ため息をついてテーブルの上にあるカードをサッと片付ける。
ド「お前の勝ちだ。賭け事の商品だが・・・ついてこい」
「おら、お前らショーは終わったんだ。散れ散れ!」
ドッジは席を立ち周りにできたギャラリーに対して、そう言いながら裏口の方へ向かっていく。
田「ついてくぞ、むつみ」
む「う、うん」
ドッジィについていくと裏口の先は人一人通れる狭い道が入り組んだ所でドッジィは田中達の方を一瞥し「こっちだ」と言い、その言葉に素直に聞いてついていくとビルに囲まれた空き地についた。
ドッジィは廃材の上に座りタバコをとりだし口にくわえタバコに火をつける。
ド「んで。人身売買してるやつらだっけ?お前らが求めてる情報ってのは」
田「んーまぁ、そうだな」
むつみが田中の服の端をくいくいとひっぱる。
その顔には信用してもいいのか?と言ってるような不安そうな顔をしていた。
田「大丈夫さ、むつみ。こいつは俺が知ってる中で、ここらじゃ一番の情報屋だ」
ド「ははは!そんな買いかぶられちゃテキトーな情報は渡せねーな」
田「おいおい、テキトーなこと教えてもらわれちゃ、たまんねーよドッジィよぉ」
ド「ウッフフ、ハハハッ!それにさっきイカサマを黙ってもらったんだ、ちゃんとした情報を言うさ」
む「え?イカサマだったの!?」
田「ん、あぁ、むつみは気がつかなかったか。こいつもといドッジィはトランプに細工してたんだよ。自分にしか分からねーように一番大きな数字に痕をつけてな」
ド「んでコイツはイカサマに対してイカサマで返したんだよ」
む「へ?」
ド「俺の持ってるトランプには最強のカード「ジョーカーカード」なんて最初から入ってないんだよ」
そう言うドッジィはさっき使っていたトランプをむつみに見せる。
ド「こいつはよ、うまいこと俺らの視線を誤魔化してジョーカーカードを仕込んでおいたのさ」
ドッジィの着ている薄汚いコートの長袖のそで口からスライドしてでてきた田中のジョーカーカードをむつみに差し出す。
ド「裏を見てみな」
むつみは、それを受け取り裏を見てみると《トランプのウラにアトをつけたイカサマ》と書いてあることがわかった。
むつみは田中の方を見ると田中はニコッと笑い、むつみの手からスッとそのトランプを取るとライターをとりだしてジョーカーカードを燃やした。
ド「はははっ!してやられたよ」
ドッジィは近くの廃材に座り直すとボロボロのコートのポケットからペンと黄ばんだ紙をだし、何やら書き始める。
田「で。情報の方は?」
ド「まぁ、待て待てお前らも知ってるだろうがアイツらは昔から女子供中心に攫ってる。俺が知ってるのはアイツらの拠点と主に商いをしてる場所と・・・」
田「おっ、流石だな!」
ド「あとはそうだな、最近小綺麗なヤツらが変な動きをしてるってことぐらいだな」
「そいつらは子供中心に攫うショタ・ロリコン集団ってところだ」
田「・・・」
ド「ほら」
紙に何かを書き終えたドッジィは田中に紙を差し出して田中はそれを受け取る。
田「これは?」
ド「人身売買してるヤツらの拠点だ、俺の知ってる限りだがな。」
「あ~でも最近ヤツら何故だか減ってきてるんだ、もしかしたらそこにいないかもしれねーから空振りになるかもしれん。」
「あとはそうだな、そのお嬢ちゃんを連れていくことはオススメしないな、さっきみてーに俺みたいなヤツが攫おうと企もうとするかもしれねーから」
「女は・・・金になるからな」
田「ご忠告どうも」
ド「じゃあ、こんなところでいいだろ」
田「上出来だ」
ド「本当か?」
田「なんでだ?」
ド「さっきの賭けと釣り合わないじゃないか、女の子とただ人身売買してるヤツらの拠点の情報だ」
田「・・・」
