奢り
遅くなりました…テストなんて無くなればいいのに…誰かテストと模試を禁止する法律作ってくれないかな…
「夏〜?」
「何?香里奈?」
「ボーッとしてたみたいだけどどうしたの?」
焦点の合わない瞳で虚空を見つめていた夏の顔を香里奈は心配そうに覗き込む。
「ん〜?ちょっと先月のことを思い出してたの」
「先月?」
香里奈は夏の言葉を鸚鵡返ししながらこてんっと首を傾げる。
「やめなさい、香里奈。ルナがやるならまだしもあんたがそんな動作したって似合わないわよ」
「ひど!?」
思ったことはズバズバいう夏であった。
「みんなが怖気付いている中、香里奈が立候補して、私と加穗留がそれに続いて?あのときの正気かっ!?っていうみんなの顔のインパクトが凄くて…今でも写真のように思い出せるよ」
「あぁ〜…あのぶりっ子たちも目をカッて見開いて化け物を見るような目で見てたよね…あの目はちょっと傷付いたなぁ〜…」
当時の様子を思い出しているのか、遠い目になる香里奈。そこに加穗留も加わる。
「まぁ私達の目標の前にあんなことは些細なことじゃん?むしろ私はあれで良かったと思うよ?」
「まぁね。私達が外に出る任務を独占できる上に、今回はルナらしき手がかりを見つけられたもの。それにあの様子じゃ私達と関わるクラスメートは減ると思うは。そうなれば見つけたルナを秘密裏に匿うことができるし、失踪したとしても罪悪感が少ないもの」
「ん〜…でも私はちょっと寂しいかな…」
クラスのマスコット的な存在で、友達の多かった香里奈には友達が減りそうだということは思いの外答えていたらしい。
「確かにそれは感じる。でもさ?そのおかげであんた達ともっと仲良く慣れたから私は寂しさよりも嬉しさのほうが勝つかな?こう…なんていうの?親友的な関係になれたということが嬉しいどう言うか…その…」
恥ずかしなったのか加穗留の声は少しずつ小さくなっていった。しかし、その言葉に込められている思いは少しずつ大きくなっていき、
「…二人とも…だ〜いすき!」
「私も好きよ?二人のこと」
熱い想いを告げた仲間をもう離さないというばかりにきつく抱きしめる二人の少女。こうして少女達の仲は更に深まることとなった。
「…ゴッホン」
「「「ビクッ」」」
「仲がいいのは大変よろしいのだが…」
「ここが公共の場であることはお忘れなく。」
「いやいやお姉ちゃんたちも人のこと言えないでしょ!?」
「「「あなたもね!?」」」
(((いやてめーらも無理だからな!?)))←たまたま居合わせた方々
ツッコミの連鎖は際限なく続いていく…
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「えーと?それはさておき…何しに来たんあいた!?」
「団長?もうボケましたか?この中空っぽなんですか?筋肉なんですか?馬と鹿が詰まっているさんですか?」
「馬鹿はひどくないかな!?」
「団長?そう言われたくないのであれば休んでくれませんか?戦場で一人で敵陣に突撃しないでいただけますか?脳筋であるな自覚があるのは結構ですが直す気はないのですか?」
「ムキー!!」
「お姉ちゃん達漫才はいい加減にして本題は入れ!!」
「本題に入る前になんか注文してくれないかい?こっちも商売なもんで何も買わないのにテーブル一つ長時間占拠されるのは困るんだよ。」
「「「「「「ごめんなさい…」」」」」」
「声のボリュームも落として頂戴。流石にうるさすぎるからね?」
腕を組み、苦笑いしながらそう告げる女将さん。他の店なら問答無用で叩き出されるような迷惑行為も注文1つで許してくれるほど懐が深いのだ。しかし叱るときはきちんと叱ってくれる。だから街の人からは第二のお母さんとして慕われているのだ。
「まぁ俺らも怒ってねーし許してやってくれよ」
「むしろ団長たちの痴話喧嘩を見られてラッキーだしな!」
「この町の名物だからな!眼福眼福!」
団長以下2名は恥ずかしそうに体を縮こませる。
「それに新たな名物の誕生も見れたからな!」
「仲良し美少女冒険者三人組だな!」
「末永くお幸せに。ついでにここを拠点にしてくれよ!」
「ガハハハ!成長を皆で見守ってくぞ!」
「ハァハァ」
「お前後で説教な?」
「何故に!?」←たまたま熱いもの食べてたいい人。
変態さんではございません。
香里奈以下2名も恥ずかしそうに体を縮こませる
「女将!あそこのテーブルにフルーツの盛り合わせよろしく!俺の奢りな!」
「なら私は串焼き6つ奢ろうかしら?」
「はっ女の子が串焼き奢られて喜ぶ焼けねーだろ?母さんエール6つあそこのテーブルに!」
「いや昼間っから酒早めとけ。ステーキ3つあそこによろしく!6つは流石にきつそうだからな!」
「テメーは金がねーだけだろ!」
「女将!俺からあそこに…」
「わたしは…」
「うちらから…」
次々に運ばれてくる料理にあわあわする少女達。見知らぬ人から大量に奢られることなど初めてで、慌てている。その様子が面白くて更に料理が追加で注文されていく。もはやテーブルにおさまりきらなくなり、客が勝手にテーブルを寄せてもはや貴族の食卓のようになった。
「いくら私が大食いだからってこの量は無理!!」
「ダン!あなただけが頼みの綱なの」
「ダン姉がんばれ!」
「私達は」
「お先に」
「失礼し『逃さない!!』」
「「「デスヨネー(泣)」」」
もうどんちゃん騒ぎだ。ちなみにいつもなら後払い制なのだが、今回は女将さんが注文と同時に代金を回収している。この世界のお金は重い金属の硬貨であり、効果を抜くたびにもの凄い勢いで財布が軽くなる。同時にお金を回収することにより食い逃げを防ぎながら自重を促す優し賢い女将さんなのであった。
「食べきれないなら貰っていい?」
騒ぎに便乗して近付く小さな闇。
「えっ!?えっと…」
「おうおう嬢ちゃんも喰いな!」
「子供は食って育つからな!よく食って大きくなれよ!」
「む〜!子供じゃない!」
頬を膨らませ、腕を振り回しながら睨みつけてくる幼い少女。可愛らしい光景でありながら
(ゾッ
何故か
そこしれぬ恐怖を感じた。
『暴力禁止!』
『でも』
『だ〜め!』
『む〜…』
『帰ってきたらナデナデしてあげるから』
「は〜い…」
少女が目を逸らした瞬間男はヘナヘナと腰を抜かす。
「それじゃ!」
少女はニパッという擬音が付きそうな笑顔で食事を始めた。
この子誰でしょうね〜すっとぼけ




