かくれんぼ禁止の家
こちらは百物語五十話&夏のホラー2021の作品になります。
山ン本怪談百物語↓
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小学生時代の友人であるS君。
S君はお金持ちの息子さんで、広くて部屋の多い家に住んでいました。
S君の家へ遊びに行くと、必ずみんなでかくれんぼをして遊んだものです。
夏休みに入る少し前の話。
その日は、S君と仲が良かったクラスメイトたちと一緒に、S君の家へ遊びに出かけました。
遊びの内容は、もちろんかくれんぼです。
鬼はS君に決まりました。家族の部屋以外はすべて使っていいと言われたので、私たちはそれぞれ見つかりにくそうな部屋へ隠れることにしました。
数分後…
鬼になったS君が、私たちを探しにやってきました。隠れられそうな場所はほとんど知っていたらしく、私たちはすぐに見つかってしまいました。
残るクラスメイトはB君だけ。
「あの服がいっぱいある部屋のクローゼットが怪しいぞ!」
私たちは2階の「クローゼット部屋」と呼ばれる場所へ向かいました。
「おーい…おーいっ!」
部屋に入って一番奥にある大きなクローゼット。そこからB君の声が聞こえてきたのです。
「あっ!B君みっけ!」
「そんなところに隠れてたのかぁ」
「早く出てこいよ~」
どういうわけか、B君はなかなかクローゼットから出てきません。
「なぁ、みんな助けてくれよぉ~!ここから出られないんだよぉ~!」
理由はよくわからないけど、B君はクローゼットから出られないらしい。
「鍵でもかかってるのか?それとも引っかかって出てこれないとか?」
私たちはB君に向かって話しかけますが…
「真っ暗なんだよ…真っ暗で出られないんだ…」
B君はそれ以外何も言いません。B君が私たちをからかっているのだと思ったのですが、状況はすぐに一変します。
ドンドンドンドンドンドンっ!!
B君がいきなりクローゼットの中から扉を叩き始めたのです。
「おい、どうしたんだよ!?」
「そんな怖いことするなよ…!」
私たちはB君に向かって何度も話しかけました。しかし…
「早くここを開けてくれ!ねぇ早く!さぁ早く!」
B君の異常な行動に、私たちは全員棒立ちになってしまいました。
「わ、わかったよ!わかったって!今開けてあげるから…」
S君がB君を助けるためにクローゼットの扉に向かって手を伸ばしました。
「早く早く早く早く!!!」
S君が扉を開けようとしたその時…
「もぉ~みんな遅いよ~!」
クローゼット部屋の扉が開き、外からB君がひょっこりと顔を覗かせた。
「あれ?なんでBが…そこにいるの…?」
B君はポカーンとしながら私たちの顔を見つめています。
「いやぁ…間違えてS君のお父さんの部屋に隠れちゃってさぁ…」
B君は申し訳なさそうな顔を見せると、私たちに向かって軽く頭を下げた。
「えっ?じゃあ、あそこにいるBは…?」
驚いた私たちは、再びB君が入っているクローゼットを見た。
「………………………………………チッ」
私たちは逃げるようにクローゼット部屋から出て行きました。
その後、S君の家でかくれんぼをすることは「禁止」になったのです。