ドッジィは田中と肩を組んで、むつみから数歩距離をとり田中の耳元でひそひそ声で言う
ド「お前もしかして俺を試しているのか?」
田「さぁな」
ド「・・・小綺麗な奴らは白衣を着て研究員みてーな格好をしてる、恐らく人体改造に関わってるやつらだ・・・こいつらは関わらない方が身のためだ」
田「なるほど、わかったよ」
ド「まぁ!俺の知ってる情報は今んところ、こんくらいだ!」
パッと田中から体を離しドッジィは田中達から背中を向ける。
ド「今度は対価をきちんと用意してくれよ、田中さんよ!おしゃべり屋(情報屋)をご贔屓に!」
田「あぁ、またな」
む「田中さん!」
田「ん?」
またメインストリートの方へと戻って来た田中とむつみであったが、むつみは田中に対して不満がつのっていた。
む「さっきはよくも私を賭け事の商品にしましたね!」
田「おお!元気だな、むつみ!」
む「誤魔化さないでください!」
田「あはは、すまんすまん!いやはやアイツと交渉するのはいいけど対価を用意しとくの忘れていてだな」
む「で」
田「そしたらまぁ!丁度いいところに、むつみがいてだな!」
む「だからって相談なしでいきなりやめてくださいよ!負けてたらどうしたんですか!?」
田「まぁまぁ!勝ったんだからイイじゃないか!」
「さぁ、時間がないぞ!弟を探しに行くぞ!」
田中はむつみの手を無理やり掴み走り出した。
む「えっ、ちょっと!」
そこから7件くらい人身売買を生業にしている場所に行ったがむつみの弟は見つからなかった。
むつみは劣悪な環境であり子供には刺激的な場所に休むことなく、ぶっ通しで連れ回したせいもあり顔色が明らかに良くなかった。
そして、田中達は今、昔公園だった廃れた場所の噴水があった所に腰をかけ休んでいた。
田中はむつみに水が入ったペットボトルを差し出しむつみは申し訳なそうにそれを受け取った。
む「あ、すいません・・・」
田「流石に子供にゃきついよな、でもお前しか弟の顔知らないから仕方がないんだ、どうにか気張ってくれ」
む「・・・はい」
いきなり田中は両手を合わせてパァンといい音を周りに響かせるとむつみにニカっと笑いながら話しかける。
田「でもま!」
田「今日は一旦やめにしよう!」
む「え・・・?」
田「もう疲れただろ、今日は休め。また明t」
む「だ、大丈夫です!私まだ動けます!」
田「・・・本当か?」
む「はい!」
田「・・・じゃあ、後1件行ったらもう今日はやめにしよう、な?」
む「は、はいっ!」
一口も口をつけていないペットボトルを噴水の所にむつみは置いて立ち上がる
それを田中は手にとりキャップを閉めてポケットに突っ込んだ。
この後もう一件人身売買を生業にしてる場所に行くのだが、ここでもむつみの弟は見つからなかった。
むつみの表情があからさまに暗くなり落ち込んでいることがわかる。足取りは疲れもあるのかフラフラと危ないので手を貸そうと田中がむつみに近づこうとすると突然むつみの近くに現れた謎の影がむつみを抱え上げ走り去ろうとする。
田「しまった!」
田中はその影をを慌てて追いかける。
あれは人さらいだ。見失ったらそれこそむつみ弟の二の舞となる。
田中は最短のルートを即座に考え出して人さらいとの距離を狭める。
直線ルートの一方通行の道に入りそこらへんに落ちていたコンクリートの塊を掴んでそれを思い切り人さらいの足、目掛けて投げると見事命中し人さらいは倒れ当たりどころが悪かったのか足を抱えてうずくまってもだえていた。
田「はぁはぁ・・・むつみちゃん大丈夫?」
田中は息を切らしながら呆然としているむつみに近づき手を差し出す
む「あ、はい・・・」
人さらい「この!!」
もだえていた人さらいだったがポケットナイフをだし刺そうと田中に襲いかかった。
が。田中は人さらいに足を足払いするように足蹴りをし、人さらいは体勢を崩してまた倒れてしまい丁度運悪く先程のコンクリートの塊に頭をぶつけてしまい意識を失った。
田「あっぶないな〜、これだから人さらいは」
む「・・・こ、この人死んだの?」
田「いんや、たぶん気絶じゃないかな?」(たぶん)
「起きたらめんどくさいから、とっととここから離れようか」
む「は、はい」
田中がむつみの手を引きここから離れようとする。
だが、むつみが立ち止まった。
田「?どした」
む「・・・」
田中はむつみの顔を覗き込もうとするが下を向いていてどんな表情かわからなかった。
む「そうだ、私、妹が」
田「むつみ?」
む「違う、なんで私・・・」
田「おい」
む「わたし、いかないと!」
むつみは田中の手を振り払い突然走り出した。田中は呆気にとられたがすぐにむつみを追いかける。
田「むつみ、待て!」
むつみが走っていった方向は人体改造ややばそうな噂しかたっていないエリアだ。
むつみを追いかけていくと昔大きな会社だったビルの前にむつみが立っていた。
田「むつみ」
む「すいません、こ、ここに弟がいるはずなんです・・・」
田「・・・」
む「・・・っ」
田「わかった」
む「え」
田「最後まで付き合うよ、むつみ」
む「は、はい・・・」
田「ここは危険だから手を離すなよ」
むつみの手を握り田中はビルの地下への階段を下っていった。
ビルの地下は薄暗くジメジメとした通路で、人の気配は全くなく変に静かな所だった。
田「むつみの家族は弟だけなのか?」
む「そうです、親は事故で・・・」
田「そうか・・・」
む「田中さんは?」
田「ん?俺か?俺はいないな」
む「そうなんだ」
田「・・・」
む「・・・」
田「見つけないとな、むつみの弟・・・」
む「はい・・・」
田「そういや、むつみの弟の名前ってなんなんだ?」
む「弟の名前は・・・」
田「なまえは?」
む「なまえは・・・」
「!!?」
突然、突き当たりにある部屋の照明がついて、むつみはその部屋に飛び込む勢いで入っていってしまう。
田中とは手を繋いでいたが驚いてしまい一瞬手の力をぬいてしまい、たやすくむつみはその手を振りほどいて行ってしまっていた。
田中も慌てて追いかけ部屋に入ろうとしたが目のまで扉がすごい音をたてて閉じてしまう。
田中はその扉を開けようとドアノブを探したがそれらしきものが見当たらなく叩いたり蹴ったりするがびくともしない。
田「おい、むつみ!!なにがあったんだ!!」
む「弟が!!いたんです!!」
田中が扉に耳を当てると微かにそう聞こえた。
田「そうか、わかった!お前は弟を連れて早くここから逃げるんだ!」
大きな声で扉の向こうにも聞こえるように言う田中。
いつの間にか田中の周りには、人の形をした何かに囲まれていた。
むつみは弟らしき人影を見つけ、なりふり構わず部屋の中に入ってしまっていた。
む「ーーー!!」
むつみは弟の体を抱いて名前を言う。
弟に反応はないがきっと生きている。
その後入ってきた扉がすごい音をたてながら閉まってしまう
ドンドン!とその扉から声が聞こえてきたので弟がいることを伝えると逃げろと壁の向こう側の何かは言ってくる。
自分は弟を背負おうとするが空を切る
確かに自分はさっきまで弟をこの腕に抱いていたはずなのに、そこには弟がいなかった
フとむつみの耳に走る音が聞こえそちらを見ると弟が人さらいに攫われていく光景だった。
む「いや!待って!!」
むつみは追いかけようと立ち上がろうとするが何故なのか足が震えて動けない。
む(なんで。追いかけないと!動いてよ!)
どうにか足を動かしてその背中を追いかける。
む(行かないで、ーーー!いやだ!!)
(お願い・・・!!)
(・・・)
田中は今絶賛走っている。
大量の人の形をした何かに追いかけられそれから逃げていた。
田「あーーー!やっばいよーーー!!」
どんどん自分がビルの地下奥に追い詰められていくことがわかり、どうにか地上に行きたかったのだが、なんせ数が多すぎてそれを避けていくことができずに、それらが少ない方の道を行くしかなかった。
田中はゾンビみたいに襲ってくるものから逃げ続けていると両開きの大きな扉が見え、その扉の先ではむつみらしき人影が立っていた。
田「むつみ」
田中はむつみと距離を離して足をとめると、入ってきた扉が閉まり他の扉が閉まり他の扉も次々と閉まっていく。
田中とむつみがいる場所は大きなホールで何千もの人が入れるようなところだった。
田「ここに、こんな場所があるなんて知らなかったな」
「なぁ、むつみ」
瞬間、田中に襲いかかるむつみに田中はとっさに避けて尻餅をついた。
田「・・・」
むつみの手にはナイフが握られ、目には光がなく田中を写していなった。
尻餅をついてる田中の後ろから大量にゾンビもどきが襲いかかるが田中はそれを身軽に避けるがホールの上の方で何かが流れ出すような音が聞こえそちらを見るとホールの上部にある穴からすごい勢いで大量の水が流れ始めていた。
田「・・・は、うそだろ!?」
四方八方から滝のように水が流れ始めみるみる足元が浸水していき、田中は入ってきたドアの方へ一直線にに走り出し思い切りドロップキックをして扉のドアが勢いよく開き、すぐに田中は立ち上がり地上に向けて走り出した。
後ろから、むつみや人型のものが追いかけてくるが水がすごい勢いで浸水してるので早くこの地下から抜け出さないと窒息死してしまう。
途中、むつみ弟がいたらしい部屋の扉が開いていて、むつみ弟がいるかもしれないと覗き込むがそこにあったのは、ただのゴミの塊で他には何もない部屋だった。
ギギギと機械音が後ろの方から聞こえ、振り向くとむつみがバールのようなものをこちらに振り下ろそうとしていた。
田「お!おおっとっと!」
それをよけて、むつみを見るとロボットのようなぎこちない動きをしてこちらに顔を向けてくる。
田中はむつみを無視して地上の方へ再度向かい始め、どうにか地上まで戻ってくると空は夕焼けに染まっていた。
田中の後ろから追ってきていた人型のものは水に濡れて故障でもしたのか、あんなに沢山いたのに関わらず地上に出る頃には、むつみ1人だけがそこにいた。
むつみはずっと昨日の朝から動きっぱなしで普通の人間の子供なら根をあげても、おかしくないし体力の限界がきているはずなのに今のむつみは息を一つも崩さずにそこに立っていた。
田「むつみ」
む「・・・どこなの」
田「・・・」
む「私の弟がいないの」
田「あぁ」
む「人さらいに連れてかれて、あの日私もばれないように後をつけたの」
「そこで」
「私は」
むつみは自分の体を抱いて下を向き、田中はそれを無表情で見ていた。
むつみは顔をあげ田中に近づいていく。
む「あたし、言われたの。あなたを殺せば、あなたをここに連れてきたら弟をオトウトを!助けてケテくれるって!!」
「アナタをアナ、アナタをアナタを!アナタを!アナタを!」
むつみ達の頭上から水のせいなのかビルの一部が壊れてしまいその残骸が落ちてくる。
田「むつみ!!?」
む「・・・」
田中はむつみを助けようと近づき体当たりするように残骸をよけるのだが、むつみはどこからだしたのかナイフを田中の頭に突き立て田中は避けることができずにそのまま刺されてしまう。
田中がむつみに覆いかぶさるように倒れこみ田中は目を開けたまま動かなくなり、むつみは田中の下から何事もなかったかのように這い出て立ち上がり、田中を見下ろしていた。
む「これで」
「・・・」
「え」
むつみの両目から涙が流れ落ちていた。
もうむつみ自身、田中が田中ということがわからなくなっており視界は何故か不明瞭で田中の顔が黒で塗りつぶしたかのように見えなくなっていた。
む「どうして」
「私この人知らないハズじゃない」
なのに目からは涙は止まらない。
むつみには何故なのか田中と一緒に行動していた時の記憶が一切なくなっていたはずだった。
田「むつみ」
む「え!?」
確かに田中の頭を刺したはずだったのに、人間なら確実に即死しているはずだ。
声を出すことも立ち上がることなんてできるはずがない、なのにそれでも死なないということは。
ドン!とむつみの背後から大きな音がした。
むつみの体の真ん中には大きな大穴が開き、そして立ち上がっていた田中にも大きな穴が体に空いていた。
?「フッ、フハハハハハ!!」
「流石にこれだけ壊せば!!」
白衣を着た男がむつみの背後で大きな大砲のような機械をこちらに向けて笑っていた。
むつみは瓦礫だらけの所に倒れる瞬間、大穴が開いてるはずの田中がその体を支えた。
?「は、ハァア!!?」
田中はゆっくりむつみを地べたに寝かせ白衣の男の方に一歩近づいた。
?「嘘だろ!?」
田「嘘じゃないさ」
顔面にナイフが刺さり、体に大穴が空いてるはずの田中はその顔で笑みを浮かべながら白衣の男の方へ一歩また一歩と歩みよっていくと白衣の男は重そうな機械をその場に落とし田中に背を向けて走り出した。
が。
田中は白衣の男の目の前に回り込み、男の顔を片手で鷲掴みし持ち上げる。
?「おぎっ!」
田「どうしてこんなことしたのか聞きたい所だけど大体察しはついている」
?「あがっ、やめっ!」
ぐちゅと嫌な音をたてて男の顔が握り潰され血が噴き出しながら男がバタバタと足や手を動かすがそのうち握り潰し終えると、動きが大人しくなっていき田中はそれをたまたまそこら辺にあったとがった瓦礫に投げて突き刺さる。
田中はそれを見ずにむつみが倒れている場所に向かうと、むつみはヒューヒューと虫の息となり虚ろな目でボソボソと何かを言っていた。
む「オトウト・・・」
むつみの体を見ると大穴が空いてる所がバチバチと音をたてて機械のコードやらなんやらがあり、改造された人間だということがわかる。
田「むつみ」
む「行かないデ・・・」
田中の声が聞こえてないようで反応はないが、むつみは真上の空に手をのばして何かを掴み取るような動きをしていた。
田「大丈夫だ」
田中はそう言うとむつみの頭に手を置き目をつぶり、田中の手からバチっと音がなりむつみの目から光が完全になくなる。
田「弟は見つかった、お前たちはこれから一緒に帰るんだ」
む「・・・帰ろう」
「・・・ヨツヤ」
むつみは弟と自分が手を繋ぎ家へと帰る幻を見る。
むつみがあげていた手が落ち完全に止まってしまったことがわかった。
田中はそんなむつみの体を抱き上げてそこから少し距離がある、人には入れないガスが充満しているエリアに入っていった。
瓦礫の山が夕焼けに染まっている
生き物の気配はなくただそこにいたのは人間の形ををした何かがいるだけだった。
《数多くある廃ビルの中の一つ、とある事務所にて》
田「サァアリィいいいちゃあああん!!!」
ドン!廃ビルのドアを勢いよく開けて入ってく田中
田中は身なりはボロボロだが顔も腹も穴は空いていなかった。
サ「・・・田中汚い」
田「ひっどーい、サリィちゃあん!」
シクシクと泣くマネをする田中
サ「ウソよ、田中」
「おかえり」
田「ただいま、サリーちゃん」
眉を下げながら笑う田中にサリーも口の端だけあげて微笑んだ。
何回か文を書いて言葉を直したりとかしていたら、ものすごく時間がかかりました。
文字書き初心者なので、誤字脱字文章ミス等々あるかと思いますが雰囲気だけ味わってもらえればと思います。
この「スクラップ」という作品ですが、1話きりの短編にしようとしたのですが味がする作品を作るには短編は難しいと思ったりなんか考えていたらどんどん続きが頭の中で出来上がっていったので、できるだけ完結できるようにまとめて完成させようと思います。
ここまで見てくださりありがとうございました。続きは1年でできたらいいなと亀更新ですがよろしくお願い致します。
サブタイトルはフランス語で「山の上」と言います。